フリーター迷子から錯乱状態
空を見上げ途方に暮れる俺 二浦完二20歳フリーター 現在迷子真っ只中
「どうなってんだこれ?何処だよ?何でだよ?何なんだよ!!」
「がぁ~~~~~~~~~!!」
何処とも知れない草叢の中 自転車の横でしゃがみ込み頭を抱え誰とも無しに吠えている青年 支えるものを無くして再びドサリと倒れる自転車
見渡す限り道も無く木々が無造作に林立する森の中
現状を把握しようにも 何の指標も指示も無く只見知らぬ森の中に居るという事実だけ
「嘆いていても何も変わらないとは言え 何をどうしたらよいのやら?」
立ち上がり空を見上げ当て所もなく周りを見回しため息をつく
「フゥ~」
「とりあえず今考えても結論の出ない事は後回しだな」
再びの決意の下で服装や持ち物を軽くチェックして 落ち着いて周りを見回す
「先ずは此処は来たことも見たことも無い場所なのは間違いない…」
「見た感じ人の手が入っている様子も無い…」
「遠く見える山にも見覚えが無い…」
再びの沈黙タイム
「今何時ごろ何だろ?」
何とか状態を把握しようと少しでも情報を得ようと行動始める ポケットからスマホを取り出して画面を確認
「午後1時15分か…」
「バイトを終えて空き地に向かったとして着いている頃だな…」
ほぼ役に立たない情報である
「いや 今はそれどころじゃない そんな事よりもっと必要な事を考えて確認するべきだ…」
生存本能を刺激されたかのように辺りを見回し顔を引き締め再び状況判断を開始する
自転車を起こし倒木まで移動しスタンドを出して止め 辺りを更に注意深く見回し新たな情報を探してみる
「何度見てもサッパリ分からない… 少し高い所からなら何か見えるかな?」
改めて木々を眺めて見ると 様々な太さや高さの雑多な植生だと感じ多少の違和感を覚えるが 今はそれどころではない
手頃な太さと枝振りの木を見つけて 早速登ってみる
「木登り何てガキの頃以来何年振りだよ!」
結構身軽に6メートル位の高さまで登り周りを見回す
「この枝じゃあこれ以上はヤベェな 折れて落ちたらシャレにならん」
多少見晴らしが良くなり 周りを見渡し顎が外れるかのように絶句し 目を剝き出しわなわなと震える
「なんじゃこりゃああぁぁ~~~~」
見えた風景は何処までも何処までも続く木々 地平線まで届くように森又森である
遠く霞む彼方には見たことも無いような山脈
もしもっと高い場所まで登って見渡す事が出来たなら そこそこの大きさの湖や川も確認出来たであろうが今はそれどころではない錯乱状態
ガタガタと全身を震わせ必死に木にしがみつき 目を剝き出しキョロキョロと周りを見渡した後 放心状態で震え続ける事暫し
フラっと意識失いかけてここが木の上だと思い出す
「危ねえぇ~!!落ちたら死ぬがなっ!!」
生命の危機に晒されて意識を取り戻し更に冷静さも取り戻した様である
「とにかく一回下りて落ち着いて考えよう」
震える手足を使いながらも危なげなく地面にたどり着いて 腰を抜かすようにへたり込んだ
そしてヨロヨロと這いずる様に倒木まで辿り着き バックの中から飲みかけのペットボトルお茶をゴクゴクと飲み干した
「予想外過ぎて何が何だかサッパリ分からん!!」
「あぁ~~~~~~~!!」
周りの状況をキチンと確認出来たらアッサリと帰宅出来るだろうとの甘い考えを全否定され
頭を抱え激しく振り続け目眩を起こし うつ伏せに倒木に倒れ込んで動きを止めそのまま茫然自失
数分後やっと目の焦点が合い始めた
「死ぬ… このままじゃ死ぬ… 迷子なんてもんじゃ無い 遭難なんて生温い 捜索どころか救助すら考えられん!!」
「ん??」
「まさか俺 既に死んでんのかっ!?」
「あの地面が揺れて倒れたのが心臓発作とかで!?」
「んじゃ此処が死後の世界??」
「いや 俺生きてるし!!」
何やら哲学的な思考を繰り広げようとして我に返る
「いやいや今はそれどころでは無い 無駄に思考を繰り広げるより今を何とかしなくては…………」
再びの決意表明をして(何回決意するのだろう?)
勢い良く右手を挙げて「何とかする!! 何を?」
まだ錯乱状態のようだ
「落ち着けぇ~!!俺ぇ~!!落ち着け~俺っ!!ひっひっふぅ~ひっひっふぅ~」
必死のラマーズ法が役に立ったのか目に光が戻り錯乱状態から回復したようだ
「このままだと日が暮れるとヤバイ!!4月とは言え下手に冷え込んだらまともに動けなくなる!!」
「てか此処日本??」
「いやいやそんな考えは後回しだっ!!此処をキャンプ(拠点)としシェルター(寝床)を確保するっ!!」
まだまだ前途多難な出だしである