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「戸羽くんはどうなったの?!」
話し合いパートが始まるなり大きな声が聞こえた
[ペンギン]…?
随分と興奮していますわね
戸羽さんとはどなたかしら
「「リアル人狼ゲーム」は生き残りました。でも、次のゲームには別々に案内されたので、その後は分かりません」
「好きなやつ…か」
「…うん」
流石[スケボー]、好きな人のことは良く分かるのですわね
その好きの種類がなにかはわたくしには分かりかねますが
「どうして気付いたんですか」
「3日目の処刑で注射を打った男の子、もしかしてって思っていました。でもまさかって気付かないフリをしました」
そうしたくもなるのも分かりますわ
「でもゲームマスターがわざわざ介入して戸羽くんだと特定出来る場所へ案内してきました。どういうことですか」
「ちなみにどこへ行ったんですか」
「第3回戦の食堂です」
「確かにそこで言葉を交わしましたが、人物を特定出来るようなことはなにも話していないと思います」
「声が加工されていませんでした。それに、もし加工されていても分かります。あれは戸羽くんです」
「では――ひとつ良いことを教えてあげましょう」
今、鼻で笑うような音が――
まさか本当に[ウサギ]が「魔女」でこの話し合いを滅茶苦茶にしようとしているのでは…
それなら言わせてはいけませんわ
「[ウサ――」
「戸羽さんはひとりの参加者にひどく入れ込んでいました。2日目に自分で注射を打った音の子です。なんとか彼女の処刑を阻止しようと必死でした」
――遅かったですわね
「そうですね、とても良い話しです」
「ウサギ、煽るな。ペンギンも落ち着け」
「分かってる、ごめん。でも入れ込んだのがウサギじゃなくて良かった」
「似た者同士は無条件で惹かれ合うものですから」
「だからウサギ!」
「ははははっ!そうですね、そうです。戸羽くんとウサギはとても似ています。でも決定的に違う部分があります」
「聞かせて下さい」
「被害者か加害者か、です」
…どういう意味でしょうか
「私たちは等しく被害者であり、同時に加害者だと思います」
「ウサギの第4回戦の会場に行きました。でもRしかありませんでした。ウサギは1順目、3つの会場に行っていますね。そして、嘘を吐いているということはそこに「魔女」である証拠があったんじゃないですか」
やはりそうなりますか
しかし、好きな人がここに来ていると知って興奮しながらもそれを利用するような話し方ですわ
演技なら厄介ですが、演技でないにしても[ペンギン]はマークしておくべきですわね
画面に1枚の紙が映し出される
R:[ウサギ]は銃を撃った
確かに[ペンギン]の言うことが正しければ[ウサギ]が魔女である可能性は高いですわね
けれど、嘘を吐いている可能性があるのは[ウサギ]だけではありませんわ
なにせ10人中8人がオプションを使っていないと言っているのですもの
「ゲームのタイトルは見ましたね」
「はい、「ロシアン銃」です」
「それなら銃を撃たないはずがないじゃないですか。きっと他の参加者が行ったことを隠して私を「魔女」に仕立てようとしているんです」
「それはおかしいですわね」
「ああ、変だ」
「なにがですか?」
「自分が「魔女」にされそうな要素がある最後の部屋とやらには行ったのに、第4回戦の会場に行かなかったことです。慎重なウサギですから、オプションを使ってでも行こうとすると思います」
わたくしと同意見ですわね
[スケボー]も同じでしょう
どうでますか、[ウサギ]
「確かに私は所持金がみなさんより多いようです。でもそれは1回目の捜査パートでは分からないことです。様子を見ずに突っ走るようなことはしません」
「つまりオプションを使うことを視野に入れて話すことは結果を知っているからだと言いたいわけですわね」
「はい」
先程から感情の起伏が感じられませんわね
不気味な方ですわ
「それに次のゲームで使わないと誰が確約出来るんですか。無駄遣いをしたら死ぬだけです」
「それはそうですわね」
「否定は出来ません」
「だが…」
「論破出来ないのなら仕方がありません。もう1ヶ所行ったところの共有をしても良いですか」
「3ヶ所行ったのか」
「はい、余程行ってほしかったらしく、値引きしてくれたんです。どうしてでしょうか」
何故か[ペンギン]が嫌な笑みを浮かべている様子がありありと浮かぶ
[ペンギン]の姿はあの荒い映像ですら見たことがないはずなのに、はっきりと笑みを浮かべている顔が思い浮かべられる
ゆっくりと息を吸う音が聞こえた




