6話目
暫くの間、バイクを走らせ続けた涼介はニンジャ400をバイク専用の駐輪場に停めると、聳え立つソレを見上げて独りごちる。
「確かに天と地の狭間だな」
その呟きと共に視線の先に立つ巨大な塔……東京スカイツリーを改めて見詰めると、涼介は自分が完膚無きまでに敗北した時の事を思い出してしまう。
愛する彼女を奪われた。
結果的に生命も奪われた。
そして、何より……
其処で自分が喪ったモノを振り返るのを辞めると、涼介は静かに歩き出す。
夜の街を進み続け、東京スカイツリー駅構内にあるスカイツリーへの連絡通路を進む涼介の中で愛し、殺した彼女達との想い出が蘇って来た。
オルガ……俺を拾い、生き方と戦い方を叩き込み、リボルバーをくれた師。
そして、初恋の相手。
彼女との日々は死に満ちてた。
でも、何か充実してた。
師にであり、初恋の相手でもある彼女……オルガとの日々は戦いと死線を潜る毎日であった。
だが、同時に涼介に充実を与えもしてもいた。
しかし……
そんな日々がずっと続くと想ってた。
だけど、物事には常に終わりがある。
そして、俺は彼女を殺した。
今でも覚えてる。否、忘れる事は出来ずにいる。
オルガを殺した時の事を……
俺のミスで彼女は重傷を負ってしまった。
俺は助けようとした。だけど、実際は助かる見込みは無かった。
だから、俺はオルガを与えられたリボルバーで撃ち殺した。
オルガと言う師であり、初恋の女性を安楽死させた時の事を思い出すと、涼介は沈痛な面持ちを浮かべてしまう。
だが、ソレは涼介にとって序ノ口であった。
ドゥマ。周りはドーマーと呼んでたが、俺はドゥマって呼んでた。
で、気が付けば周りもドゥマと呼ぶ様になってた俺の最高の相棒にして愛する妻……
「出会いは最悪だったな」
ドゥマなる女性の最初の出会いは涼介の言う通り、最悪に尽きた。
一言で言うならば、お互いに本気で殺さんと殺し合った。
今でも覚えてる。
アイツとの殺し合いは……
互いに撃ち合って、終いには白兵戦になって……最後に俺がビルから突き落としてやった。
で、後で現れた時に何で死んでねぇんだって俺はキレ散らかしたのを覚えてる。
その後も俺を見る度に殺しに来て、酷い目に遭った。
互いに殺し合い続けて来たにも関わらず、コンビを組む事になった。
何が起きれば、そうなるのか?それは涼介と彼女だけの秘密だ。
で、互いに目的を持ってコンビを組んでから色々あったな……
アイツの親父殺しに手を貸したり、各地を流れて傭兵やらゲリラしたり、村を焼いたり、独裁者殺したり……
そういや、エベレスト沁みた山にも登ったな……
兎に角、アイツとは長い付き合いだった。
だからなのか、気が付いたらアイツを愛して、妻として娶ってた。
涼介とドゥマは20年以上の付き合いがあり、その間ずっと共に戦い続け、助け合って来た。
だからこそ、混沌は涼介から愛する彼女を奪ったのだ。
そして……
混沌に攫われた愛する彼女と殺し合う羽目になった。
殺したくなかった。だが、殺さなければ俺は死んでた。
だから、殺した。お腹の中に居た俺の子も含め……
今思い出しても、涼介を最悪な気分にさせるには充分過ぎた。
涼介は愛する彼女に殺される事を選ばず、復讐を選んだ。
ソレが正しかったのか?
涼介には解らない。勿論、世界中の者達にも解らないだろう……
そんな最悪な気分になりながら歩みを進 めてイルミネーションが美しいスカイツリーの前に立つと、涼介は4階の一般用エントランスフロアへ足を踏み入れた。
人の気配が無い?
今は未だ営業時間内。それなのに何で、スタッフの姿すら無いんだ?
