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18/20

超肉食聖女様とデュカの心

色々とご迷惑をおかけしましたorz

しかも、投稿も遅れたという体たらく))

 デュカが、チパチャパを見つめていた。

 ルーリスミシュに掴みかかろうとする姿勢のまま、彼は微動だにせずにチパチャパの目を覗き込む。

 まるで真意を探りだそうとしてくる視線に、チパチャパの心が(きし)んだ。

 なのにどこか優しさを持つその目は、『無理をしてるんじゃないか。』と、村に居た頃から心配した時に彼がチパチャパに向けてくる目だった。

 逸らしたい気持ちを頑張って抑えて、チパチャパは言葉を続ける。


「聖女だって言われてね、浮かれてたんだ私。それでね、勇者様と一緒になれたなら、もっと特別になれるかもって・・・思ってただけ、なんだよ?

 代わり映えのしない村から出て、もっと凄い世界に行くんだって。・・・あの時ね、私には、勇者様がその夢みたいな世界の、証に見えてたの。」


 デュカの顔が歪んだ様に見えた。

 それが、自分の涙のせいなのか。それとも、(デュカ)の心を現しているのか。

 チパチャパには区別が、出来ない。

 出来なかったけど、すでにひしゃげて潰れたチパチャパの心が、悲痛な声で泣き叫んでた。


 貴方にそんな顔をさせたかった訳じゃないの。


 けど、どうか許してください。

 こうしないと、デュカの心に刺さった(わたし)を抜く事が出来なくなるの。

 さっきみたいに、自分の為なんかに彼が、他人(ひと)に怒りを抱いてしまうのを見るのは、もう嫌だった。

 その優しい感情(おもい)は、クパや他の人の為に使うべきもので。

 貴方を苦しめる、薄汚れた自分(チパチャパ)の為に使ってはダメな想いだ。


(デュカ・・・ごめんね。でもこれで、これで最後だから許して。貴方を苦しめるのもこれで終わるから・・・。)


 今まで散々彼を傷つけた。

 今だって傷を抉りだして、貴方にそんな顔をさせてる。

 この棘(わたし)を貴方から抜き取った後でなら、幾らでも憎んでくれていい。罵倒して、望むならこの身を好きな様に扱って構わない。聖都で流行った戯曲みたいに、無関心にいないモノとして見てくれてもいいから。

 だから・・・。


 泣き喚く心を無視して、チパチャパは両手を床について、体を折り曲げて頭も床へと押し付けた。


「ごめ、んね・・・デュカ。ごめんな、さい。ほんとに・・・ごめんなさいっ。そんな軽い気持ちで私、貴方の心を踏みにじったの、捨て・・・ちゃったの。」


 罪人(つみびと)が己を悔い断罪を受けれいるその仕草に、デュカの顔が強張った。クパも身を固くしてチパチャパを見つめる。

 ルーリスミシュでさえ、ぎょっとした顔を見せていた。

 けれどもチパチャパの罪の告白は、まだ終わっていないのだ。

 タパタパと床に染みを作りながら、言葉を重ねていった。


「お手紙だって、一回も、読んだ・・・コトないの。開けたコトだって、なかったんだよ? デュカが作ってくれたっていう、押し花、私。一度だって見てないよ?

 私、知らなかった。

 あのお手紙、出すのにっ、デュカがっ、どれだけ大変だったかなんてっ。どんなっ気持ちで出してっ、くれてたのか・・・なんてっ。」


 一言口する度に、言葉がザクザクと心を突き刺してく。

 深々と刻まれたその傷は、どれもデュカの受けた傷だ。それが今、自分に帰ってきてるに過ぎない。

 この苦しみも、痛みも、全部、チパチャパが彼に与えてきたものだと思うと、傷つく以上に痛い。


(痛かったよね・・・苦しかったよね・・・デュカ・・・ごめんなさい。)


 心の痛みを全身で耐えながらも、チパチャパの口が閉じる事はない。

 全てを告白して、彼の中から自分を抜き取るまでは、閉じる訳にはいかなかった。


「村でっ、デュカがどんな想いで、待っててくれてるのかだって、私、一度も考えなかった、の。考えようともしないで、勇者様にっ・・・。

 デュカがその話を聞いた時に、どんな気持ちになるかだって。・・・少しも考えなかったんだよ?

