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神様から見た転生者  作者: アイリ
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第6話 イヴの従者ー後編

「……ミラ様、イヴ様にはもう1人、私と同じ従者がおりまして。それは家に着いてから改めて紹介するのですが…」


イヴ達が住んでいる場所へ向かっている時、ユエが切り出したのはそんな言葉だった。ミラとしては、もう1人いたんだという軽い気持ちだったのだが、ユエの表情はどこか申し訳なさそうだった。


「…?」


「…名をフレイと言うのですが……少々、その、性格に問題がありまして。恐らく、ミラ様にご迷惑をお掛けしてしまうかと……」


「……??」


「…ミラ、フレイは明るいから安心しろ。ただ、少し可愛いものに目がないだけだ」


「…イヴ様、今回は少し所では確実に済まないでしょう。ミラ様に何かあった場合、責任を取られるのはイヴ様ですよ」


「……。

まあ、大丈夫だろ…多分。あいつは危害を加えることはしないさ。ミラ、抵抗するのはオススメしないぞ。抵抗すれば、怖い目にあうからな。今までそれで何人やられたか…」


「……???」


(……よくわからないけれど、嫌な予感がするような…)


ミラは微かに寒気がした気がした。

しかし、会うまでに性格を決め付けるのは良くない。結局、ミラに出来ることは何も無かった。






「…着いたぞー」


歩いてから20分程で着いたそこは、とても大きなお屋敷だった。とても3人で暮らしているとは思えない程の。


「……大きくないですか」


「イヴ様は天界ではとても有名なのですよ。イヴ様が創造された地球という世界では、とても文明が発達されている世界として有名なのです。それぞれの国によって特色もありますしね。

それに、ミラ様も知っての通りイヴ様はお強いのです。前回の天魔大戦で一番活躍を残したのはイヴ様なんですよ。数万の敵をたったの一撃で滅ぼしたのですから。

ですから、その功績によってこの大きな屋敷を与えられているのです」


「……そうなんですか…」


(……私、とんでもない神様に喧嘩売ってしまったんだなあ…)


今更ながらの後悔をミラは抱くがもう遅い。


イヴは自分が褒められて嬉しいのか、上機嫌で屋敷に入っていく。


「ただいま帰ったぞー」


「あっ、イヴ様おかえりなさーい。」


そう返答したのは、鮮やかなオレンジの髪をした、青年だった。髪は夕焼けのような暖かい色に対して、瞳は海のような青。


ついつい見惚れてしまうほど、その青年は美男子だった。恐らく、この人がフレイなのだろう。


「イヴ様、生まれた天使、どうだった?可愛いのかな……ん?」


「……」


「……」


イヴ「ほら挨拶」


「…あっ、初めましてフレイさ-」


「かっわいいいいいいいい!!!!」


「……えっ」


フレイと思わしき青年は、突然声をあげたかと思うとミラに抱きついてきた。


…それはもう、物凄い怪力で。


ーギュウウウウウウウウウウウウウ


「かっわいい!!!!何これ可愛すぎる凄い金髪輝いてるじゃん長いのもいいよまるで人形みたい!!」


「……えっ待って首がしまるしまるしまるしまる」


「ねえ君俺たちと暮らそうよ絶対楽しいよ毎日可愛がってあげるよドレスも俺が可愛いの選んであげるよだからねえねえねえ!」


「……く、苦し…」


(ま…じめに……これは…死ぬ……)


何故に誰も助けてくれないのおおおおおおおおおおお!?

と叫びたいが叫べない状況であるミラが目を向けると、突然の出来事に思考が追いついていないのか、固まったままである2人が突っ立っていた。

それでもミラが必死の目線で訴えていたのに気づいたのか、イヴがフレイを止めるために動き始めた。

ユエはまだ状況を受け止めきれないようで、固まったままだ。大丈夫だろうか。


「……ハッ、こ、こらフレイ!ミラから離れろ!というか、生まれてすぐに死ぬとか洒落にならん!ミラとはこれから一緒に暮らすんだから、とにかく離れろ!」


イヴが必死で止めに入るも……


「えっ、何、これから一緒に暮らせるの!?マジで!?やったああああああああ!こんな可愛い子と暮らせるとか、俺もう何もいらない!ミラちゃんって言うんだね!宜しくね!俺はフレイって言うんだ、これから仲良くしていこうね!

