喋る生首
単なる噂だ、と大人たちは笑い飛ばしました。
でも子供たちは本気で信じていました。
「喋る生首がある」
子供たちの間で、まことしやかにささやかれている、噂。
ある日学校が終わったあと、「確かめてみよう」ということになりました。
怖がりながらも10人ほどの子供たちが生首があると噂の森へ行きました。
誰が置いたのか、その生首は森の洋館の中にあるらしいのです。
洋館は、いかにも怪しげな雰囲気を漂わせていて、1人の子供が恐る恐るドアを引きました。
あっさりドアは開き、子供たちは手分けして生首を探しました。
そして、1人の少年が見つけました。
見つけてしまいました。
少年が入ったのは、書斎でした。
まるで調度品の1つのように。
自然にそれはありました。
少年とパチリと目が合い……生首は一筋の涙を流しました。
その口が開き、何かを言いかけたとき……。
少年は耳を塞ぎ、泣き叫びながら転がるように洋館を飛び出しました。
その声を聞いた仲間も反応して、蜘蛛の子を散らすように逃げていきます。
あの生首は一体何だったのでしょうか。
何を言おうとしたのでしょうか。
今もあの場所にあるのでしょうか……?
そしてあの洋館に行く者は、誰もいなくなりましたとさ………。