表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

4話  鍛冶屋の仕事 ~ 退屈な時間 ~

シュルン。シュルン。シュルン。シュッシュッシュッシュッシュッシュッ。ビュシュン!

ビシャシャシャシャシャ!

巻藁に分銅が巻き付く。俺は、鎖鎌の練習をしながら冒険者を待っている。


ダルさん達が帰った後は2人の冒険家が鍛冶屋に来ただけで、冒険者の足がピタリと止まってしまった。普段はこの時間帯は武器百科辞典を見ながら時間をつぶして冒険家を待っている。しかし今日はナツさんとの武器選びの時、鎖鎌を試したい衝動に駆られてしまった。


俺が冒険に出るときは、日本刀を使っている。しかし、日本刀は人気武器の一つで使っている冒険家が多い。しかも、初期の頃から一緒に冒険に行っているベテラン冒険家hideも日本刀だ。だから、別の武器にしようと思っていたところだった。


鎌や分銅が数種類あるものの、鎖鎌は、鎖が鎌の柄尻に付いているものと、鎌の頭端部についているものと2種類に分けられる。流派によって鎖の長さは違うらしいが、基本的に柄尻型は鎖が長く、頭端部型は鎖が短いらしい。


俺がイメージしているのは時代劇でみた宍戸梅軒である。梅軒は柄尻型の鎖鎌だと思うので俺は柄尻型を選ぶ。ここにある柄尻型は鎖の長さが3m強ある。もう少し長いイメージがあるが、一般的な日本刀の刃が90cm程なので、単純に今よりも3倍以上間合いが広くなる。


俺は練習場に行き、分銅を下から上に向かって時計回転で廻してみる。

シュルン。シュルン。シュルン、からシュッシュッと回転スピードが上がるとともに音が変わる。なんだかテンションが上がってきた。頭の上でもブルンブルン廻してみる。


練習場で寂しく一人、だけど気分はノリノリ状態だ。


そして巻藁に向かって分銅を投げようと思う・・・が、タイミングが難しい。投げようと思ってから3回転してから投げる。巻藁よりかなり左に外れる。


再度、ブルンブルン廻し今度は巻藁より右側を狙って投げる。やはり、タイミングが難しい。

ビヂュヂュヂュヂ!

巻藁に巻きついた。ただ、思いのほか右側にずれ、力なくゆるく巻きついただけだ。


気分を変えてブルンブルンと自分の前で八の字を作ってみようとする・・・ができない。時代劇の梅軒は八の字をやっていたと思う。

そこで、廻し方が逆なのかと思い今度は、上から下に反時計回転で廻してみる。先程と同じように、縦回転から頭の上で横回転へ、そして八の字に変える。


シュルン。シュルン!


テンションが再度上がってきた。八の字が出来れば防御にも良いし、相手のタイミングをずらす事もできる。しかし、分銅を投げようと思うが、投げられない。


ボールを投げる感覚で右から左下に投げると後頭部に分銅が当たりそうで怖いのだ。思った以上に難しい。間違いかなぁと思いながら廻し続ける。だんだん力の法則が感覚で解ってきた・・・ような気がする。左から右下へと手を放す。


ビシャシャシャシャシャ!


勢いよく巻き付く。もう一度試してみる。


ビシャシャシャシャシャ!


またまた、勢いよく巻き付く。俺は鎖鎌のセンスがあるようだ。自画自賛である!

しかし当然、巻き付く度に巻藁まで解きに行かならない。地味に面倒臭いし、複数の敵相手には向かない事にも気が付く。


違う武器にしようかなぁと思いながらも、今は、鎖鎌を極めようと思い直し何度も分銅を投げる。ほぼ、反時計回転では思い通りに分銅をコントロールできている。


「グリさん 休憩時間だよ」


パンさんがテレパシー(通信機能)で教えてくれる。


勤務時間に練習をしていたが、このようにテレパシーや、冒険家が鍛冶屋に来たらピロリン!ピロリン!の音とともに、目の前が赤く点滅して知らせてくれるので、鍛冶屋に冒険家がいない時は、鍛冶屋内にいれば何をしていても良い決まりなのだ。


気持ちも切れていたし、腹も減ったので現実世界に一旦戻ることにした。


俺は、夜食を食べながら、ネットで「鎖鎌 動画」を調べてみる。いくつもの流派がある。柄を上にして鎌を下に持つ流派もあるし、鎌の柄に護拳や鍔をつけてあるのもある。鎖の廻し方も時計回転も反時計回転もある。


「鎖鎌は奥深いなぁ。」と動画を見ながら思わず、ひとり言をつぶやく。


しかし一対一の動画しかない。冒険に行く時には念のため、慣れている日本刀も持って行こうと思う。


休憩時間はまだあるが早く練習したいので、この世界に戻る。

まずは、パンさんに休憩に入ってもらう。その間に1人の冒険家が武器レベルを上げに来ただけだった。パンさんも休憩から戻ってきた。工房に籠りたいと言うので次に冒険家が来たら俺が対応することにする。


俺も再び練習場に籠る。動画で見た技を何度も何度も練習をする。


ピロリン!ピロリン!


目の前が赤く点滅する。冒険家が来たようだ。

俺は廻していた分銅を巻藁に向かって投げる。投げるタイミングも思い通りだ。


ボッギュ!


巻藁に直撃し、芯の竹が砕けたようだ。分銅での直接攻撃も良い感触を掴めている。


上機嫌で冒険家の対応をしたが、冒険家は武器レベルを上げに来ただけだったので、30分かからないで帰っていく。外からは日の光が差し込んできている。夜勤も残り2時程度だろうか。少しずつ冒険家が動き出す時間だ。最後に投げた分銅も良い感触で投げられていたので今日の練習は終わりにすることにした。


今日は夕方から、ナツさんのレベルアップの手伝いをしなくてはならない。パンさんが工房から出てきたら、残りの時間は自分用の鎖鎌を作ろうと思う。


少しするとパンさんが工房から出てきた。


「暇だったから、グリさん用の鎖鎌作ったよ!」


少し大きめの鎌で頭部に鎗先が付いている。鎌だけでも戦えるようにと工夫をしてくれている。これなら複数の敵に囲まれても何とかなりそうだ。パンさんオリジナルの武器だ。練習場での俺の動きを見て作ってくれたらしい。鎖の長さも2.7mとサンプル武器よりも若干短く作ってある。俺が小柄な事や初期動作が遅いので慣れるまでは短い方がいいと思ったとのことだ。もの凄くうれしい!感激である。


しかも、狭いところようにと、忍者刀もセットで作ってくれた。


「流石のパンさん!ありがとう!」


冒険家の気持ちを読む力がすごいと関心をする。


感謝感激である。


今まで使っていた日本刀はこれで卒業だ。


久しぶりにパンさんも冒険に行きたいと言う。

今日の夕方は4人で冒険だ!パンさんがいれば、森の奥にも行ける。


俺は今日の冒険の事で頭いっぱいになりながら、夜勤の残り時間を過ごす。


早く鎖鎌を実践で使いたい!

仕事そっちのけの俺であった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後まで読んで頂き
ありがとうございます。

面白いと思った方は、
ご投票をお願いします。
↓↓↓ クリック ↓↓↓
小説家になろう
勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