FILE70:命懸けの復讐『4』
総合病院
「おやっさん!良かった、本当に良かった!」
嘉藤稔二『工場経営者』
「生きて、いるのか・・・ワシは」
「ええ、そうです!ホラ、奥さんの写真、持って来ましたよ!」
「本当に一時はどうなるかと思いましたよ。私は警視庁の中嶋です」
「同じく、江茉です。早速ですが、教えて下さい。あなたを襲ったのは誰なんですか!?捜査が行き詰まってましてね。お願いします!」
「イヤ、中嶋警部に江茉刑事。行き詰まってはいないよ。嘉藤さんの証言があれば、事件は解決だ!」
「確かに、嘉藤さんの証言は有効だろうが・・・」
「凶器すら、まだ見つかってないんですよ?」
「イヤ、中嶋警部達はもう凶器を見つけてるよ。それどころか、あの現場に居合わせた全員が凶器を発見出来てるんだ」
「ヒントは鏡よ!」
「思い出してみてくれ。あの鏡の飛び散り方!」
「普通は細かい破片程遠くに飛びますよね?」
「ところがや、なぜか一番大きい破片が一番遠くに飛んどった」
「つまり、犯人は部屋を荒らした後に鏡を割り・・・一番大きい破片で嘉藤さんの首を切った」
「そして、その破片を投げ捨てた!」
「つまりだ、犯人は事件の証拠になるであろう凶器を、敢えて一番目立つ場所に隠したんだよ!」
「そして、全てを教えてくれたのは、あの人よ!」
そう言って篤子が指差したのは、嘉藤の奥さんの写真だった。
「あの荒らされた部屋の中で、写真が飾ってあった一角だけ、全く手付かずだったんだ」
「線香ですら、倒れず煙を立ててたんです」
「その時、思ったんや」
「この場所は、犯人にとって侵す事が出来ない大切な場所なんじゃないかとね」
「おじいさん、ゴメンナサイ。おじいさんの気持ちはよく分かります。けど・・・」
「これは、やってはいけない事なんですよ!」
「・・・君が、明日岡スゥ警視正だね?それに側にいる子は浜谷篤子警視に、柏少年探偵団の面々か・・・フフ、キレイな眼をしている。こんな眼をした子達に、私の小細工など通じる訳がないか・・・すまなかったね、村井君。君を巻き込むつもりはなかったんだ・・・真犯人は、私です。私が、犯人なんだよ・・・」
「え・・・今、何て・・・?」
村井英志は、唖然としている。
「私は、自分で自分の首を切ったんだ・・・」
「な、何で!?」
「復讐だったんだ。奥さんを死に追いやった高本さんを、殺人罪で逮捕させる為に・・・命を懸けた、復讐だったんだ・・・」
「じ、自殺だった!?」
「私はね、高本が憎かった・・・ヤツさえいなければ、妻は・・・そう思うと、悔しくて・・・何としても復讐してやりたかった。その為には、こんな命なんて・・・しかし成功しなかったのは、きっと、間違った事だったからなんでしょう・・・ゴメンな、ワシが間違っていたんだよ。これで、良かったんです・・・」
嘉藤稔二は、奥さんの写真を見ながら泣いていた・・・
これで、本当に良かったのか?
次回、高本に天罰を降す。