 そのせいで、デュカ、危ない漁にでちゃったのに、全然っ!」


 聖都で見た夢の中のデュカは、きっとその時の彼だ。

 あんなに怖い顔をして、あんなに歪んだ声で嗤う、デュカを作ってしまったのは・・・自分(チパチャパ)だ。

 優しかった、キラキラした太陽みたいなデュカをあんな風に汚してしまった。

 そのコトを想うと、魂が引き千切られたような痛みさえ襲ってくる。


「・・・デュカがね、死んじゃうかもしれない大怪我をしてる間ね。

 私、ずっと勇者様と肌を重ねてた。彼を虜にして、私を刻み込む事しか、考えてなかったの。

 デュカからのお手紙が来なくなっても、ちっとも気にしてなかった。どうやって、舞台の中心に行こうかってそんなコトばっか考えたんだよ?

 それなのに、村に帰って来たら私・・・デュカに、また同じことしたんだ。」

「チパ・・・。」


 デュカの声が聞こえる。

 苦しそうに絞り出した彼の声に、チパチャパは「ごめんなさい。」と、小さく呟きを返す。

 きっと彼の顔は今、怒りで一杯になってるに違いない。

 ルーリスミシュに向けていた顔をして、自分を睨んでいるのだ。それが、苦しくもあるし、悲しくもあるけれど、嬉しくもあった。

 あと一息だと、挫けそうになる自分を叱咤する。

 チパチャパは最後の一押しを、口に出した。


「それだけじゃないの。

 デュカとクパが一緒になったってお手紙も・・・あのお返事ね、私が書いたものじゃ、ないんだよ? だって、私、あのお手紙。そのままゴミ箱に投げ捨てちゃってたんだもん。

 ・・・いつ届いたかのだって、覚えてなかったんだ、よ?」


 口にすると、本当に酷い女だとチパチャパも思う。

 こんな女ならデュカだって、心置きなくポイッと捨ててしまう事が出来る。

 嬉しいのに、涙が止まってくれない。むしろ、余計に溢れ出してきて、チパチャパの頬は少しも乾いてはくれなかった。


(これで・・・これでやっと、デュカの中の(わたし)はぬけた、よね? 抜けるんだよね? もう、デュカが私のせいで苦しむ事も・・・なくなる、んだよね?)


 後はデュカの断罪を待つだけだと、チパチャパはほっと息を吐いた。

 そうすれば、抜かれた(チパチャパ)は粉々になって、二度と彼の中に戻る事なんてなくなってくれる。この先、デュカの中の何処にもチパチャパは存在しなくなる。

 抜き出すとき開いた傷が、気懸りだけど。

 それはきっと・・・クパが癒してくれる。

 あんな顔をしていたデュカを綺麗に引き戻してくれた彼女なら、デュカの心の中一杯に広がって内側から塞いでくれるに違いない。

 今度は前みたいに邪魔してた、(チパチャパ)もそこには居ない。

 デュカは今よりもずっと素敵に輝いて、幸せに生きていけるようになるのだ。


 えへっ、とチパチャパは泣きながら、微笑んだ。

 そんなデュカを想像したら、とても幸せだったのだ。そこに自分の姿がない事に、死に(てい)の心が泣き喚いていたけれど。


(だって、仕方ないよね。自業自得だもん。えへへ・・・えへっ、ひぐっ、うぐっ・・・うっく・・・居たかったなぁ。私もデュカと一緒に、そこに・・・居たかった、よぉ・・・。)


 縮こまって震えるチパチャパの喉から、嗚咽が漏れいた。

 デュカが、その頭にそっと触れてくる。

 ビクっと、チパチャパの体が跳ねた。


(・・・ぁ。)


 その時が来たのだ。

 デュカの手の感触に、それまで騒がしかった心が不思議と落ち着いた。理由は良くわからない、でもこれで全部終わる。

 透明な心で、チパチャパは彼の下す沙汰を待っていた。


「――知ってたよ。あの手紙がお前のモノじゃねぇって事くらい。」


 やわやわと、デュカがチパチャパの頭を撫でてくる。

 慈しむようなその手つきに、チパチャパは頭を少しだけ持ち上げて、彼の手に罪を(ゆだ)ねる様にして、頭も(ゆだ)ねた。


「あれにゃ、お前の雰囲気みたいなモンが無かったからな・・・文字の向こうにお前が居ねぇってオレにはすぐわかったんだ。

 すまねぇな、チパ。

 そいつから聞いてると思ってたからよ、前に村に帰って来た時、あんな言い方をしちまった。」

 

 デュカの声は、驚くほど穏やかで優しい。

 これが断罪の始まりだと知っていなければ、チパチャパはまた勘違いしていた所だろう。裁く時まで彼は、こんなにも温かい。


(ありがと・・・デュカ。)


