プロローグ
自分の周りにある幸せに気付いているだろうか?
「そんなもの、自分にはない」と嘆いている人がいれば、当たり前すぎるほどの日常にこそ、たくさんの幸せが隠れている事を教えてあげてほしい。
あなたに家族はいるだろうか。友達はいるだろうか。遠く離れた地でもいい、あなたが悲しんでいることを知れば、同じように悲しんでくれる人はいるだろうか。部屋に電気は通っているだろうか。蛇口をひねると水は出てくるだろうか。「おはよう」と言えば、「おはよう」と返ってくるだろうか。
どうか忘れないでほしい。それは当たり前のことなどではなく、あなたの周りにある幸せなのだということを。そしてどうか、気づいた幸せに感謝の心を持って生きてほしい。失った時に後悔などしなくて済むように。自分にとっての幸せを、今になってようやく気づいた俺のように。
あの日俺達は、かけがえのないものと引き換えに生きることを選んだ。
きっと誰もがそうしたであろうし、今でも間違っていたとは思わない。
いや、そう思わなければすぐに罪悪感に苛まれ、選びとった「生きる」ということさえ、投げ出しそうになるのだ。
あの場所を後にしたのは三人。
一人は現実を見なくなった。
一人は何かから逃げるようにずっと部屋から出てこない。
ここに来て二週間。俺は、いつも泣きたかった。