FILE69:命懸けの復讐『3』
「顔も見たくなかった?」
「どういう事ですか?」
「2年前、おやっさんは高本の口車に乗って借金を肩代わりして・・・それで、工場を手放す事になったんです」
「それじゃ、工場か倒産したのは・・・」
「高本のせいです!それからのおやっさん達の苦労は半端じゃなかった。ヤツのせいで、おやっさんの人生は・・・メチャクチャになってしまったんだ・・・」
「村井さん。嘉藤さんを発見し救急車が来るまでの間に、部屋の中の物に何か触ったりしましたか?」
「いえ、おやっさんの事が心配で・・・他の事は何も・・・」
「それじゃ、これに見覚えは?」
スゥは英志にライターを見せた。
「いいえ、ありません。でもね、そのイニシャルには見覚えがありますよ。充分過ぎる程にね・・・」
「ああ、確かにオレのライターだ。だが、それだけでオレが犯人だって決められるのか?」
「それだけじゃない!この袖口は何だ?このボタンは被害者が握ってた物だ。オマエが嘉藤さんを刺そうとして争った際に、千切れたんじゃないのか!?」
「刑事ってのは、思ったより頭悪いんだな。オレがあんなジジイを殺す動機がどこにある?ライターにしろボタンにしろ、偶然落とした物かも知れねぇじゃねぇか。あのジジイ、やれ湯を沸かしてくれだの、タンスの上の物を取ってくれだの、あれこれ用を言いつけやがって碌に座れもしなかったんだぜ?オレは客だってのに、全く礼儀を知らねぇジジイだぜ。それより問題なのは、第1発見者が村井だって事だと思うがね。オマエ、工場潰れて碌に給料貰ってなかっただろ。逆恨みでもしてたんじゃねぇのか?」
「貴様ー!!」
「止めろ!!」
「ここは警察の中ですよ!!」
「許せない。オマエだけは絶対許さない!!」
「止めて下さい!!」
争う英志と行啓を、スゥが一喝した。
「確かに状況証拠は揃ってる。高本さんが犯人だという事を示してね。でも、それは完全でなく不自然なんだ!!」
スゥは、制服のボタンを無理に引き千切って見せた。
ブチン!!
「もし、本当に争った末にボタンが千切れたなら、こんな風に糸がまばらになるハズだ。だけど、問題のボタンの方は糸が纏まってる。これは明らかに、鋭利な刃物で切り取られた事を示してるんだ」
「何が言いたいんです、警視正・・・」
「つまり・・・高本さんを、犯人だと断定出来ないんだよ」
「そ、そんな・・・」
「どういう事なんですか!?」
「中嶋警部、江茉刑事・・・冷静に考えれば、分かるハズだろう?中嶋警部が高本さんを逮捕したのは、仕組まれた事だったんだよ!!」
「し、仕組まれたって!!」
「あの証拠がですか!?」
上から順に、スゥ、茂次、弓香の順です。
「そう、用意された物だったのよ」
「だから、揃い過ぎていたんだ」
「もし、本当に高本さんが犯人なら、こんなたくさん証拠を残すと思います?」
「気が動転して逃げ出したなら辻褄が合うけど、」
「もしそうやったら、そんな人が野次馬として現場に戻るのなんて変やんか!!」
「恐らく、ライターも高本さんの隙を見て盗んだ物だと思うわ」
上から、篤子、雄也、葉平、哀、雅子、桜菜の順です。
「フフフ。ありがとよ、ボウズ共。オマエさん達に庇ってもらえるとは思わなかったぜ。危なく犯人にされるトコだった。言ってみれば、オレも被害者って訳だな」
「クソッ、これで捜査は振り出しか」
「今迄得た手掛かりが全て、高本さんを陥れる為に仕組まれたとすると、他に真犯人がいるって事になりますよね?」
「そういう事になるね」
「バカな・・・じゃあ、一体誰が!?」
プルル、プルル・・・
突然、電話が鳴り出した・・・
チャッ!!
「もしもし・・・?」
チャッ!!
「中嶋警部、江茉刑事。すぐに車を出してくれ。病院に向かう!!」
「一体、誰からの電話だったんですか!?」
「事件の全てを、知っている人からだよ!!」
果たして、事件の真相は!?
次回、哀しき真相が明かされる。