日曜日の朝
こんにちは、みのりです。
今日は日曜日なので、灯夜さんもお家にいます。
特にどこかに行く予定がある訳ではないですが、それでも家族水入らず、ちょっぴり幸せな気分なのです。
「さあ、灯夜さん、まーちゃん朝ですよー」
カーテンのシャパッという音と共に日差しが差し込んできます。うん、いいお天気。とても気持ちが良いのです。
「ふわぁーあ。もう朝か、おはようみのり」
「はい! おはようございます」
寝ぼけ眼の灯夜さん。なんだか最近太ってきたように思えるのは気のせいでしょうか。
「ほら、まーちゃんも……てあれ? 灯夜さん、まーちゃんはどこですか?」
「え? まことどこ行った!?」
平和だった朝からいきなり事件です! どこにも息子の姿がありません。
「ど、どどどうしましょう! 警察ですか! 119番です!?」
「落ち着けみのり! それは救急車だっ」
その時です、洗面所の方から水の流れる音がしました。
夫婦二人そろってポカンとしていると、案の定というかなんというか、真琴が着替えのために戻ってきました。
「朝っぱらから何騒いでんの?」
私たちの顔を見て呆れたように言う真琴。なんだかほっとして力が抜けちゃいます。あれ、そういえば何かを忘れている気がするのですが、なんだったでしょうか。
「それより、あれ。におってるけどいいの?」
「ああ! フライパンの火つけっぱなしでした!」
まずいです、このままだとベーコンがピッツになってしまいます。ちなみに灯夜さんの苦笑いが「ああ、いつものことね」と物語っていて辛いです……
「あららです……」
残念ながらベーコンはピッツを通り越して真っ黒コゲ。どうしましょう、パンだけになってしまいました。
「そもそもおかずがベーコンだけってのもアレだと思うけど」
「まーちゃんっ、ついに私の考えていることまで分かるようになったのです!?」
「いや、普通に口に出してたから」
えへへ、なんだかちょっぴり恥ずかしいです。
「あー、みのり。僕はパンだけでいいよ。バターは冷蔵庫っと……」
「ああ、すみません灯夜さん。では私はパンを焼いておきますね」
フライパンと違って、オーブンレンジなら時間をセットするので焦がすこともありません。安心です。
「お、ジャムがある。まことはこっちの方がいいか?」
「別にどっちでも……」
真琴が冷めたような言い方で着替えから帰ってきました。ちゃんと朝起きて着替える、内の息子は立派です。
灯夜さんは、じゃあいいかとジャムを冷蔵庫に戻します。と、そこでチンっとパンの焼き上がりを示す音が鳴りました。ついでにいい匂いも。
「ってまこと、やっぱり欲しいんじゃないか」
「いや、俺は母さんが欲しいかなと思って持ってきただけ」
パンをお皿に乗っけていると、二人の会話が聞こえてきました。どうやら、甘党の真琴は、口ではああ言いつつもジャムの方が良かったみたいです。ちなみに私はバターとイチゴジャムの両方派です。
全員分のパンを、ダイニングの机に並べていただきますをします。
「うぅ、やっぱりちょっと質素ですね。ごめんなさい……」
「ん、いや僕は大丈夫だよ。いつものことだし気にしてないから」
……口でも言われてしまいました。
真琴は興味もなさげに、無視して食べ続けています。
ただそのジャムの量はちょっと身体に悪いのでは……
「あ、今日はどうします? せっかくの休みですしどこかに出かけませんか」
「うん、僕はいいよ。……あ、ああ……そうだ、ちょうど春物の服が欲しかったからデパートに行こうよ」
私もちょうど服が欲しかったのです。私の願いを察してくれるなんて、流石灯夜さんです。
「(なあ、また口から漏れてたよな)」
「(しーっ、そういうことは黙っておくもんだぞ)」
「二人とも、何をコソコソと喋っているのですか?」
「いや、なんでもないよ」
なんだか灯夜さんが笑顔でこちらを見ています。真琴もやれやれと言わんばかりの仕草です。
「さて、そうときまれば準備ですね!」
私はガッツポーズを取って食器を一気に片付けます。
なんだか素敵な一日になりそうな予感なのです。
基本1話完結……まあこれはこれで1話でちゃんと完結してますよねっ!!(汗)