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御伽噺の話

 昔昔、あるところに、『黒薔薇姫』と呼ばれる乙女がいました。

 美しく波打つ金色の髪。

 蕾の綻びのように色付いた唇。

 薔薇色に染まった頬。

 そして何より、あでやかな薔薇のような色をした、紅い紅い瞳。

 その美しい容姿からか、数多の男たちがこぞって彼女に求婚を申し入れました。

 彼女が何処から来たのか、誰も知りません。

 しかし彼女は決して、一人の男を選びませんでした。たくさんの男たちをはべらせ、あまつさえこき下ろしたのです。彼女は悪女と呼ばれ、大勢の女性に蔑まれておりました。

 彼女は湧いてくる男たちをその毒牙にかけ、虜にしていきました。

 そんなある日のことです。

 美しい『黒薔薇姫』を囲っていた男たちが、次々と死んで行ったのです。

 人々は口々に言います。


「黒薔薇姫の呪いによって殺されたのだ」と。


 そしてとうとう『黒薔薇姫』は捕まり、牢屋に入れられてしまいます。

 そんな彼女の元に、国王陛下がいらっしゃられました。かの君はとても強かで思慮深い方で、民からは『平等王』と呼ばれておりました。

 そんな国王陛下は、悪女と名高い『黒薔薇姫』にさえその慈悲をお向けになられました。そのためにかの君は、『黒薔薇姫』の入れられた牢屋にまで足を運んだのです。

 国王陛下と対面を果たした際、『黒薔薇姫』は一言だけ言いました。


「このような小汚い場所に、ようこそおいでくださいましたわ、陛下」


 その言葉に、国王陛下は恐れ慄きます。この状況下においても、『黒薔薇姫』は笑っていたからです。

 彼女はボロ布のような囚人服でもなお、まるでそこの王であるかのような佇まいで座っておりました。まるでそこがもともとの、自分の居場所であったかのように。

 彼女は牢屋に入れられてもなお、その美しさが霞むことはありませんでした。

 狂った女の言葉に、流石の『平等王』も戸惑います。

 そして国王陛下は決断しました。


「『黒薔薇姫』を断頭台へ送る」と。


 そして『黒薔薇姫』は呆気なく、断頭台で首を切られ死にました。

 しかしそれを見ていた人々は口々に言います。その言葉の端々に、恐怖と嫌悪を込めて。


「『黒薔薇姫』は絶え間なく微笑み、そして首を切られるその寸前で「愛しておりました」と言ったのだ」と。


 こうして『黒薔薇姫』は死にました。それにより、国は以前より豊かに、さらに大きくなります。それは『平等王』が悪を嫌い、さらに聡明に国のことを省みるようになったためです。


 悪いお姫様が死んだことにより、国はようやく美しさを取り戻しました。

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