表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/16

隣村にあった手紙

愛するカローナへ。



元気にしてるか?

俺は、正直元気じゃない。

最近、妙なことが続くんだ。


「明日、畑には行くな」


突然だったんだよ。

俺の頭に、何かが棲みついたんだ。

毎日毎日声が響いてさ。


別に、俺、何にもしてないんだぜ。

ただ「(未来)のことがわかれば便利なのに」って思っただけだよ。

それなのに、何かの声が警告するんだ。


「川には近寄るな」

「明日採れた茸は口にするな」

「大雨が降るから傘を持っていけ」


それがさ、全部当たるんだよ。

怖いくらい。


いいだろ?

明日のことを教えてくれるんだ。

この声に従っていれば、俺は一生困らないんだ。

そう、思ってたんだけどな。


村のみんなが、死ぬんだよ。

俺が回避した危険がさ、村の人たちのところに行っちまうんだ。


畑の溝で足を滑らせ。

増水した川に流され。

珍しい毒茸を食べて。


もう何人も死んだ。

俺が殺したようなもんだ……。


俺の村は31人しか人がいない。

1月もすれば、みんな死んじまう。

俺が声を無視して死ねばいいのに、どうしてもできねぇんだよ。


そうやって今日、な。

また、声がしたんだ。


「土砂崩れでお前の村は滅ぶ」


なぁ、俺、どうしたらいいんだろうな?

今度こそ、みんな死んじまう。

どうすればいいんだ?


土砂崩れなんて俺1人が死ぬだけじゃ済まない。

本当の本当に、みんな死んじまう。

俺はもう嫌だ。


今から、俺は死のうと思う。

俺が死ぬって運命を回避したせいでみんなが死んでるんだったら、俺が今死んだら明日の土砂崩れはなくなるかもしれないからな。

最期におまえに会えないのが心残りだ。


カローナ、愛してる。

実は、来月おまえの村へ行ってプロポーズするはずだったんだ。

だけど、もう、無理だ。

ごめんな。

俺がまたどこかで生まれ変わったら、今度こそ一緒になろう。


愛してる。愛してる。愛してる。

何度でも言う。

最期まで、俺はおまえを愛してるから。


じゃあな。またいつか。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