放課後かくれんぼ
ホラーは、これで2作目になります。
1作目は、現タイ「放課後かくれんぼ(オリジナル)」です。これに加筆したものがこの作品。
怖さにはあまり自信がないのですが、楽しんでいただけると幸いです。
とある山のその麓。そこには歴史ある古い小学校があるんだ。その小学校にはね、子供の命に関わる不思議で、少し不気味な言い伝えがあるらしい。あ。なんで『らしい』なのかって?それは僕自身は体験したことがないからだよ。
でも、体験はしたことないけど、結構深い関わりがあるからその話を知ってるんだ。
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僕らの学校は古い。創立180年以上で、その時からずっと同じ校舎を使っているんだ。でも、規模は大きくないよ。各学年に一つしかクラスはないし、人数だって20人くらいずつしか居ない。そのかわりつ言っちゃぁなんだけど、クラス仲は勿論、学校全体の仲が良いんだよ。でもね、入学するときには20人でも、卒業するときはいつも1人か2人減っちゃうんだー。
ん?転校?違うよぅ。1つしかない学校だもん。転校なんてする人は滅多に居ないよ。僕が知る限りだと、創立してから6人が家の都合で県外に引っ越しちゃって転校したよ。後はー、3人転入してきたかなぁ。みぃんな、別々の時だったよ。平均したら20年に1人?それくらい珍しいんだよぅ。
うん?なんでそんなに詳しいのかって?ん~・・・ナイショ!企業秘密だから教えてあげないよぅ。
そう。それで、居なくなっちゃった理由なんだけどねぇ、放課後にかくれんぼしたことなんだ。放課後にかくれんぼした子供皆が居なくなる訳じゃないんだよ。でも、放課後にかくれんぼすると連れてかれちゃうんだよぅ。
え?何処にって?そんなの知らないよぅ。ただ、連れて行かれてしまうんだとしか聞いたことないんだもん。そんなに気になるなら君が試してみたら良いじゃないか。ま、どうなっても僕は責任取らないけどねぇ。
そうだ。今から80年位前だったかな、最初の死者が現れたのは。あの子が始まりなんだと思うよ。これも何かの縁だろうし、折角だからその子の話、君には特別に教えてあげるよ。
放課後のかくれんぼ。昔、僕らの学校で男の子が行方不明になったんだって。見つかった時にはその男の子、もう死んじゃってたって聞いたよ。だからね、放課後にかくれんぼするときは外の倉庫に隠れちゃいけないんだよ。連れて行かれちゃうんだから。
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ある夏の日の放課後のこと。クラスの皆でかくれんぼをしていたんだ。外にある倉庫に隠れてオニをやり過ごす。真夏の日差しを遮って、ほんの少しだけ涼しい倉庫の中。絶好の隠れ場所だと思ったんだ。
ふと気が付くと、開いていたはずの倉庫の扉が固く閉ざされていた。急に怖くなって、僕はドアを力任せに叩く。
開けて!!僕はここだよ!!ここから出して!!
いくら声を張り上げても誰も来てはくれなくて。暑いのに寒くて、寒さで滲んだ脂汗が背中をつたう。頭の中と倉庫の中、両方に響く高い笑い声。僕以外に誰も居ない筈なのに、僕の腕を誰かが掴んでいて―――
おとーさん・・・おかーさん・・・たすけて・・・
僕の意識はそこで途切れた。
今思えば、コレが僕の最期の記憶なのかもしれない。
次に目を覚ました時、誰も居ない校舎の中で独りぽつんと佇んでいた。僕以外に誰も居ない―――なのに声が聞こえてきた。あの、笑い声と同じ声が。
『独りは寂しいんだ・・・僕とずっと一緒にいよ?』
笑いを含んだ声が言葉を紡ぐ。
いやだ!!僕をお家に帰してよ!!
