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逃げるモノ。追うモノ。逃がすモノ。【逢】  作者: 小鳥遊 雪都
十時《ととき》さん。
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存在と証。

僕は忙しく手を動かしながら、ぽつりぽつりと色んなことを思い出していた。


十時とときさんは僕を紗江子さえこさんの元から逃がしてくれた。


正確に言うとこの世界から逃がしてくれた。


今、この世界には僕が存在したと言う証が一つしかないらしい。


僕が存在したと言う唯一の証・・・それは僕の家にポツンと置かれた片足から綿が出た可哀想な白熊のぬいぐるみ・・・。


その片足から綿の出た可哀想な白熊のぬいぐるみが僕の唯一の友達で僕の唯一の宝物だった。


その片足から綿の出た可哀想な白熊のぬいぐるみこそが僕がそこに存在していたと言う唯一の証だと十時とときさんはおっしゃられた。


その片足から綿の出た可哀想な白熊のぬいぐるみ以外で僕に関わるモノは何一つ、この世界には残していないとも言われた。


けれど、本当にそんなことが可能なのだろうか?


「・・・今日の夕刻、お客様がお見えになられます」


十時とときさんのそのお言葉に僕は忙しく動かしていた手と思考を止めて、ゆっくりと十時とときさんを振り返り、見つめ見た。


僕のその視線の先には何を考えられているのかわからない十時とときさんの無感情な目があって、十時とときさんのその無感情な目は間違いなく、僕を捕らえていた。


十時とときさんは独り言のように僕に話し掛けられることがある。


それは十時とときさんのわかりにくい癖だと僕は思う。


最初の頃、僕はそれを本当に独り言だと勘違いしていた。


その度に十時とときさんは同じ言葉を同じ口調で繰り返してくれた。


だから僕もそのわかりにくい十時とときさんの癖に気づくことができた。


十時とときさんはちょっと口下手なんだと僕は思う。

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