それにしても可愛いいい!まさに天使だね!本物の天使だけど、容姿も天使だ!」


ーギュウウウウウウウウウウウウウ


「…………!!」


(これ以上締めさせてどうするよイヴ様ああああああああ!!)


「ちょ、フレイ!やめろって!お、おい、ユエもなんか言ってや……ユエ?」


イヴはユエにも応援を頼もうとしたが、ユエの異変に気づいたのは一瞬だった。ユエの身体は淡く青い光で覆われており、風が吹いている訳では無いのにユエの銀髪が揺らめいでいた。

それは神力が体外へ放たれている時に現れるものだった。


(……これは……ユエ完全に怒ってるな…)


ユエのこの状態は、前にも見たことがあった。これはユエの怒りが頂点に達した時にみられる神力の小さな暴走の様なものだ。どの神にも当然神力はあるが、その性質は異なる。ユエの場合は、地球で生まれた月を司る神だ。月から得る神力により、その力は青く輝く。

普段なら完全に抑えているが、本来のユエは感情が神力に影響されやすい。

今のユエは、激しい感情の隆起により、小さな暴走を起こしていた。


「……あの…ユエ?」


「イヴ様は少し黙っててください」


「…はい」


ーーーーーーーーーーーーーー


ユエは、歩き出す。

向かう先は当然、ミラを拘束するフレイの元だった。


(……おのれ、フレイめ…)


ユエの怒りは、ミラがフレイにより危険に侵されているからだ。


……と、誰もが思っているのだろうが。

ユエの中に芽生えている怒りは、その事ではなかった。むしろ、逆と言ってもいいだろう。


(……あんな、可愛らしいミラ様を独り占めしやがって…)


もしここに、悟り神がいたらきっと呆れていたことだろう。まさかユエが思っていることがこんな事とは誰も思うまい。


(……しかも、ミラ様をあんなにキツく拘束しているなど……。ミラ様が苦しそうではないか。お可哀想に、今すぐユエがお助けします!)


ユエは静かにフレイの背後へ回る。その事にフレイもミラも気づかない。ユエは無意識に自分自身の気配を消していた。

扱うのに得意なナイフを片手に取り、フレイの首を狙う。


「……おいフレイ、さっさとその手を離せ」


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「……おいフレイ、さっさとその手を離せ」


「……えっ、ユエいつの間に」


「…五月蝿いさっさとその手を離せ」


「……」


ーサアアアアアアアア


フレイは、自分の顔が急速に青ざめていくのが分かった。この、背後から感じ取れる殺気と神力は、ユエが作り出したものだろうとすぐに思い至る。この状態は、ユエが激怒している証拠だ。

その原因は何だろうかと今の状態も忘れて考えた時、ふと、自分が今抱き締めているものに目を向ける。そこには、あまりの苦しさに気絶しかけているミラの可愛らしい姿があった。


イヴは知らないことだが、ユエが実は可愛いい物が大好きだということをフレイは知っている。一度、それをからかって叩きのめされたことがあった。


今回はそれ以上だった。


(……これは、終わったかな…俺の人生…)


「……ミラちゃん、俺がこの後もし生きてたら、沢山お話しようね!」


「……ほう、よくそんな事が言えるものだな。フレイ、そこに直れぇぇぇぇ!」


「にぎゃあああああああああああ!!」


この後何があったのかは聞くまでもない。


ーーーーーーーーーーーーーー


(……何このカオスな状況…)


薄れゆく意識の中、ミラは呑気にそんな事を考えていた。


「……おい、ミラ!しっかりしろ!」


イヴの声が微かに聞こえるが、ミラの意識はもう限界だった。この日は色々なことがあり、ミラの疲労も溜まっていたのだろう。


(……なんか賑やかな生活になりそうだなあ…)


眠る前にミラが思った最後の事は、 そんな事だった。

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