そう、叫んだけれど、叶うことはなくて。僕は声だけが存在する校舎に閉じ込められた。初めは僕独りだったんだけど、いつからだったか子供が来るようになった。僕みたいに、『ナニカ』に捕まった哀れな仲間が。
時間なんてあって無いようなモノだから、どれくらいの時間が、月日が、年月が、流れていったのかなんてわからない。わからないけど、時間をかけていると感じるほどにゆっくりと、僕の哀れな仲間は少しずつ数を増やしていったんだ。
僕と同じように最初は抵抗しようとして、けれど結局は敵わず諦める仲間達。
『君も、独りは嫌でしょう?一緒に楽しく過ごそうよ』
クスクスと嗤う声が響く。もう、その声に抗う気力なんて湧いてはこない。何を言ったって、何を叫んだって、叶ったことは一度だってないんだ。
今も時々現れる僕の哀れな仲間。僕みたいにこの校舎に囚われていて、同じようにここから出ることができないようだった。この場所から解放される日は来るのだろうか?何も出来ないことに絶望し、いつ叶うかもわからない希望の欠片はは無残にも砕け散っていく。誰かが、何かが、僕らを救い出してくれる日が来ることを夢見て、僕らは今日も囚われの日々を過ごす―――
******
オニが彼を見つけたときには、もう息をしてなかったんだって。それとね、死んじゃった男の子の顔、何かに怯えたように目を見開いていて、頬の筋肉は恐怖に引き攣っていたんだって。
どうだったぁ・・・?これが僕の知ってる最初の男の子の話だよぉ。80年以上経った今でも、僕らの学校では居なくなっちゃう子が出るんだぁ。その子も、最初の男の子や他の子達みたいに捕まっちゃってるのかもねぇ。・・・君はどう思う・・・?
***
とても嬉しそうに『ソレ』は話す。
とても愉しそうに『ソレ』は嗤う。
そして、
まるで、
何処かへ誘おうとするかのように、
歪んだ笑顔を浮かべた『ソレ』は手を伸ばす。
『ほら。僕の手を取って―――?』
***
絶望に染まった顔。
恐怖に歪んだ顔。
ふふっ・・・一体何が起こったんだろうねぇ・・・?
何を見たんだろうねぇ・・・?
あぁ・・・君もかくれんぼするときは外にある倉庫においでよぉ。一緒にあそぼ?僕が、君を、タノシイトコロに連れて行ってアゲルからさぁ―――
***
あは。
君は『放課後のかくれんぼ』で『ナニ』が子供達を連れて行っちゃうのかわかったかい?
そして、『僕』が一体なんなのかわかったかい?
折角だからさぁ・・・答え合わせ、しよっかぁ。
まずは『ナニ』が子供達を連れて行っちゃうか、だね。正解は『校舎』だよぉ。当たってた?
あ。でも、ただの『校舎』じゃないんだよ?最初の男の子が死んじゃったとき、築何年だったか覚えてるかい?築100年以上、だよ?それ以前に死んじゃった子は居ないんだぁ。ここまで言えばわかるよね?
そ。よく言うよね、100年経ったモノは付喪神が宿る、ってさぁ。大事にされたモノは『良い付喪神』が。粗雑に扱われたモノは『悪しきモノ』が宿るんだ。しかもね、『悪しきモノ』は100年経ってなくても宿っちゃうんだよぅ。怖いよねぇ。
『校舎』は、とぉっても大事に扱われてきてたんだよぉ。100年経ってようやく『生まれた』んだからぁ。
おっと。危うく忘れるとこだったや。『僕』が一体なんなのか、ね。
『校舎』の話をした後だもん。もう想像ついちゃってるよね。ご想像の通りだよぉ。『僕』はねぇ、100年経った『校舎』に生まれた『モノ』だよぅ。
大事にされてきたからねぇ、一応、『良い付喪神』なんだぁ。えぇ?そうは見えないぃ?ちゃぁんと、こうなった理由あるんだからね!
『学校』って、良くも悪くもいろんな感情が混ざり合った場所でしょぅ?嫉妬だったり、羨望だったり、嫌悪だったり、好意だったり。そんないろんな感情を受けてきたから、愉しいことがだぁいすきな『僕』が生まれたんだぁ。
独りは寂しいし、愉しくないからきらぁい。だから、愉しめるように『オトモダチ』を連れてきてるんだよぉ。ずぅっと、一緒に居てくれる『オトモダチ』を、ね・・・
『君も、僕の『オトモダチ』になってくれるかい―――?』
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そんなセリフを残し、『ソレ』は姿を消した。『ソレ』が生まれたと言う『校舎』が一体何処に存在しているかまでは聞けなかったから、もしかしたら、今も、『オトモダチ』は増え続けているのかもしれない。
子供達は、囚われたままなのかもしれない。
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―――クスクスと嗤う声が響いてくるような気がした―――
読んでくださってありがとうございました。
今度こそ夏のホラー2015に参加できる文字数ですよ!
参加する予定で書き上げたから、23日にポチりましたよ!!
登録は12番目です!頑張りました(笑)
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むっちゃ喜びます。(感想等にはちゃんとお返事書きます!ユーザーさん限定になっちゃうかもだけど・・・)
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