表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰還者《リターナー》は平穏に暮らせない  作者: 幽霊@ファベーラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/8

4話目


 バイクを走らせてから約1時間が経った頃。

 涼介と綾子は、さいたま市内から東京都内某所にある廃墟となってから久しい潰れたボウリング場から約1キロ離れた所にあるショッピングモールに来て居た。

 ショッピングモールの駐輪場にニンジャ400を停めると、涼介はヘルメットを脱いだばかりの綾子に告げる。


 「今から行くボウリング場だった廃墟は、アイツ(塚地)の情報通りならイケオジと繋がりがあると思しき連中が頻繁に出入りしてるそうだ」


 涼介から聞かされると、綾子は訝しんでしまう。


 「居場所が解ってるのに放置してるのっておかしい話よね」


 居場所が解ってるならば、手下を差し向けて行動させれば良い。

 それにも関わらず、放置している事は綾子にとっては充分な疑問と言えた。

 ソレは涼介も同意見であった。


 「確かに疑問だな。自分の手下送らなくても、退魔師連中に教えて始末させれば良いってのも含めてソレをしないってのは……」


 「案外、連中と通じてたりして」


 「ソレするメリットは何だよ?」


 「解んないよ」


 綾子が正直かつ素直に思った事をそのまま口にすれば、涼介はスマートフォンを手に取って画面をタップしてメモ帳アプリを起動。それから直ぐに画面を何度もタップして沈黙を未だに保つアリスに『廃墟となってるボウリング場の今の持ち主を洗え』そう命じた。

 アリスが沈黙と共に電子の世界で調べ始めると、スマートフォンをしまった涼介は綾子と共に歩き出していく。

 ボウリング場へ向けて歩みを進めていると、綾子が聞いて来た。


 「涼介は普通に生きようって思わないの?」


 綾子から遠回しに復讐を棄てる気は無いのか?そう問われると、涼介は斬り捨てる様にハッキリと否定した。


 「無理だ」


 「理由を聞いても良いよね?」


 理由を問われると、涼介は答えていく。


 「愛し続けた女を俺は()()()()殺す羽目になり、()()()。あのクソアマに攫われた時の彼女は俺の子を腹に宿()()()()()


 涼介には喪った今でも愛し続ける妻とも呼べる女性が居た。

 彼女は涼介にとってかけがえの無い愛する存在で、復讐したい相手である這い寄る混沌がソレを攫った。

 そして、その愛する彼女と殺し合う事になり、殺した。

 重過ぎる過去が涼介の口から語られると、綾子は言葉を失ってしまう。

 そんな綾子に涼介はシニカルに自嘲の言葉を漏らす。


 「バカげた話だよな。生きる為とは言え、今まで散々悪行を積み重ねて来たクソ野郎が自分の番になったら、こうして怒り哀しむなんて……そう思わないか?」


 「そんなヘビーな事を聞かれたって、私は何て言えば良いのよ?」


 綾子がゲンナリとした様子で問い返すと、涼介はシニカルに返した。


 「好きに思った事を言え。正解なんざ、どうせ存在しやしない」


 涼介がシニカルに返すと、綾子は敢えて問うた。


 「今回の件。大人しくするのも手って言うのに、態々自分から厄介事に首を突っ込んで行くのは復讐の一助にする為なの?」


 綾子の言う通り、何もせずに大人しく過ごすというのも手。寧ろ、真っ当な思考の持ち主ならば、何もせずに大人しく過ごして自分が人畜無害な存在である事をアピールするべき所でもある。

 だが、涼介は敢えて自分から厄介事に首を突っ込み、何人かを殺す事を自ら選んだ。

 そんな選択が復讐の為なのか?綾子が問えば、涼介はアッサリと肯定すると共にその理由も答えた。


 「そうだ。オカルトだの、ファンタジーだのに関わってる連中なら俺よりもクソアマ(這い寄る混沌)に関して知ってる可能性があるだろうからな……勿論、交渉を有利に進めるのも目的の1つだぞ」


