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FILE66:温泉旅館の殺人『5』

茂次は良男の肩をポンと叩いた。


「残念ながら、私はあなたに手錠を掛けなければなりません。でも、その前に・・・」


茂次はタバコを良男に差し出した。


「さっき、吸い損ねたでしょう?」


「本当に、すみませんでした・・・」


そう言って良男がタバコを握った、その時だった。


「ストップ!!」


スゥが叫んだのは。


「これでハッキリしたよ。あなたは犯人じゃない!!良男さん、あなたは左利きです。もし本当にあなたが犯人ならば、社長の傷は右についているハズです。ところが、社長は左のこめかみを殴られていた・・・」


「ち、違う!私がやったんだ!」


良男は反論しようとするが・・・


「言ったハズですよ、良男さん。現場で面白い物を見つけたって。社長のこめかみについていた傷、あれはどう見てもゴツゴツした岩でついた傷じゃない。何か固く丸い物で殴られた傷です。医師の一葉先生もそう言ってました。そうですね、一葉さん!」


「え?ええ、間違いないわ。」


「な、何で殴られたんですか!?」


茂次が問う。


「これだよ・・・」


そう言ってスゥが懐から出したのは、玉砂利だった。


「玉砂利!?待って下さい、さっきも言ったでしょう!?そんな物が1つや2つあったって・・・」


「そう!1つや2つあっても意味はない!でももし、これが1つや2つではなかったとしたら?」


そう言うと、スゥは靴下と更に大量の玉砂利を取り出した。


スッ!


「つまり犯人は、こうやったんだ・・・」


スゥは玉砂利を靴下に詰め込んだ。


パラパラ・・・


バン!!


「そ、その形は・・・!!」


茂次と一葉は、靴下の形状に気がついた。


「そう、これはブラックジャックという凶器だ。こうして振り回せば、かなりの力が出せます。例え・・・力の弱い女性でも、充分男性を殺傷出来る!!良男さん、あなたはさっき中嶋警部が『社長が風呂場で倒れていた』と言った時、『足を滑らせ転んでも無理はない』と言いましたよね?警部は『倒れていた』としか言っていません。それなのになぜ、『足を滑らせた』なんて思ったんですか?それは、あなたがそう思わせるよう仕組んだからです!」


スゥの言葉を、篤子と真古が引き継いだ。


「あなたは脱衣場で遺体を見た時、真犯人が誰か分かったんでしょう。それで犯人を庇おうとしたんですね。それで浴衣を脱がせ、風呂場に運んだんです」


「そやけど良男さん、そんな事したらアンタの庇おうとした人はもっと辛い目に遭うんやないですか?」


「もう良いわ・・・ありがとう、あなた」


言葉を発したのは、小晴だった。


「小晴・・・!!」


「小晴さん、あなたの履いている靴下、最初に見た時とは違っています。砂利を入れたために汚れたから、取り替えたんですね?」


「ごめんなさい、深雪さん。でも、アイツ・・・いつもいつもこの人を苦しめて・・・どうしても許せなかった!!ありがとう、あなた。あなたのその気持ちだけで、もう充分よ・・・」


良男と小晴は、泣きながら抱き合ったのだった。




その後、深雪は一葉達に付き添われて送ってもらう事となった。


「(殺人は絶対許されない、絶対やってはいけない事だ。でも、庇い合う2人の姿を見ると、小晴さん自身を憎む気持ちにはなれないんだよな・・・)」


例え間違っていても・・・


夫婦愛は美しいものなのかも知れない。


次回、いきなり事件解決!?

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