スカイツリーには明かりが点っているにも関わらず、客どころかスタッフすら居ない。
そんな異変に即座に気付いた涼介は直ぐにマチェテを腰にセットすると、ボディバックからGLOCK17を抜いて警戒しながら歩みを進めていく。
程なくして展望デッキへ向かうエレベーターの前まで来ると、エレベーターの扉に1枚の紙が貼り付けられている事に気付いた。
紙に記された内容を読んだ瞬間。涼介の中で憎悪と憤怒が熱く滾っていく。
「展望デッキで待ってる。ね……そりゃ、良かった」
穏やかな口調ではあった。
だが、その声には憎悪と憤怒。それに歓喜が強く入り混じる狂気に満ちていた。
涼介はエレベーターに乗ると、躊躇う事無く展望デッキ階のボタンを押し、扉を閉めた。
暫くしてエレベーターが高さ350メートルに座する展望デッキに到着すると共に扉が開けば、涼介は足を踏み入れる。
足を踏み入れた瞬間。忘れようのないシガリロの香りが鼻腔を擽ると、涼介は駆け出した。
フロアを駆け抜け、シガリロの臭いの元である彼女の姿を目の当たりにするや、涼介は間髪入れる事無く銃口を向けて引金を引いた。
憎悪と憤怒。其れ等を込めて何度も何度も引金を引けば、13発の9ミリルガーで穿たれた筈の彼女……這い寄る混沌『ナイアルラトホテップ』は歓喜と共にシガリロを優雅に燻らせながら返す。
「見た瞬間。ノータイムで撃つとは流石だ。それに君の愛が強く籠もってて実に良い」
その言葉を聞いた瞬間。涼介はリボルバーを引き抜こうとする。
だが、ソレよりも早く。背後から何者かに押さえつけられ、床に押し倒されてしまう。
「がッ!?」
呻き声を挙げながらも自分を押さえ込んだ相手を確認すると、涼介は唖然としてしまう。
そんな涼介の様子を目の当たりにすると、混沌は紫煙と共に少しだけ落胆した様に言う。
「すぅぅ……ふぅぅ……僕の知る君だったら、彼女に気付かない訳が無いと思ったんだけど……僕の買い被りだったかな?」
その言葉に涼介が答える事は無かった。
涼介の視線は自分を押さえ込む黒髪の巨躯を持った彼女……ドゥマに釘付けであるが故に。
そんな涼介を気にする事無く、混沌はシガリロを燻らせながら語り掛ける。
「彼女を責めるなよ。彼女を殺したのは君で、僕じゃない。まぁ、殺し合わせてあの結果を齎した原因は僕だけどさ……」
「黙れクソアマ!!」
涼介が問答無用と言わんばかりに怒鳴り返すと、ふと現れた赤毛の女……オルガが涼介に語り掛けて来た。
「ロウ……久し振りね。20年以上ぶりかしら?」
「オルガ!何でだ!?」
「そうね。貴方に撃ち殺されたから仕返しをしたくなった。そう言えば、良いかしら?」
返ってきた答えに涼介が愕然としてしまうと、オルガは気にする事無く続ける。
「私は教えた筈よ。敵味方は存在しない……存在するのは誰もがプレイヤーであり、今まで友で味方だった相手が敵になる事もあれば、その逆もある。とね?」
告げられた言葉に涼介が困惑すると、オルガは更に続ける。
「私的には貴方と違って、彼女に怨みは無い。後、信じられないでしょうけど、貴方への怨みも無い」
その言葉は何故か、涼介に重く伸し掛かって来た。
すると、今度はドゥマが口を開いた。
「私も貴方に怨みは無い。あの時は私を殺すしか選択肢が無かった」
愛した女から言われた事に涼介が酷く沈痛してしまうと、混沌は嬉々としてシガリロを燻らせる。
「愛した女が敵に廻ってしまった事に酷く落ち込む辺り、君も未だ人間らしさが残ってるだね」
普段ならば怒鳴り返す。何なら、銃弾をブチ込んでいた。
だが、愛した女が敵に廻った事実に打ちのめされてしまった涼介は何も出来なかった。
すると、オルガが携えていたアサルトカービンのセレクターを弾き、フルオートに合わせた。
そんな様子に打ちひしがれながらも涼介は疑問を覚える。
処刑するのにフルオートに合わせる?