 「良い着眼だとは思うけど……多分、今回の件で"混沌"と繋がりがある奴は居ないと思うわよ」


 申し訳無さそうに綾子が言うと、涼介はさも当然の如く返した。


 「なら、繋がりなり関わりがある奴が見付かるまで片っ端から捜せば良い」


 その言葉に断固たる意志を感じると、綾子は諦観と共に想いをぶつける。


 「私としては復讐を忘れて過ごして欲しいけど……無理なんでしょうね」


 「解りきった事を言うな。バカにしか見えないぞ」


 話は終わりだと言わんばかりに涼介が吐き捨てると、2人は夜の街を静かに進んでいく。

 暫くして、廃墟となって久しいボウリング場だった所へ着くと、2人はある事に気付いた。


 「監視されてるな」


 「多分、マー君の手下じゃないかな?ほら、連中の居場所を割り出して監視しないのは流石にあり得ないし……」


 2人がそう言ってると、涼介のスマートフォンが電子音を響かせて電話が来た事を伝えて来た。

 涼介がスマートフォンを取って見ると、電話の主は塚地からであった。


 「どうした?」


 「その中には2人居る。生け捕りにしなくても構わないんだが、どっちか片方でも生け捕りにしてくれたら俺はお前等に御礼する予定ではある」


 塚地が単刀直入に告げると、涼介は確認する様に尋ねる。


 「中に居るのは2人。その2人、五体満足じゃなくても良いのか?」


 「(手脚が)一本や二本無くても、生きてれば構わない。あ、死体でもカネはやるよ……その代わり、生きてる時の3分の1だけどな」


 乱暴にした後でも構わない。と、塚地が明言すれば、涼介は「期待はするな」そう返して電話を切ると、綾子に告げる。


 「生け捕りにしてアイツに引き渡せば、カネくれるってよ」


 「なら、生け捕りにしておカネ貰わない?」


 「俺は死体でも……」


 言い切ろうとした寸前に母親に懇願された事を思い出しのだろう。

 涼介は直ぐに言い直した。


 「いや、両方生け捕りにしてみるか」


 「アレ?殺す気満々じゃなかったの?」


 綾子が意外そうにすると、涼介はぶっきらぼうに返す。


 「単にカネが欲しくなっただけだ。ガソリン代もバカになんねぇし……」


 「そう言う事にしといてあげる」


 そう言う事になると、涼介はリュックサックを降ろし、中から鞘に収まるマチェテを取り出すと、ベルトの左側に取り付けた。それから、ボディバックに入れていたレインコートを纏うと、綾子は呆れ混じりに言う。


 「準備が良いわね。硝煙と返り血対策するなんて……」


 呆れる綾子に今度は涼介が呆れた。


 「犯罪するんだから、こんくらいは用意しておくに決まってんだろうが……寧ろ、何も準備してないお前の方がどうかしてるわ」


 「だって、私はフリーレンのフェルンが覚えた綺麗にする魔法使えるもん」


 綾子がドヤ顔で宣うと、GLOCK17にサプレッサーを取り付けていた涼介はムカッとしてしまう。


 「ドヤ顔腹立つわぁ……」


 そんな涼介を気にする事なく、綾子は尋ねた。


 「それより気付いてる?」


 「血の匂いと死臭の事か?それとも廃墟から感じる2()()()()()()か?」


 既に気付いてる事を認めるや、涼介は即座にGLOCK17を構えて引金を2度引いた。

 サプレッサー越しに響いたくぐもった銃声と共に2発の9ミリルガーが放たれ、廃墟へと吸い込まれる様に飛んでいく。

 それから程なくして廃墟から怒声が飛んできた。


 「何の躊躇い無くハジき腐ってこんダボが!」


 その言葉と共に廃墟から現れた粗暴な雰囲気の青年が涼介を睨み付けると、その後に続く様に軟派な雰囲気のチャラい青年が感心した様子でやって来る。


 「凄いねぇ……ちゃんと隠形で隠れてたのに正確に居る所に撃ち込んで来るとか」


 チャラい青年が余裕を露わにすると、涼介は1ミクロンたりとも躊躇う事無いまま間髪入れずに撃った。


 「危なッ゙!?」


 チャラい青年が銃撃を脇に跳んで躱すと、粗暴な青年が拳を振り上げながら涼介の目と鼻の先まで迫って来る。

 涼介は顔色1つ変えずに拳が打ち込まれるよりも早く。敢えて前に踏み込むや、両手で握っていたGLOCK17を勢い良く突き出し、殴ろうとして来る粗暴な青年の鼻をマズルストライクでへし折った。