 だからこそ、彼の審判はこんなにも心穏やかに受け入れられる。

「んぅ。」と啼いたチパチャパの頭をわしゃっと一撫でした後に、デュカの手は離れて行った。


「顔、あげてくれよ・・・チパ。

 お前が謝る理由なんて、一つもねぇさ。オレは、お前にそんなコトして欲しくなんかねぇよ、チパ。」


 フルフルと首を横に振る。

 暫く待ってみても、チパチャパが顔を上げる事はなかった。デュカがガリガリと髪を掻く音がする。

 音がやんで、デュカの声が再び聞えてきた。


「・・・ったく、親父さんか? チパに余計な事吹き込んだのは。

 チパ。()いから顔あげろって・・・上げてくれよ、な?」


 チパチャパは首を横に振り続け、頑なにソレを拒んだ。

「はぁー・・・。」とデュカが、長いため息を吐いた。


「じゃぁ、そのままで良いから聞いてくれな? チパ。

 あのな・・・手紙出したのも、近寄んなって言われてた海に漁にでたのも、お前のせいなんかじゃねぇんだよ。

 全部、オレがそうしたくて、やってきた事だ。

 手紙だってな? あの頃のオレがお前と繋がってたくて勝手に出したんだ。それを読まなかったとか、そんなの罪じゃねぇよ。相手の想いに全部答えなきゃなんねぇってなら、オレは一体何人の嫁を迎えなきゃいけなくなるのか、わかんなくなっちまう。

 それにさ。

 お前が読んで返事くれてたら、オレはもっと手紙を出そうとしてたぞ?」


「だろ?」と言われて、チパチャパは顔を上げて叫んだ。


「違うよっ! わ、私がっ、読んでたらっ、そんなコトなかった! だってエウは、故郷とお手紙でお話ししてたんだからっ!

 それにっ・・・。」

「違わねぇって。

 そのエウってのが誰だか知らねぇけどさ、きっとオレは必要以上にお前に手紙を送ってやっぱり金を掛けてたさ。」


 貴方の想いを踏みにじらなければ、少なくも命を捨てるような事をしなかったでしょ?

 デュカに塗りつぶされた言葉が、胸の中で暴れていた。

 それにちゃんと読んでたら、そんな事になる前に止めていたはずなのだ。デュカは嘘が下手だから、どれだけ隠そうとしてもすぐにわかる。

 だから、悪いのは私。貴方に酷い仕打ちをした悪女の私なんだと、チパチャパは激しく首を横に振った。

 デュカが、へにょりと眉をさげて笑う。


「それによ。あん時、オレもお前もまだ13のガキだったんだぞ? 

 今と違ってさ、本当に何にもねぇ村だったからな、ここは。そこから飛び出したいって思ったお前は、間違っちゃいねぇと思うぜ。

 大体嫁にするって、ありゃただの口約束だろ? 一緒に暮らしてた訳でもねぇんだぞ。悪い事なんかあるもんか。

 後はほら、勇者様・・・あの人は、オレから見ても恰好良かったからなぁ。

 あの人の横に立ちたいってガキが思うのは当然さ。オレだって選ばれてりゃ、お前と同じだったかもしんねぇんだぞ? 周りいた聖女様方も(みんな)、ルーリスミシュみたいな美人さんばっかだったしな。」


 嘘だ。と、チパチャパは泣き微笑む。

 デュカは嘘をついてる。そう確信できた。自分とは違うのだ。彼はそんな不誠実な真似はしないと言い切れる。


(やめてよぉ・・・デュカ。私みたいな女は、切り捨てちゃって良い相手なんだよ?)


 それこそ、昔自分がしたのように、ばっさりと。

 そうやって、私を砕いて欲しい。お願い、それ以上私の為に自分を汚そうとしないでください。心が耐えられないの。

 懇願するように見つめるチパチャパの頬に、デュカの手が伸ばされた。


「・・・だからさ、チパ、そんな泣くなよ。

 ほら昔、村に来た助祭様も言ってたろ? 


『若く未熟な者は、海に出るとよく迷う。(おか)(ともしび)を見失ってしまうのです。だから、迷った時は、貴方の心の中で(ともしび)を探しなさい。』


 ってよ。

 オレもガキだったから、迷って癇癪(かんしゃく)おこしてたんだ。そのせいでこうして今、お前にいらねぇ想いをさせちまってる。

 お前だけじゃねぇ、あん時は・・・クパや村の(みんな)にもひでぇ心配ばっかかけた。

 な? 反省するのはお前じゃねぇ、オレなんだよ。」


 優しい手がチパチャパの涙を掬い上げてくる。

 (ぬぐ)っても(ぬぐ)っても、流れてくるチパチャパ涙にデュカが困った顔をした。


「泣き止んでくれよ、チパ。

 オレはさ、お前が踏みにじったとか言った時だって・・・心のどっかじゃお前が幸せならそれで良かったと思ってた。好いた奴と一緒になれたなら、それでお前が楽しそうなら、それでさ。

 まぁ、お前は好きじゃなかったとか言ってたけどよ?