普段のオルガなら絶対にしない。
短い付き合いとは言え、涼介はオルガの事はそれなりに熟知していた。
だからこそ、疑問を覚えてしまう。と、同時にドゥマの押さえ込む力が弱まった事にも気付いた。
それと同時。アサルトカービンを構えたオルガが勢い良く後ろに振り返り、混沌に向けて引金を引いた。
絶え間無く響く銃声と共に多数のライフル弾が混沌へブチ撒けられて制圧射撃が続くと、涼介の腰にあったマチェテを引き抜いたドゥマは立ち上がるなり、床を蹴った。
銃声が止むと同時に混沌の目と鼻の先まで迫り、己が愛刀たるマチェテを振り上げていたドゥマは歓喜の表情を浮かべる混沌に向けて告げる。
「コレはあの子の分よ!」
その言葉と共にマチェテが振り下ろされれば、混沌の頭をカチ割られて脳味噌がブチ撒けられていく。それから直ぐにドゥマは追い討ちと言わんばかりに混沌の心臓にマチェテを突き立てんとする。
「で、これは私の分!」
その言葉と共に心臓にマチェテが深々と突き立てられれば、涼介は驚いてしまう。
そんな涼介にオルガは呆れ混じりに告げる。
「何ボサッとしてんの?さっさと、あのクソアマにブチ込みなさいよ」
その言葉で正気に戻ると、涼介はリボルバーを引き抜いて構えた。
涼介が銃口を向けた事を背中越しに察するや、ドゥマは直ぐに脇に跳んだ。
そうして射線が出来れば、涼介は躊躇う事無く引金を引いていく。
1発。2発とブチ込み、シリンダーに残った全ての弾をブチ込めば、混沌はその場に崩れ落ちて動かなくなった。
「殺ったの?」
オルガが漏らすと、涼介はGLOCK17に持ち替えて弾倉を詰め替えながら「マグチェンジしとけ」そう告げてから、ドゥマと共に警戒を続ける。
倒れた混沌はピクリとも動かなかった。
すると、その骸が消え失せ、代わりに革製の鞘に収まる大振りのククリナイフが現れた。
「コレってロウのよね?」
ククリナイフを拾い上げたドゥマが言うと、涼介はドゥマの前に赴いて受け取り、確認する様に見詰めながら肯定する。
「間違い無い。テンジンから譲り受けたククリだ」
テンジン。勇敢な戦士であり、エベレストの如き巨峰に住まう山岳民族の狩人。
そんな彼が恩人であるロウへ与えた彼の家宝でもある宝刀たるククリナイフが、ロウ……もとい、涼介の手に戻って来た。
ソレが意味するのは……
「あのクソアマ。お前等が裏切るのを察してやがったな」
不愉快そうに吐き捨てるが、ドゥマとオルガが驚く事は無かった。
「あぁ、やっぱり?」
「でしょうね。あの手の手合いはそう言う事すら愉しむたちの悪い性格してるし」
2人の愛した女がさも当然の如く返すと、涼介は尋ねる。
「お前等の生命、あのクソアマが握ってる様な状態だけど良いのか?」
涼介の問いに2人の女は涼しい顔で返した。
「また、敵に廻った時はよろしく」
「右に同じ」
そんな2人に涼介は呆れながらも心強さを覚えると、2人はからかって来た。
「あの時のロウの顔……マジで笑いを堪えるのが大変だったわ」
「ねー。私も噴き出しそうで堪えるのが大変だったわ」
ドゥマとオルガがケラケラ笑いながら言うと、涼介はマジでキレそうになってしまう。
「お前等マジでざけんな!」
「仕方無いじゃない。ほら、言うでしょ?敵を騙すには先ず味方から……ってさ?」
オルガがアッケラカンに宣うと、ドゥマも同じ様にアッケラカンに宣う。
「そうそう。私達、アカデミー賞モノの演技だったでしょ?アカデミー賞モノで思い出した。前から気になってたんだけど、アカデミー賞って何?」
そんな2人に何と言えば良いのか?涼介が解らずに居ると、オルガとドゥマは暢気に告げる。
「まぁ、何れにしろ暇潰しも兼ねてアンタに付き合ってあげるわ。この世界の酒や煙草とか味わいたいし……」
