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神様から見た転生者  作者: アイリ
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第4話 試合の行方

「チッ」


ミラは小さく舌打ちし、イヴに掴まれた足を外すためもう片方の足でイヴの顔面に蹴りを放つ。


「おっと」


流石のイヴも、目を潰された上での不意打ち。これには避けることに集中するため、ミラの足を放すしかなかった。足を外されたミラはイヴと距離をとる。

ミラが舌打ちをしたことに気づいたのはイヴのみだろう。周りは喧騒に包まれ、ミラの出した小さな音もかき消される。可憐な少女の舌打ちは、聞こえたものなら幻滅するほど嫌味が含まれたものだった。


「おやおや、怖いねえ…そこまで嫌がらなくてもいいじゃないか。ハハッ、まだ勝つつもりなのかい?諦めな」


イヴは一見、余裕を見せつつも困惑していた。イヴは自分の勝利を確信していた。ミラにもそれが分かっているはずだった。なのにミラの未だに諦めない姿に、イヴは疑念を抱いていた。


(……おかしい。普通ならこんな無謀な勝負、すぐに諦めるものなんだが…なにか秘策があるのか?でないとこの頑固さには説明がつかん…)


すると、イヴの内心を見透かすかのように、ミラは笑った。子供のような無邪気な笑顔は、話が聞こえていない周りの者達には愛らしさしか感じなかっただろう。しかし、会話相手のイヴにとっては、何を考えているのか分からない恐怖すら覚えるものにしか見えなかった。


「……フフッ……ねぇ、イヴ神。確かにこの勝負は私にとって不利なものでしょう。何故諦めないのかと疑問に思うことも理解できます」


「……理解出来るなら、何故未だに抗う?ただ先生を選べばいいだけだろう?こんな些細なことに何故限界まで抗おうとする?」


「私は、自分には先生は必要ないと判断したまでですよ。先生は必要ないというのに、選ぶ必要があるとは思えません。…それに、追い込まれるほど抗うのは世の常でしょう。少しでも抗わせて貰います……よっ!」


ミラがそういった瞬間、ミラの身体が一瞬ブレ、イヴの目の前にはミラの気配は消えていた。どこに行った。逃げたのか。


ーいや。


「後ろか!」


そういうと同時に、イヴに向かって蹴りが飛んでくる。


(なんだ…何が起きた!?)


イヴは困惑しつつもそれをかろうじて受け止める。


「……!…これも効きませんか…流石、創造神ですね。しかし…」


そういうと同時に、またミラの姿が消える。消えて、またイヴの後ろ、上、斜め前…。消えては現れ、消えては現れの繰り返し。偶に蹴りを放ってくるミラの攻撃は、初見では見切れなかった。

イヴは、気が短い性格だ。それは、自分でも分かっている。自分で理解しないと改善のしようがないからだ。今回は長続きした方だった。イヴの苛立ちは、ミラの中途半端な攻撃で膨らんでいった。


「……本当なら、あまり実力を見せるのは得策ではありませんが」


ーちょこまかと…


「…私も、少しは意向返ししたいのですよ」


ーこんな軽い攻撃で…


「…私に先生はいりません。自分で何とかできますから」


ー調子に乗りやがって…


「……ですからー」


「……五月蝿(うるさ)いッ!!」


「……ッ!?」


ードサッ


ミラはイヴに腕を掴まれ、地面に押し倒されていた。


(……うそ…)


瞬間的に空間を移動していたミラは、イヴに捕まるとは思っていなかったために目を見開く。

そんなミラを見て、イヴはニヤリと笑った。


「所詮、お前はこの程度さ。確かにお前の知力やスキルに最初は驚いたが……お前には致命的な欠点がある」


「……欠点?」


「ああ、お前には自分自身の経験が足りない。いくら大創造神から知識を授かったからといって、戦闘の経験までもが受け継ぐ訳では無い。攻撃も軽すぎる。スキルはすごいが、それに身体が追いついていないだろう。

そんなので本物の神になるなど、お前は神を舐めすぎだ。」


そこまで言うとイヴは、大創造神の前に向き直る。周りで観戦していた神たちは、突然変わった雰囲気に一斉に静かになり、固唾を飲んで見守っていた。


「大創造神よ、ミラは私の元で学ばせるということで、宜しいですね?」


大創造神は静かに頷いた。


(……ミラよ、これも失敗は成功の元。これを糧に、もっと成長するがいい。)


「よかろう、これよりミラの教育はイヴに任せるとする!」


「「「「うおおおおおおおお!!!!!!!!」」」」


大創造神が言葉を発すると同時に、その場にいたすべての神が歓声を上げた。今、この場に、新たな天使の教育係が決まったのだ。


そんな喧騒の中、イヴは静かに、地面に座り込んでいるミラに歩み寄った。


「……」


ミラは何も喋らなかった。


「お前は確かに強いさ。ただ、私には劣るだけだ。これから強くなっていけばいい」


「……そうですね。いつか、あなたを倒して見せますよ」


「ああ、ぜひそうしてくれ」


そうイヴが言って笑うと、ミラもつられて笑った。


(おかしな神様だ。)


こうして、イヴとミラの師弟生活は始まった。

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