九尾のきつね コン 蟷螂の鍵師魔人 時空警察編
茶色の長髪ストレートの狐人はコンとなづけられた。瞳は琥珀色で華奢な体つきにじょせいとくゆうのあでやかさがあった。陰部には獣のけがわがはえており、性器はみあたらない。
局所的に毛皮が残っており人の姿をベースとしてはいるがやはり獣人とよぶにふさわしかった。
『なんじゃぬしよ、ちらちらみるでない。わっちがすきになりんしたか?』
しなをつくりながら胸をつんと深井のつぼと一緒につく魔性の女だった。
どきゅーん!!どすとらいくですぅぅう!とはいわずにこう答えた。
『某は貴様の飼い主だ。ほれ服を着ろ』
着物を配下のものに用意させて着させた。
『なんじゃなんじゃ!ひとのころもはすかんが主がわっちの飼い主というのはちっとはきにいったかのっ』
にししっとわらう表情はあどけない少女のそれだった。
『かまわんいくぞ!』
『そんなことよりぬしよ、わっちをかわいがっとくれ!信長さまにもいうとくれやんす』
『某は南蛮や西洋のものに目がないゆえきになっておったが、そなたは大和のあやかしか?』
はなをつんっとつきあげるといった。
『わかりんすか?わっちはおそらく深井さまとどうれつの世界の異物でありんす』
そういうとおろろとしなをつくってみせた。
『まことよくできておる、あやかしと人のこのようじゃ!みごとよ!』
信長が称賛すると満足げにしっぽをゆすってみせた。
『うれしゅうないぞ。もっとあそんでくりゃれ』
うれしいないぞといいながら、しっぽめっちゃふってるんですが、とはいわずにムホホと内心喜ぶ二人であった。
『とはいえそなたの家族である狐をたくさんかってしもうたすまぬなぁ』
心底罰が悪そうに信長がしていると日本海より深いこころできつねは許してくれたうえにはげましてくれた。
『なに、ちとふえすぎて、ここらの生態系をかえておった、悪食ゆえ数を減らさんといかんかったのじゃ、わるくおもいなんし』
『生態系とな?』
深井がかくかくじかじかとせつめいすると、信長はなんと博識なものらよとよりいっそう深井たちをみなおした。
さらに戦は過激になるつかの間の出来事であった。
とある尾張の僻地の村にすむ鍵職人の男がいた。鍵をなくした南京錠などをあけるのがしごとで、無理矢理こじあけることもあった。
職人といえるまで回数を重ねてしみこませた深層心理にある記憶は『何かを開ける』だった。
仕事尾張のある晩、家に帰ると娘と奥さんがしばられてたおれていた。
そこにたたずむのは一人の浪人とそれをかこむようにたむろする六人の盗賊であり、日常は崩壊した。
開口一番でいった言葉は『どうすればいい?』か細いいきづかいでちいさく肺からしぼりだすようにでた空気の振動によってはっせられた、それは男たちの下卑た笑いによってかきけされることになる。
『ちょっくら、米問屋の倉をあけてほしくてなぁ!おめぇにはちときょうりょくしてもらわねぇとなぁ!いわなくてもわかるだるぉ?』
ごくりと唾をのみこむと鍵職人はいうがままにしたがった。
米問屋の倉をおそったあとのことだった。
『へへぇ、この業物をためしたかったんだよぉ!!』
それは盗賊の持つ業物、黒衣衆の死体からはぎとったチャクラムという武器で持ち手にはマセキがうめこまれ、魔力でコーティングされている鋭利な刃物だ。
盗賊のかしらがそれを握り振りかざすと袈裟斬った。
鍵職人はちしぶきをあげながら、呪ってやると誓った。
純粋な殺意がそこにあった。
畜生。
そこに男の無念と憎悪がまざりあう。
振り下ろされたチャクラムは体を引き裂いてなお地面につきたち、刺さった。
そこにいたのは一匹の蟷螂だった。
マセキが魔力と殺意、純粋な憎悪によって魔人を造り上げ、魔物とはならずあまりにも純粋な感情は魔力と相乗し、ギルティギフトをよびおこした。
大気がうねり始める。
『な、なんだ!?こりゃあたまげたぁひぇええ』
いびつな時空間のゆがみが魔力とマセキと純粋な感情によって昇華する。
蟷螂の上半身を持つ人形の魔人がうまれた。
このマセキは老人ホームでアイリが結晶化させたものを深井が警視庁から特別によこながししてもらったものだった。
その老人も鍵職人であった。
ことにかんして、開けるという動作の執着がはなはだつよく、口癖は『開けちゃおうねぇ』だった。
『開けちゃおうねぇ……』
『ひぃいい』
小便を漏らしながらしりもちをつく頭。
『開けちゃおうねぇ……』
『ぐあああ』
『やめ、やめてくれぇ!たの、いやぁああ』
泣きながら許しを乞うさまは悪人にしてはみるにたえなかった。
蟷螂の魔人は蟷螂特有の首の動かしかたとめのうごきをさせてかしげながらいった。
『閉めちゃおうねぇ……』
男の腹をかっさばいて観音開きにした蟷螂はそっと腹の傷口を閉じた。
『出来た出来た……今日の仕事も良くできた……』
首をもとに戻すと蟷螂はいった。
『閉めちゃおうねぇ……』
『にげろぉおおお』
蜘蛛の子を散らすように逃げる悪人たちのあとに娘と妻はなきながらおびえてその様子をふるえてみていた。
声にならない悲鳴がこだますると、その夜鍵職人の家からは三人の鍵屋の家族が消えていた。
どこにいったかは誰も知らない。
後に深井にであうまでは……。