「あ、私もこの世界の酒とか料理を味わいたい。後、あのクソアマの首を捩じ切って引っこ抜いてやりたいから付き合うわ」
そう言う事になれば、涼介は乾いた笑いを浮かべてしまう。
そうして和気藹々とした遣り取りをしてると、何処からとも無く自動小銃を携えたゾンビ達がワラワラとやって来た。
そんなゾンビ達を見るや、3人の緩い空気が直ぐに一変。
オルガがアサルトカービンを撃ち始めて牽制し始めれば、涼介はオルガに要求する。
「ドゥマ!機関銃寄越せ!お前は暴れろ」
「了解」
その言葉と共に重い機関銃が渡されれば、涼介はチャージングハンドルを引くなり二脚を立てて伏せ、制圧射撃を始めた。
絶え間ない銃声と共に無数の銃弾がブチ撒けられて掃射されれば、ゾンビ達は次々にバタバタと倒れて逝く。
そんな涼介の制圧射撃によって敵の勢いが弱まれば、ドゥマとオルガは直ぐに動き出す。
オルガが側面に回り込んで側面を確保。と、同時に機関銃の銃声が止んだ瞬間に愛刀たるマチェテを携えたドゥマが突っ込んだ。
突っ込んだドゥマがマチェテを素早く振う度、ゾンビ達を次々にバラバラ死体へ変えていく中。独り残っていた涼介は機関銃を掴んで立ち上がると、オルガの居る側面へと駆け出していく。
ドゥマが片っ端から斬り捨てていく内にオルガと合流すると、涼介は再びその場に伏せるや、二脚で据えた機関銃を構えた。
すると、ドゥマは即座に踵を返して後ろに駆け出した。
残ったゾンビ達は携えていた軍用自動小銃をノロノロと構え、引金を引こうとする。
だが、ソレよりも早く涼介による機関銃掃射が実施され、絶え間無い銃声と共にゾンビ達はミンチと化して逝った。
銃声が止むと、オルガが周囲を警戒。ドゥマは自分が持ってた予備の弾を渡すと、背負っていた25ミリという大口径のポンプアクション式散弾銃を腰溜めに構え、辺りを警戒していく。
2人が警戒してる間に機関銃に弾を込め直し終えると、涼介は2人に警戒を任せて死体を調べ始めた。
死体はどれを調べても、真っ当な人種には到底思えなかった。敢えて言うならば、半グレと呼ばれる碌でもない人種にしか見えなかった。
そんな連中の死体を調べると、涼介は思い出した様に尋ねる。
「この死体に心当たりあるか?」
涼介が比較的原型を留めた生首を持って見せながら問うと、オルガは答える。
「あぁ、多分だけど……クソアマが5箇所から集めた死体よ」
「その5箇所に死体が大量に保管されてたわね。腐ってたり、蠅と蛆が無数に沸いてた状態で」
オルガの後にドゥマが思い出した様に言えば、涼介は「全部あのクソアマの掌の上だった訳が……」と、実に不愉快そうに独り言ちる。
そんな時だ。エレベーターが到着したベルが響いた。
涼介が指揮官の如くハンドサインで指示を下すと、ドゥマとオルガは素早く動いてエレベーターの手前側面に移動するや、アサルトカービンとショットガンの銃口を向ける。
そうして何時でもやって来た者を殺せる様に体制を整えた。
しかし、涼介はエレベーターから現れた者……もとい、綾子を見るや直ぐに中止命令を下す。
「撃つな!!中止!中止!中止!」
その言葉と共に2人は銃口を下ろすと、少しだけバツが悪そうな面持ちとなってしまう。
そんな2人を臨戦態勢でチャラい青年を殺した時の蒼い槍を手にして睨み付けると、辺りに散らばる多数の死体を一瞥してから綾子は涼介に問う。
「どうなってるの?」
綾子に問われると、涼介は何て答えるべきか?思案しながら言葉を慎重に選ぶ様にして答えた。
「混沌が居た。2人は混沌に使われてる振りをしてた。で、ついさっきまで2人と一緒にゾンビ共を始末してた」
涼介が簡潔明瞭に分けて答えると、理解した綾子は蒼い槍を下ろしながら更に尋ねる。
「成る程ね。で、どっちが私の腹と右手を撃った?」
