フリーター石器時代突入する
何処か分からない場所で寝床を確保中の俺 二浦完二20歳フリーター 現在遭難真っ只中
「まずはシェルター(寝床)の場所確保だな」
倒木の周りをうろつき草叢を掻き分け地面が露出している場所を探す
「フム 一面草が生い茂り地面は見当たらないか…」
「シートが有るわけじゃないし生草の上に直接寝るわけにもいかんしな…」
一概には言えないがサバイバル状況で生草の上に直接寝るのは朝方の冷え込んだ時に湿った草が体温を奪うのでお勧め出来ない(季節や周りの状況次第です)
焦った様子も無く空を見上げてから周りを見渡すフリーター
「後3時間以内には用意しないと日が暮れるか…」
錯乱状態から回復したと言うよりも 好きなサバイバルごっこ遊びに現実逃避して何とか平静を保ち心の乱れるのを抑え込んでいるのが正解かもしれない
落ち着いた足取りで倒木に向かいバックを背負い 足元に落ちているペットボトルを拾ってから しげしげと倒木を見つめて
「この上で寝るのもキツイよなぁ」
倒木は150㎝ほどの太さは有るがその上で安定して寝る事が出来るはずも無いだろう
そして自転車に手をかけて1本の大木の下に移動する
「此処で良いか…」
大木は根元が太さ2メートル以上有りそうながっしりした巨木で根の張り出しが四方八方に伸びて地面からしっかりと盛り上がっているようだ
手頃な根と根の間を見つけて横に自転車を止めバックから使用済みの軍手を取り出し手に二重で嵌めて根の間の苔や草を取り除く
「よし!後で下に敷く石とか木を探して 敷く葉っぱと屋根に使えそうな葉っぱと蔦や蔓 骨組みにする真っ直ぐな細い木か枝とか竹だな」
「竹とか有ったとしても道具が無いか…」
シェルターに使う骨組みとして しなやかで曲げに強い竹や笹は非常に優秀なのだが鉈や鋸等の道具が無いと利用するのも難しい
「無い物を心配しても意味が無いか… 有ったら有ったで考えよう 今は 出来る事を頑張るしかない」
生存本能を刺激され残り時間が多くもない事に焦るかのように 寝床に決めた大木の下から離れて辺りを探索し始める
「まずは朽ち木 手頃な倒木 蔦 蔓だな」
倒木
何らかの要因で倒れたり折れて地面に落ちたりした木や枝
朽ち木
倒木がそのまま乾燥して腐りかけて脆くなった物 立ち枯れした木も含まれるが手で簡単に壊せる位なら倒れているだろう
特に区別は無いが彼には区別する拘りでもあるのだろう
(昔話でよく出てくる芝刈りの芝ですね)
周辺の草叢や薮からそれぞれ1山づつ寝床に決めた場所の近くに集めてきた
同時にそれらを集めながらも枯れ葉や枯れ草 繊維質の多い木の皮 木に絡むように伸びている蔦や蔓等も集めて寝床予定場所のそばに纏めて置いている
蔦や蔓は1本づつ外したり引き抜いたりしてそれぞれ30cm程度の輪にしてある
「やはり人の手が入っていないんだろうな 割と簡単に集まったな…………」
思考の底に沈み込みそうになりながらも思い留まり 独り言を呟きながら作業を続行する
「さて…次は石を手に入れないと…」
倒木の山からまだしっかりと皮の残っている硬そうな木を選び 寝床と決めた場所より少し離れた根と根の張り出した間を 選んだ木を力強く地面に突き立て掘り始める
ザクっ!ザクっ!ザクっ!ザクっ!ゴリっ!
「やっぱり!これだけ太い根が地面から露出してるから浅い所に石の層が有ると予想した通りだ!」
腐葉土の下から石がゴロゴロと掘り出され 手頃な大きさの物を寝床予定場所の方にどんどん放り込む
「今はこれぐらいにして次の作業に移らないと…」
集めた石の方に移動して15㎝~20㎝程の石を両手に持ち顔をそむけておもむろに打ち合わせる
ゴッ!ガツッ!
何回か組み合わせを変えて石をぶつけて割れた石を手に持ち欠けた場所に指を当てて確認して納得したのか頷いている
「とりあえずこれ位尖ってれば良いか…」
欠けた石を手に朽木の山に向かい腕位の太さの乾いている木を選び出して取り出し 張り出した根に木をあて欠けた石を振り下ろす
ゴスッ!ガッ!
「即席の石斧としてなら上等だ」
朽木に石斧(欠けた石)を打ち付け半分程切り込んでから折り もう一か所20㎝位の所にも切り込みを入れて更に折り 出来上がった20㎝程の朽木を縦にして真ん中に石斧をあて張り出した根に叩き付け半分に割る 手に持った石斧を根の上に置き別の尖った石に持ち替え端から5㎝程度の平らな方にあて捩じる様に穴を空けようとする
「けっこう削れないな…石の方が砕ける…時間が勿体ないカッターの出番だ!!」
バックからカッターナイフを取り出し目当ての場所に当てて3㎝位丸く円錐状に切り出す 半分程の厚さに至った所でカッターを再び欠けて尖った石に持ち替えグリグリと押し当て貫通する一歩手前で止める 反対側の貫通しそうな所を指で確認して その場所を通過するように先ほどの石斧で横に溝を刻む
「よしっ!竃の準備開始だっ!」
出来上がった木片を握りしめて嬉しそうに叫ぶフリーターであった