FILE35:茶道家元毒殺事件『3』
スゥは遊乃の方を向くと、質問を始めた。
「神菜さん、最初にケーキが怪しいと思ったのはあなたですよね?」
「え?ええ。」
「なぜわかったんです?被害者はその時、お茶も一緒に飲んでいたハズですよ?なぜ、ケーキだけが怪しいと思ったんですか?」
「あの時、アリが落ちていたケーキにたかってたんです。そして、その中の何匹かが死んでいたのでそれで・・・ほ、本当です!!それにあのケーキだってもらい物で、家元がご自分で箱から出したんですよ?でも箱には送り状もついていませんでしたし、一体誰からの贈り物だったのか・・・」
「警部、ケーキの送り主についての調べは?」
「ああ、現在調査中なんだが・・・」
中嶋は紙袋から複数の箱を出した。
中身はどれも例のケーキだ。
「見てくれ、このケーキ自体そこいらの店でよく売ってる物なんだ。この通り、殺しに使われたのと同じ物が簡単に手に入ったよ。メーカーにも問い合わせてみたんだがね、製造段階で毒が混入する事なんてありえないって怒られたよ。わかっているのは、この前定例のお茶会が開かれて、その時大勢の客が贈り物をして行ったようなんだが、どうもその中の1人が置いて行ったようなんだ。」
「でも、ケーキは目立つよ。」
「そうなんです、皆さんほとんど和菓子を持って来てらっしゃいましたからね。でも家元は、和菓子よりケーキの方が好きだったんです。」
「周りには内緒にしてありましたけどね。お茶の先生なのにケーキが好きなんて恥ずかしいからって・・・」
「その事を知ってる人は?」
「まぁ、我々3人くらいかな?ちょ、ちょっと待ってください。この3人の中に毒入りのケーキを贈った人物がいるって言うんですか!?」
「残念ながら、そう考えれば辻褄が合うんだよ。」
「私と神菜さんはちがいます。一歩間違えれば、死んでたのは私達のどちらかなんですよ!?」
「?」
「私と彼女も一緒にあのケーキを食べたんです!家元に言われてその場で箱を開け、ナイフを入れたんですよ!?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!って事は・・・1つのケーキを3つに分けて食べ、1人は死に2人は無事だった・・・どういう事だ!?そんな都合のいい事があるのか!?」
「でも、注射器を使えば・・・」
「何を言ってるんだ、家元の見てる前でそんな事できるか?」
「イヤ、待てよ・・・?もし仮に、犯人の狙いが家元じゃなかったとしたら・・・?」