1/16
神隠し
この国には、たくさんの人が住んでいます。
大人たちも、子供たちも、みんな仲良しです。
金の髪の人、緑の目の人、黒い肌の人。
いろいろな人がいますが、助け合って生きています。
この国は広く、豊かな穀物も実るので、けんかをする人もいません。
王様や貴族の方々を尊敬して、楽しく暮らしています。
警察の人もいますが、あんまり仕事はありません。
誰も悪いことをしないからです。
でも、この国には不思議なことが1つあります。
それは、子供がときどきいなくなることです。
さっき遊びに行ったはずの子供が、家に帰って来なかったり。
市場へ買い物に行って、ふと目を離したらいなくなっていたり。
おもちゃ屋さんで待っていたはずなのに、いつの間にか消えていたり。
毎年、必ず子供はいなくなっていました。
誘拐の線も考えて、警察も動きましたが、子供がいた家には何の連絡もありません。
最悪のことを考えても、遺体すら見つかりません。
そうして消え失せた子供たちは、神様に隠された。
昔の人々はそう考えて、このことを『神隠し』と呼ぶようになりましたとさ……。