 それならそれでも、良いじゃねぇか。大事なのは、チパ、お前が嬉しそうに生きてるって事だけなんだからよ。

 ガキの頃の約束だとか、オレの駄々とか、どうでも良い事でしかねぇさ。忘れちまえ。今のお前が進みたい方へ、船を走らせりゃ良い。」

「ダメ・・・。」

「ダメじゃねぇさ、チパ。」

「ダメだよ、デュカ。

 そんなに私に優しくしちゃダメなの・・・私、私、貴方の中に残ってちゃ・・・ダメなんだよ? それでずっとデュカを、苦しめるなんて私、嫌だよぉ・・・。

 捨てちゃってよ、私なんてっ。私に向ける優しさを、クパに、他の人にあげてよぉっ。」


 言うまいと思ってた事が、思わず口から漏れた。

 イヤイヤと泣きじゃくるチパチャパの頭を、デュカがそっと抱き寄せる。零れた小さな「ぁっ。」という声すら包み込んで。


阿保(アホ)か。

 オレがお前に苦しめられるなんて事が、あるわけねぇだろ。・・・いや、泣いてんの見るのは苦しいな。

 オレを苦しめたくねぇってんなら、チパ、笑ってくれよ? 

 オレん中にあるお前は、棘なんかじゃねぇ。お前はな、チパ。ずっと昔っからオレの、大事な幼馴染のチパチャパのままなんだからよ。」


 デュカの柔らかい微笑みが、胸から離れたチパチャパを優しく迎えた。

「いつものお前に戻れよ。」と、彼の目が言っている。欲しかった言葉はソレじゃないのに、温かさで胸が詰まって決意まで溶かされてしまいそうだ。

 その言葉に甘えたくなる。

 彼の望む様に、微笑みかけたいと願う心を必死に押し殺して、チパチャパはデュカの想いを拒絶していた。

 でないと、また(じぶん)がデュカの中に呑み込まれてしまうから。

 そんなのは、ダメなのだ。


 涙を止める処か、滂沱(ぼうだ)と流すチパチャパの頭をデュカは、ポンポンと宥めてきた。


「だから泣くなって・・・オレの言葉を信じろよ? 親父さんでもお袋さんでもなくて、オレを信じてくれ、チパ。」

「・・・(フルフル)。」

「ったく、お前は・・・色々考えすぎだし、思い詰めすぎなんだよ。

 はぁ・・・、とりあえず風呂にでも行くか? な? さっぱりするし落ち着くぞ。

 ――クパ、着替えとかの用意してやってくれ。

 チパはオレが風呂場まで連れてくからよ。なんかコイツ、放っとくとずっとこのままでいそうだしな。」

「んー、わかった。寝間着、僕ので良いかな? いいよね。」

「良いんじゃねぇか? ほら、チパ行くぞー。」

「っ?! やっ、デュカっ?!」


 いきなりデュカにお姫様抱っこされて、チパチャパは慌てた。

 コレは断罪じゃなくて、ご褒美だ。いや待って違う、このままだと、なんかなし崩し的に色々終わってしまう気がする。

 あれだけ決意を固めたのに。

 ここでそんな事になったら、二度と同じ想いが抱けなくなる。

 チパチャパは、降ろして貰おうとデュカの胸を押しのけた。

 けれど、デュカに二度ほど揺すられて、落ちると錯覚した体が勝手に彼の首へと手をまわしてしがみ付く。

 チパチャパが大人しくなると、デュカはルーリスミシュに目を向けた。


「ルーリスミシュ、わりぃんだけどさ。

 こいつ、こんな状態だからだから先に風呂に入れてやりてぇんだ。その、譲って貰えねぇかな?」

「うふふ、構わないわよ? ゆっくり()かっていらっしゃい。」

「すまねぇな。」


 ルーリスミシュに揶揄(からか)う様に意味深な視線を投げられて、チパチャパの顔は火が付いたみたいに真っ赤に染まった。

 ブンブンと頭を振って、ジタバタと暴れだす。


「デュカっ、ダメっ、降ろしてっ! それでちゃんとっ!」

「暴れんなって、あぶねぇから。」


 逆にデュカの胸に強く押し付けらて、チパチャパは撃沈した。




 ◇◇◇ 




 ちゃぷん、とチパチャパは湯舟に顔を半分ほど沈めた。

 ブクブクと水面に泡をたて、その泡が弾ける様子を眺めていた。


(どーして・・・なんで、こうなっちゃんたんだろーなー・・・。)


