殺された学生たち
王都で働く警察署長さんが仕事場に入ったのは、教会の鐘が9つ鳴ったときでした。
彼は、最近少し目立ってきたお腹を揺らして部下に挨拶します。
そして、いつも通り署長室のドアを開けました。
途端に驚いて、声を上げました。
彼のよく磨かれた机には、これでもかというほどの手紙が積み上げられていたのです。
何かと書類仕事が多い春とはいっても、あまりの量に ー後で数えてみたら214枚もありましたー うんざり顔の署長さん。
手近にあった10枚の封を切りました。
中に目を通した瞬間、溜め息混じりだった彼の雰囲気が変わります。
うんざり顔が一変し、驚愕に目が見開かれました。
手紙の中身は、全て報告書でした。
そして、内容も同じでした。
「殺人と思われる事件、だと……!?」
署長さんは次々と手紙の封を切り、中身を確認していきます。
でも、全て内容は同じでした。
昨夜のうちに、214人が、何者かに殺された。
治安が良く、強盗ですら起こらないこの国では信じられないことでした。
被害者たちは、住んでいるところも見た目もバラバラで、共通点はまるでありません。
強いて言うなれば、みんな14、5歳ほどの学生だったということくらいです。
警察はすぐに動きましたが、手掛かり1つ掴めません。
結果として、犯人が見つかることはありませんでした。
殺された学生たちが、呪い殺したのでしょうか………?
そうしているうちにこの事件を知る人も減り、誰もがこのことを忘れてしまいましたとさ……。