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原始人女子の巣立ち―魔境育ちの原始人女子は、お伴の獣人たちと都会を目指す―  作者: 裏律
一章 世界的危険地帯たる、魔境を旅立ち、原始人女子が成すこととは
3/3

3.森の死神の鎌を、踏み潰せし、豪脚

 マルマたちは、拠点として構えていた、洞穴を発ち、数日かけ、魔境の地を離れる。魔境を抜け、そこから少し進んだ、森が開けた場所で、マルマと、黒い外骨格を持った小人たちは、大地が盛り上がることでできた、マルマがしゃがめば入ることができ、かつ全員が雑魚寝できるくらいのスペースの空間で、夜を明かしていた。

 やがて日が昇り、周りが、しっかりと明るくなった頃に、マルマたちは、大地でできた空間から這い出ると、手作りの荷物入れに、荷物をまとめ始める。

 すると、その時、少し先から、微かな音が響く。

 その音に、マルマたちは動きを止め、マルマは耳を澄ます。

 マルマの耳には、何度か、その甲高さのある音が届き、やがてマルマは、音が、金属と、何か硬い物がカチ合う音であることに気が付く。

「ちょっと、見てくる。チビたち、片付けてて、終わったら、帰る」

 その音を聞きつけたマルマは、股下くらいから見上げて来る、小人たちを、見下ろし、そう告げる。そんなマルマに小人たちは頷く。

 それを見ると、マルマは、次に小人の中でも、少しだけ細身で、色素の薄い外骨格を持った小人を、見る。

「リン、いっしょに、来て」

 リンと呼ばれた、小人は、そんなマルマに、小さく頷く。

 そんなリンを見ると、マルマは、片膝をつき、しゃがむ。そんなマルマの背に、リンは飛び乗り、掴まる。マルマは背負ったリンの、その尻を片手で支えると、立ち上がると、すぐさま駆け出し、音の響く先の、森の中に入って行く。


 足場の悪い森の中で、マルマは、地面の起伏を激しくし、足場の安定を乱す元凶である、木の根を、あえて力を籠め踏みしめる。

 筋肉質であるが、その引き締まりによって細身に見えるマルマの体の中で、唯一、威圧感を持って肥大化した、脚の筋肉が力む。細やかだが、獰猛さを持って発達した筋肉が、縛り込むかのように重なり、しかし押さえ込めなかった(かく)が漏れ出したかのような肥大化をした筋肉の、その彫り込みが、喰いこむ爪牙のごとく、深まる。

 その嚇虎(かくこ)のごとき豪脚は、次の木の根に向け、跳ねるようにして、飛び移る。木の根と木の根の間を、その獰猛さに見合わず、洗練されたリズミカルな動きで、渡り続け、マルマは素早く森を駆け抜けていく。

 不安定な足場を進む上で、最も注意を払わなければならないのは、予期せぬ瓦礫を踏み転倒するリスクである。如何にして、予期せぬ瓦礫を踏まないか、または踏んだとしても転倒しないか、が不安定な足場を進む上での、最重要事項となる。ここで木が多く生えている場合においてだけ、想定外の瓦礫を踏む確率を、最小限に抑える歩法がある。それこそが木の根と木の根の間を、渡るようにして進むことだ。

 森林地帯においては、木の根こそが、地面に強い起伏を作り、かつ地面を割りながら成長することで瓦礫を作る、不安定な足場の、最大の原因であった。この木の根が生み出す、死神の鎌のような、自然の障害物が足元を掬い、森での死闘の、生者と死者を決定するのが、常である。この木の根の恐ろしさゆえに、多くの人々が見逃す事実がある。それは大抵の場合、木の根の上に、足元を掬う障害物が乗っていることは、ほぼない、ということだ。

 木の根は大地を突き破り、地面を割りながら表出することで、瓦礫ができる。そこから地面が割れて、瓦礫ができるのは、木の根の周りだけなのだ。もしも例外的に、たまたま足を掬うような障害物が、木の根に乗ってしまったとしても、その成長過程で、いずれは振り落とされてしまう。

 しかも気候すらも、木の根の上の、障害物の排除に、一役買っているのである。例えば雨風の影響は、地面において、一番、盛り上がった部分が、集中的に受けるはずである。そして木が生える地面において、一番、盛り上がった部分は、木の根である。このことから木の根の部分が、集中的に雨風を受けることになる、と分かる。よってもしも木の根の上に、障害物が乗っていれば、真っ先に吹き落ち、流れ落ちる。

 更には、多くの動物が、普通に歩くのであれば、最も躓く箇所が、どこかと言えば、もちろん地面の出っ張りである木の根だ。その動物が躓いた衝撃でも、障害物は振り落とされる。ダメ押しとして、このことに気付いている者は、木の根の上を優先的に踏む。それもあり障害物は、木の根を、優先的に踏む者により、踏み抜かれ、残ることはない。

 よってマルマの歩法は、転倒のリスクを最小限に抑えつつ、最高効率で目的地に到達できる。


 森を駆けるマルマは、しばらくして開けた場所に出る。

 そこでは一体の、岩の体を持った細長く巨大な魔獣を、数人の、軽装の人間が囲い、互いに睨み合っていた。

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