FILE34:茶道家元毒殺事件『2』
スゥ達は、ある部屋に集まった。
1人の女性が涙を流している。
「彼女は住み込みで、被害者の身の回りの世話をしていたお弟子さんです。ケーキの異常に気づいて、110番通報をしてくださった方です。そこの2人も被害者のお弟子さんです。以上、この3人が被害者が倒れた時側にいた人物です。」
「それじゃあ、2・3質問させてください。今日は何の日なんですか?さっき村山さんが言ってましたよ、『こんな日に』って。今日はあなた達にとって何か特別な日なんでしょう?」
さっきの女性が口を開いた。
『神菜遊乃 家元の弟子』
「実は今日、桐沢流の後継者を決めるハズだったんです。今日私達が家元の所に集まったのは、次期後継者の発表を聞くためだったんです。家元は今年で65歳になりましたが、お子さんがいません。そこで、一番弟子の内の誰かを後継者にするおつもりだったんです。」
「で、その後継者は?」
「家元は普段から、実力では村山さんが一番だとおっしゃってました。」
「だからって、村山が選ばれるとは限らないじゃないか!!」
「イヤ、家元はこの私を桐沢流5代目の後継者にするおつもりだったんです!!」
「バカな!オマエが後継者だと!?」
「3日前、家元がわざわざ私の家を訪ねて来てくださったんです。その時私を後継者にするとおっしゃって、立派な花の鉢植えまで頂きました。」
「鉢植え?」
「ええ、家元は生け花の腕も中々のものだったんです。花の事にもそれはそれはお詳しい方で。」
「ああ、そういえば季節外れの花だから、手に入れるのに苦労されたようでした。『これで私の気持ちが伝わるでしょう』とおっしゃってました。」
「季節外れの花をわざわざ用意するって事は、よっぽど後継者として村山さんに期待してたようだな。」
「でも、残念です。できれば、家元の口から発表していただきたかった。」
その時、江茉弓香が部屋に入って来た。
ガチャ!
「失礼します。司法解剖の結果が出ました。」
スゥは紙を見た。
「どうだった!?」
スゥは黙って紙を渡す。
「死因はやはりトリカブトによる中毒死だな。ケーキに混入されていた毒とも完全に一致してる。思った通りじゃないか。」
中嶋はそう言うが、スゥは納得いかないという表情をしている。
そして、遊乃の方を向いた。