 「がッ゙!?」


 粗暴な青年が折れた鼻から血をダラダラ流しながら蹌踉めくと、涼介は空かさず構え直して即座に引金を彼の両膝へ向け、一切の躊躇い無く引金を引いた。

 静かな銃声と共にホローポイント仕様の9ミリルガーで穿たれれば、粗暴な青年はその場に崩れ落ちて激痛にのたうち回ってしまう。


 「がァァァ!!?こんクソダボがァ!!」


 元気にのたうち回るのを見下ろすと共に銃口を向けると、涼介はまたも躊躇い無く引金を引いた。またも二度だ。

 くぐもった銃声が2度も響けば、粗暴な青年の左右の掌が撃ち抜かれ、指が何本か千切れ飛んでいく。

 粗暴の青年がまたも激痛に満ちた悲鳴を挙げると、チャラい青年はドン引きした様に漏らす。


 「容赦無さ過ぎて引くけど、たかが銃に呆気なくヤられる()()ちゃん情け無さ過ぎ草生え散らかす」


 チャラい青年がドン引きしながらも余裕を崩さぬで居ると、涼介はチャラい青年へ銃口を向ける。

 すると、涼介が引金を引くよりも早く。綾子が何時の間にかチャラい青年の目と鼻の先に迫っていた。


 「え?」


 その言葉を最後に的確に顎を打ち抜かれ、チャラい青年はその場に崩れ落ちてしまう。

 そんなチャラい青年の無様な姿を芦屋ちゃんと呼ばれた粗暴な青年が「何油断しとんじゃボケ!」と、怒声挙げるのを他所に目の当たりにしながらも、涼介は油断無く倒れた青年に銃口を向け続ける。

 すると、彼を殴り倒した張本人である綾子は深い蒼と幾つもの彫刻が眼を引く長槍を手に召喚するや、間髪入れずに倒れたチャラい青年の心臓に深々と突き立てた。


 「がッ゙……なん……」


 チャラい青年は何か言おうとしていたが、直ぐに事切れてピクリとも動かなくなった。

 そんな青年の死骸を見下ろす綾子は吐き捨てる。


 「バレバレのヤラれたふりして不意討ち狙う()()、ヘナチン野郎なんてさっさと殺した方が時間の節約になるわ」


 「そりゃそうだ」


 同意する様に相槌を打つと、涼介は銃口と共に4つの銃創から血をダラダラ流し続ける芦屋と呼ばれた粗暴な青年を見下ろし、尋ねる。


 「さて、芦屋君だったかな?俺の質問に答えてくれるんなら、お前の生命は助けてやる。実にシンプルな話だ」


 「誰が言うかクソボケ!!」


 芦屋が威勢良く吐き捨てると、涼介は「もっと洒落の効いた事を言えよ」そうつまらなさそうに吐き捨てながら、彼の右の掌をまた撃った


 「がッ゙嗚呼ァァァ!!?」


 くぐもった銃声の後に悲鳴が奏でられれば、芦屋の右手から残った指が2本千切れ飛んでいく。

 そんな彼に涼介は「そう言うと思ったよ」と、感情の籠もってない声で返すや、彼の使い物にならぬ右膝を踏んだ。


 「ガァあぁ…!!?」


 激痛に顔を顰め、叫ぶ芦屋と呼ばれていた彼に涼介は心の底から面倒臭そうに感じながら言葉を漏らす。


 「あー……何か面倒臭くなって来た。死体でもカネ貰えるんなら……」


 そう漏らすと、涼介は激痛に呻き声と共に顰める彼の顔に硝煙香る銃口を向け、静かに引金を引こうとする。

 だが、それは直ぐにスマートフォンが響かせる電子音によって遮られてしまう。

 涼介は遮られた事に辟易しながらも、銃口を彼の頭部に向けたまま電話に出た。


 「何だ?」


 「その野郎は生きたまま俺に寄越してくれん?」


 この場を監視してる部下を介して知ったであろう事を口に様にして、自分が生け捕りにした彼の引き渡しを塚地が要求すれば、涼介は面倒臭そうに返した。


 「なら、さっさと回収してくんねぇか?」


 「5分以内には行かせる」


 そうと決まると、涼介は睨みつけて来る芦屋の顔。いや、顎を思い切り蹴飛ばして気絶させた。

 そうして芦屋をノックダウンすると、涼介は何の躊躇いも無く彼の持ち物を漁っていく。

 程なくして彼のスマートフォンを見付けると、程なくしてアリスがハッキングして直ぐにロックを解除。それから直ぐにスマートフォンに残る電話とメール等の着信と発信の履歴を確認し、相手の洗い出しを始めた。

