第七章 懺悔の花びら(第一部)
“エルレア・ド・グリーシュ”
実在した、セレンの本当の姉。
スウィングとの婚約が決定していた少女。
その少女の死。そしてその空白を埋めるためにもらわれてきた自分。
グリーシュの血を継ぐ娘だと周りに思い込ませて。
だとすると皇帝が自分を宴に招待した理由は、最終確認だったのだろうか。
第二皇子———スウィングの妃として迎える娘を見ておこうと思ったのか。
しかし、第一皇子が失踪した後皇帝が下した決断は……?
第一皇子シンフォニーが戻らなければ、シンフォニーの婚約者であるシャルローナを第二皇子スウィングの婚約者とする。それは、まとまっていたと言うグリーシュとの婚約話を破棄するという事だろう。
(一体何を考えている……?)
得体の知れない不安に襲われる。
皇帝は、底が見えない所がある。
目の前の第二皇子は、何か知っているのだろうか。
金髪の少女は十字架の前に膝をついたままの少年を見た。
(泣いて、いるのだろうか
必死で探してきた者が。
“何故”
「“エルレア”は……病気か事故で……?」
「違う」
スウィングの問いかけに、ニリウスが短く答えた。
「クィーゼル。俺……お前にずっと言えなかった事があるんだ……」
今まで見た事も無いほど、真剣で、どこか寂しげなニリウスの声だった。
☆☆☆
「クィーゼル。俺……お前にずっと言えなかった事があるんだ……」
三人がそれぞれ戸惑った表情で自分を見ている。
『クィーゼルには、絶対言っちゃダメだよ』
すまねぇ。
でも言わねえと俺が……苦しいんだ。
どうか。
「“エルレア”は……あいつは……俺が、殺した」
どうか、裁きを。