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まじなう言葉

「テオドール。陛下の伝書鳩にいつから、成り下がったのかしら。それとも、これが、ご褒美?」


差し出された瞬間に、箱の中身を察知して、リコリスは苦笑した。それを見て、テオドールも苦笑している。


「伝書鳩は失格です。お伝えする前に、姫が言い当ててしまわれた。」

「昨晩から予想済みだわ。急に思い出して、焦ってローズベルに渡そうと思っていたものの中で下から二番目くらいの価値のものを寄越してくるだろうと思ったもの。」

「下から二番目まで、当てられると、伝書鳩も困り果てます。」


下から二番目という事実は、伝書鳩は口にしないことだろう。リコリスは箱を手に取って、あらかじめ用意しておいた礼状をテオドールに渡す。

伝書鳩は恭しく受け取って、にやりと笑った。


「ご褒美は、別でございます。」

「あら、本当にあったの。」

「昨日は、姫も上手に笑っておられましたから。」


それは、テオドールのおかげである。魔法の言葉がリコリスを笑わせてくれていたのだから。


「一体何かしら?」

「来週、帝国の第二皇子が我が国にいらっしゃいます。」

「そうね。」


それくらいは、リコリスも知っている。先を促すように目を向ける。


「ニコライ殿下が姫の公務に同行したいと言っておられます。それが叶えば、姫の今回の政策は万事軌道に乗るでしょう。」


褒美、確かに褒美だ。笑ってしまうくらい簡単に軌道に乗るだろう政策を加速させるためには、根回しがいるが、悪くない結果をもたらすだろう。リコリスは、にこりと笑った。


「でも、それを叶えるのは難しいのではなくて?」

「そこで、私の登場です。今回、陛下に、殿下の護衛を願い出ました。」


もちろんここで言う殿下はリコリスではなく、ニコライのことだ。サボることと、主を守ること以外考えていないこの男は、これでも王国最強だ。リコリスに対する褒美を、この男は本気で自分の手で与えようとしている。リコリスは心から笑った。こんなことをする人間はリコリスの周りに一人もいない。テオドールを除いて誰も彼もリコリスに興味を示すことなんてなかった。


「テオドール、ありがとう。あなたのそういうところ、大好きよ。」

「存じ上げております。」


不遜に笑ったこの男を、リコリスは一層好きになった。


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