 そんなスマートフォンをボディバックに収めると、涼介は再び彼の持ち物を漁っていく。

 少ししてから目的の物……彼の財布を見付けると、涼介は小銭入れを開けて中を覗いていく。

 すると、自分が殺害したチャラい青年を調べていた綾子から声が挙がった。


 「涼介ー……コイツ、イケオジの具体的な居場所知らないみたい」


 「そうかー」


 涼介は暢気に返すと、小銭入れに残る何枚かのレシートを取って内容を確認して行く。

 レシートは大半がコンビニ。残りはファミレスや牛丼等も含めたファーストフードにラーメン店と言った飲食店の物であった。

 そんなレシートの内容を確認すると、涼介は自分のスマートフォンで全てのレシートを撮影してアリスに調べる様に指示した。

 レシートの撮影が終わり、用が済んだ。そう思いきや、涼介は札入れから全ての紙幣を抜き取って"ポッケにないない"した。

 涼介がカネを盗んだのを目の当たりしにすると、綾子は呆れてしまう。


 「幼馴染が人様から盗むの手慣れててメッチャ草枯れるんだけど……」


 責める様に見詰める綾子に対し、涼介は平然と返した。


 「死体候補にはもう無用の長物だし、カネは汚れててもカネだ。つーか、お前だってこう言うのした事があるんじゃないのか?」


 その問いに対し、綾子は侮蔑的な瞳を向けながら返した。


 「最低ね」


 「よく言われる」


 涼しい顔で認めると、綾子は尋ねる。


 「それで?この後はどうするの?」


 「先ずは死体を中に引き摺ってく。それから、この芦屋って呼ばれたバカを引き渡してから、中を調べて手掛かりに繋がるモノを捜す……って、所だな」


 「その方が良さそうね。死臭が強い理由も気になるし……」


 そう言う事になった。

 涼介は自分がノックアウトしたばかりの芦屋と呼ばれた青年と、綾子が殺したチャラい青年の死体の髪を乱暴に掴むと、ズルズルと引き摺りながら廃墟へと赴いていく。

 2人を引き摺り、外からは見えない位置に隠すように残置すると、暫くして塚地の手下と思わしき者達がハイエースでやって来た。


 「どーも。廃品回収です」


 人の良さそうな柔和な雰囲気の中年の男が告げると、涼介は死体と気絶した奴を指差して告げる。


 「このゴミ2つ頼みます」


 「畏まりました。此方でキチンと処分しておきます」


 その言葉と共に死体1つと1人が、中年の男の部下であろうスタッフ達によってハイエースの荷台を積み込まれると、中年の男は思い出した様に告げる。


 「あ、私の雇用主からですが……ネコババしたスマホ等を渡せとの事です」


 そう告げられると、涼介は仕方ない。そう言わんばかりにスマートフォンと全てのレシートを彼に差し出した。

 其れ等を受け取ると、中年の男はにこやかに「確かに受け取りました。またの御利用をお待ちしております」そう言い残して立ち去った。

 そんな遣り取りが済むと、涼介は綾子と共に奥へと歩みを進めていく。


 「カビやら何やらに混じって死体の臭いがキツくなってるな……」


 「コレだけキツい死臭だと、1体や2体じゃなさそうね」


 互いに殺し慣れてるが故に死体も見慣れていた。

 それ故に2人は廃墟の奥にあるであろう死体の数も尋常ではないと、経験から裏打ちされた勘から察していた。

 警戒すると共に臭いを頼りに歩み続けて奥へ進むと、だだっ広いボウリングスペースに着いた。

 ボウリングスペースには多数の死体が残置されており、どれも無数のウジと蠅に集られながら死と腐。それに糞便に満ちた悪臭を漂わせている。

 そんな多数の死体を目の当たりにすると、涼介はゲンナリとした様子でボヤいてしまう。


 「こんな所で寝泊まりしてたら肺が腐っちまいそうだ。つうか、こんだけの数の死体を揃えて何するつもりだったんだ?」


 多数の悪臭漂わす死体を目の当たりにし、その臭いが鼻腔を刺激して来ているにも関わらないのに涼介が平然と呆れ混じりにボヤくと、綾子は死体の1つに歩み寄って行く。

 悪臭漂わす死体の前に立ち、その場にしゃがんだ綾子は死体を検分し始めた。


 「司法解剖でもすんのか?」


 「そう言う訳じゃないんだけど……何か奇妙な感じする」


 死体の1つを見ると、綾子は呟きを漏らしながら他の死体も見ていく。

 そうして他の死体を検分する綾子に対し、手持ち無沙汰となった涼介は時間を無駄にする気は無い。そう言わんばかりに告げる。


 「俺は他の部屋を探してみる。多分、何処かに溜まり場的なスペースがある筈だろうし……」


 「りょーかい。私は引き続き死体を調べてみるわ」


 綾子が返事と共にこの場に多数ある死体を調べる事を告げれば、涼介はボウリングスペースを後にした。

 カビと死臭に満ちた廃墟内を歩むと、涼介は()()()()を覚えてしまう。


 この腐った死体と糞。それにションベンとカビの混じり合った酷い臭いと不気味な雰囲気……

 あのクソッタレの世紀末を嫌でも思い出しちまう。


 濃厚な死臭と廃墟特有の腐臭の混じり合った悪臭に己が戦い続けた異世界の事を思い出してしまうと、涼介はゲンナリとしながらも心の中で「此処はあの世界じゃない」そう言い聞かせながら歩みを進めていく。

