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第十章 大好きだよ(第四部)

「あの時、何も考えられなかったから気付かなかったけど……僕を助けに来てくれたのは君?」

 スウィングの濃い金髪が、風に揺れては光を帯びる。


「どうして分かったの?」

“大丈夫…僕が居るから、安心してゆっくり眠っていいよ、スウィング”


「分かるよ」

 探していたから。

 ずっと、長い間。


「……嬉しい。君にもう一度会いたかったんだ、スウィング」

 少なからず驚いた。


「ニリともクィーゼルとも違う。何でかな…たった一回会っただけなのに、君の事、忘れられなかった」

 その感情に気付くには、お互い幼すぎた。

 巡りあった事が必然であったと信じられる特別な存在。


「僕も、ずっと会いたかった。エルレア」

 少女は悲しげな顔をする。

「スウィングの事を思い出すと、いつも自分の選択を後悔しそうになった」

「君が死んだって聞かされた今でも……僕は」


「その先は、言っちゃいけない」

 少女はスウィングの唇に人差し指をそっと当てて、柔らかく遮った。

「僕じゃない誰かの為に……取っておいて」


 きっと、彼女が一番辛いはずなのに。

 あるはずだった未来を手放して。

 唇から離れた少女の指を右手で掴んで、スウィングは泣きそうな顔をした。


「ごめん……エルレア」

 何もしてあげられなかった。

 少女は静かに首を横に振る。


「スウィングは、幸せになるよ」

 まるで、聖女が民を言祝ことほぐように。

 幾千の花びらが舞い上がり、輝く金色の粒子に変わった。


 そしてその粒子は、引き寄せられるように少女の元へ集まると、渦を巻くように空へ駆けていく。


 光の螺旋。

 やがて少女も、輝く粒子を身に纏う。


「覚えていて。君を助けたのは僕だけの力じゃない。緑の瞳の子がいてくれたからだよ。僕は、あの子に力を貸してあげただけ。君を守りたいって心が、僕と同調したんだ。あの子の心が、君を守ったんだよ。だから」

 少女の足が、地面から離れる。


「スウィングも、あの子を守ってあげてね……」

 繋いだ手が離れ、次第に遠ざかる。


 スウィングが最後に見たものは、空に溶けるように消えていく少女の微笑みだった。

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