その問いが投げられると、バツが悪そうに困った面持ちとなるオルガをドゥマが見詰めてしまえば、直ぐに答えが出た。
そんな答えを受け取れば、綾子はオルガに問う。
「後で殴らせてくれる?何なら、今でも良いわよ?」
「そんな事より、俺が此処だってよく解ったな?」
涼介が話を逸らす様にして問うと、綾子は殴るのをそっちのけにして答えた。
「涼介のバイクと死体に発信機仕掛けてたのよ……両方の反応が此処を指したから、マー君に乗せて貰った」
「さよか」
発信機を付けられた事を責める気が無いかの様に認めると、涼介は死体を見渡しながらどうすべきなのか?問う様に漏らす。
「この大量の死体どうするべ」
1つの死体でさえ、誰にも知られる事無く処分するのは至難の業。だと言うのに、コレだけ大量の死体を片付けるのは羽目になってる事に涼介が頭を悩ませると、綾子は涼しい顔で返した。
「ソレなら問題無いわ」
「何でだよ?」
涼介達が首を傾げると、綾子はその理由を答えた。
「此処、スカイツリーだけど私達の知るスカイツリーじゃないから」
その理由に涼介と2人が益々首を傾げて「何言ってんだコイツ?」そんな懐疑的な死線を向けると、綾子は大まかながらも説明していく。
「一言で言うなら、位相が違うの。普段居る世界が表なら、此処は裏と言っても良いわ……だから、スカイツリーの展望デッキに今居る人達は何にも見えても居なければ、聞こえても居ないのよ」
綾子が大まかながらも説明すると、涼介はサッパリ解らん。そんな表情を浮かべながら確認する様に言う。
「良く解らんが、要するに死体が露見する事は無い……その認識で良いか?」
「そんな認識で良いわよ。でも、コレだけの死体をそのままにするのは不潔だから、私は片付けるけどね」
そう言うや、綾子は無数に並ぶ無惨な死体の前に赴いてしゃがんだ。
それから呪文とも言える何かしらの祝詞を唱えると、屍山血河は涼介達の目の前から跡形も無く消え去り始める。
程なくして何も無かったかの様に綺麗な床が現れれば、綾子は一息吐いてからさも当然の如く告げる。
「死体と血痕を海に転移させたわ」
「マジかよ」
「犯行現場処理し放題で便利ね」
箱庭が世紀末となる以前、書類が黒く塗り潰される様な職場で働いていたオルガが呆れ混じりに漏らせば、綾子は思い出した様に言う。
「さて、問題が片付いた事だし、今殴る?それとも後が良い?」
綾子が紫の魔力光輝く右拳を翳しながら問うと、オルガは降参と言わんばかりに返す。
「貴方の何かヤバそうな拳を叩き込まれたら、ひ弱で貧弱な私は死んじゃうから辞めて♡あ、もう死んでたわ……ロウに撃ち殺されて」
平然と涼介にダメージを与える発言を交え、辞めて。そう宣うオルガに綾子は不愉快そうに返す。
「何がひ弱で貧弱よ。機関銃で釘付けにして、空いた側面から撃って来る様な悪辣な方法使う奴が言って良い言葉じゃないわよ」
「え?あの程度の攻撃、普通じゃないの?」
綾子の言葉にオルガが首を傾げて涼介とドゥマに尋ねると、ドゥマは「普通の良くある攻撃ね」そう返し、オルガの発現でダメージを受けた涼介は沈痛な面持ちで我関せずと言わんばかりに沈黙を貫いた。
そんな3人を綾子は不愉快に思いながらも、ある事を思い出すと共に直ぐに溜飲を下げた。
「まぁ、良いわ。其処の2人、マー君の手下を殺してるから……カンカンのマー君に何て言い訳するのか?観物だし」
そう2人……主にドゥマだが、2人は塚地の手下達を皆殺しにした。してしまった。
それ故に塚地は非常に怒ってる。無論、殺した下手人にキッチリと血の報復もしたがってる。
そんな塚地に何て弁明しなければいけないのか?と、言う問題が突き付けられると、涼介は頭を抱える事しか出来ないのであった。