 1階フロアから2階フロアへと歩みを進めると、警戒を怠る事無く進んだ。

 そうして、溜まり場的なスペースを見付けると、涼介は調査を始めていく。

 多数のゴミに混じって散見されるレシートを回収すると、食べ物が収まってたであろう容器が幾つもあるテーブルの上にスマートフォンが1台ある事に気付いた。

 そのスマートフォンを取ろうとすると、タイミングを図ったかの如く電子音が鳴り響く。

 涼介はソレを躊躇い無く取ると、直ぐに出るなり相手に告げた。


 「すまない。今、彼は席を外してる。伝言があるなら俺が聞こう……」


 いけしゃあしゃあに宣えば、電話して来た相手はさも当然の如く返して来た。


 「()()が始末したのだろう」


 「まぁ、そんな所だ。で、御宅の事は何て呼べば良い?」


 涼介が名前を尋ねると、電話の主である男は平然と答える。


 「ふむ……匿名希望で良いかな?」


 「なら、クソ野郎って呼ぶ事にするよ」


 涼介が吐き捨てると、匿名希望を名乗る彼は提案して来た。


 「君達が只者じゃないのは察しが付く。退魔師連中とは違って、動きが良いのも含めて……どうだろう。私と手を組まないかね?勿論、対等な関係としてだ」


 その提案に対し、涼介は拒否とも取れる言葉で返した。


 「此処は自分から名前を名乗るべき所だ。ソレにも関わらず、匿名希望で通そうとする信頼出来ない奴とは組めないと思うぜ」


 涼介の返答に「ソレは御尤もと言わざる得ない。だが……」そう前置きすると、匿名希望の彼は告げると共に提案する。


 「君が私と手を組んでくれるなら、私は喜んで君に私の名を教える。手を組むのが駄目なら、互いに不干渉と言うだけでも良い」


 そう返されると、涼介はジョン・マクレーンの如く答えた。


 「俺の望みは簡単だ」


 「何だね?」


 「物陰から這い出してきな。踏み潰してやる」


 宣戦布告とも言える言葉を不敵に叩き付ければ、匿名希望の男は愉快そうに返して来た。


 「ダイハードの主人公の様な素敵な宣戦布告だ。気に入ったよ……」


 「ジョン・マクレーンは最高のオヤジだから真似たくなったんだ」


 「だからこそ、君を殺すのが惜しく感じてしまう」


 心の底から残念そうに告げられれば、涼介は気にする事無く。今度はマイク・バニングの様に返した。


 「気にすんな。あ、俺を捜す必要は無いぞ……俺の方から会いに行ってやる」


 そう告げると、匿名希望の男は「では、君が来るのを心待ちにさせて貰うとしよう」そう言い残して電話を切った。

 電話が済むと、涼介は自身のスマートフォンを取り出し、アリスに尋ねる。


 「出来たか?」


 「えぇ、貴方が会話を引き延ばしてくれたお陰でバッチリ。これよりナビします」


 「なら、さっさと行くとしよう」


 そうと決まれば、話は早かった。

 涼介はその場から急いで立ち去ると、死体を検分していた綾子の元へ駆けて行った。

 程なくして綾子と合流すると、涼介はレインコートを脱いで腰のマチェテを外しながら告げる。


 「例のイケオジの居場所。解ったから行くぞ」


 「嘘?早過ぎない?どうやって調べ出したのよ?」


 綾子が訝しむと共にどうやって調べたんだ?そう問うが、涼介は時間を無駄にしたくない。そう言わんばかりに告げる。


 「気にすんな。それより、さっさと行って終わらせよう」


 そう言う事になれば、涼介と綾子は急いで廃墟から去った。