 デュカに抱っこされて連れ込まれた浴室で、シャワーを浴びてるうちにチパチャパは落ち着きを取り戻していた。・・・というか、取り戻してしまった。

「はぁ・・・。」と吐いたため息が、泡に変わって浮かんでいく。

 どれだけ思い返してみても、デュカがあんな態度を取ってくれる理由なんか一つもなかったはずなのに。

 本当にどうしてこうなった。

 と、チパチャパは湯煙の向こうに見える浴室の(ドア)を半目で見た。


 抱っこから解放された時だって、(かろう)じて残っていた決意でデュカに訴えはしたのだ。

 訴えたのだが、デュカはわしゃわしゃとチパチャパの頭を撫でまわして。


()いから、風呂に入れって。

 あんま我儘言ってってと、オレが裸にひん剥いて洗って風呂に沈めっからな?』


 冗談交じりに、はぐらかされてしまったのだ。

 それまでのお姫様抱っことその時の悪戯っぽい笑みでかき乱されまくった心が、一瞬『それ、良いかも?』とか思ってしまった事で、チパチャパの決意は完全に叩き壊された。


「私・・・どーしたら良いのかな。」


 ぷはっ、と湯舟から顔を出して天井を見上げる。

 換気用の魔導具がクルクルとゆっくり回っているのを眺めながら、チパチャパはぼやいた。

 もう一度デュカに断罪を願う事は、もう出来そうになかった。

 彼の問題ではなくて、チパチャパの中に灯ってしまった希望が、一番の問題だった。

 もう、彼に捨てられても良いなんて、考えられなくなってしまっていた。あの優しさを貰えなくても良いなんて、二度と思えなくなった。

 側に居て良いのかもしれない。

 その希望が、それらすべての邪魔をしてくる。


 こつん、と浴槽の(ふち)に頭を乗せてチパチャパは、体を伸ばす。

 力を抜いて湯舟にぷかぷかと体を浮かばせながら、ぼーっとこれからの事を考えていた。


(最初から、贖罪とか無理だったのかなぁ・・・いっそデュカの望む様に、私のままでいる姿を見せた方が、彼喜んでくれるのかなぁ。)


 でも、と思う。

 そしたらきっと、好きって気持ちが抑えらなくなってしまう。

 頑張って蓋をしたのに、溢れ出して彼に告白してしまいそうだ。迷惑とわかってても、海の国(レパンダル)第4王子(あのおとこ)の様に、自分の気持ちを押し付けてしまう。

 昔、勇者様にした事と同じ事を、彼にする訳にはいかない。

 したくない。


 かといって、彼から離れるのも嫌だった。

 告白できなくても、側に居たい。遠く離れて彼の為に祈りを捧げるなんて、もう無理だった。彼の温かさに再び触れてしまった心が、ソレを手放すなんてとんでもないと、拒絶する。

 それに、そんな事をするよりも。

 彼の横とは言わないから、近くで彼の為に何かをしてあげたかった。

 出来れば、彼の役に立てる事で、彼の負担にならないないような何かを。

 そうして彼を守ってあげたい。


 胸の中で切な気に啼く気持ちに手を添えて。

 チパチャパはのぼせて「ちょっとマズい。」と思うまで、お湯の中でうだうだと考え続けた。



神殿の組織の簡易説明でもしましょうか。

 一番偉いのは 大司教様です。

 その下に、司教>司祭>助祭>侍祭>侍者>見習い と続きます。

 これとは別枠で、大神官>神官と見習いから派生します。


 二つのルートの一番の違いは、神殿でお勤めするか、現場で活動するかですかね。

 神官さん達は、戦場や危険地帯におもむく人達になります。よくあるファンタジーの冒険者とかに混じる人々ですね。

 司祭さまルートは、神殿で住民の治療をしたり教育をしたりしています。祭りの時なんかに、村々を回ってありがたいお説教をしたりする人々です。


 尚、御者さんが付いている神殿騎士は、所属する神殿が聖都の大神殿になる戦闘職で特殊です。

 神官さん達よりも比重が戦闘に偏ってると思って貰えれば良いかと。

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