 勿論と言うか、一応は塚地に一報入れた。ホウレンソウは大事であるが故に。

 塚地は驚いていたが、涼介は気にする事無く綾子と共にイケオジの持つスマートフォンの反応が()()ショッピングモールへと駆け出していく。

 数分後。ショッピングモールへ赴いた涼介は綾子と共にアリスのナビゲートを頼りに歩みを進めていた。

 暫くの間、歩みを進めて多数の人々で賑わうフードコートへと赴くと、其処に写真で見たイケオジの姿は無かった。

 そんな中。空いたばかりの席でスマートフォンがこれ見よがしに放置されている事に涼介は気付く。

 それと同時。そのスマートフォンがタイミングを図ったかの如く電子音を鳴り響かせれば、涼介は躊躇い無く取って電話に出た。


 「何だよ。俺が来るのを待ってたんじゃないのか?」


 涼介が電話に出るなりそう問えば、匿名希望の男。もとい、件のイケオジは困った様に返す。


 「その言葉に嘘は無いのだが、流石に此処では不味いだろう。お互いに……」


 そんな答えを返すと、イケオジは更に言葉を続ける。


 「しかし、凄いな君は……ほんの僅かな遣り取りで私の居場所を掴んで来るとは思わなかったよ。どうやって掴んだのか?後学の為に教えてくれるかね?」


 「手品師がタネを教えると思うか?つーか、スマホを即棄ててる時点で気付いてるだろ?」


 「おや、バレたか……まぁ、だからこそ、君と友人関係になれなくて実に残念に思うよ 」


 「寝言は寝て言いな」


 涼介が吐き捨てる様に返せば、イケオジは告げる。


 「会った時には互いに敵同士になる訳だが、考え直す気は無いかね?」


 心の底から惜しそうにしながら、考え直す気は無いか?そう問われると、涼介は斬り捨てた。


 「アンタの葬式は派手なのにしてやる」


 「それは楽しみだ。では、何れまた……」


 その言葉と共に電話が切られると、涼介は不愉快そうに「ふざけた野郎だ」そう独り言ちてから何が起きてるのか?解らずに居る綾子を気にする事無く告げる。


 「あのイケオジに逃げられちまった。キチンと頭が廻るタイプなんだな……」


 「どうやってあのイケオジの居場所を割り出してんのよ?」


 疑問に答えろと言わんばかりに問えば、涼介は涼しい顔ではぐらかすのであった。


 「言ったろ?手品師がタネと仕掛けを教える訳が無いって……つーわけで帰るぞ」


 そうやってはぐらかして帰ろうとすると、綾子のスマートフォンが鳴り響いた。

 電話してきたのは塚地であった。

 何故、涼介にではなく、自分になのか?首を傾げながら出ると、塚地は早速頼んで来る。


 「すまないが、今から指定する場所まで来てくれないか?急患が出た。もち、代金払う」


 矢継ぎ早に言われると、綾子は渋々ながらも承諾した。


 「良いわよ。何処に向かえば良いの?」


 「GPS座標送るから其処に来てくれ。出来れば、急いでくれると助かる」


 そう告げられると、電話は切れた。

 綾子は仕方ない。そんな様子で涼介に頼んだ。


 「マー君から来てくれって頼まれたから、乗せてってくれない?」


 「なら、野郎に燃料代を払うようにも言ってくれ」


 涼介が仕方ない。と、言った様子で少しだけ遠回しに承諾すれば、綾子は涼介と共に指定された所へと向かうのであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