↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR

「結局お前誰やねん!」ってツッコミたくなる話

作者: パミーン
掲載日:2026/09/13

改めてこのお話を読む前にお伝えしておきます。


タイトル通りになる方もいれば「ふざけるな!」と思う方もいる作品内容になっています。


ですので、不安な方はこのまま読まずに引き返してください。まだ間に合います。


いや!それでも俺は、私は読む!という方はどうぞお楽しみください。

 きっかけは小学校2年生の時だった。好きな女の子が大事に持っている下敷きにカッコよくポーズを決めたキャラクターが描かれていたんだ。


「玲司様、カッコいい~!」


 なんて言いながら友達とそのキャラクターのことで盛り上がっていたから僕はそのキャラクターのような人間になれば好きになってくれるんじゃないかと思ったわけさ。


 そのキャラクターの名前は氷室玲司。氷という字が入っていることからも分かるようにクールで言葉数が少ないキャラクター。だから僕も氷室玲司のような男になれるように、少女漫画だったんだけど最新号が発売されればすぐに買って何度も何度も読み返したんだ。ちなみにその漫画がちょうどアニメ化されて人気に火がついたんだよ。


 自分が氷室玲司だと思い込むくらいに氷室玲司を演じ続けたんだけど、好きな女の子からは全く相手にされなかった。それでも僕は氷室玲司を追い続け、中二の時に気がついたんだ。


 もうそのアニメはとっくの昔に終わっていて、誰ももう話題にすらしていないことに。しかもどちらかというと小学生向けの作品だから中学生がそんなキャラクターを追い求めている時点でキモがられるのは当然。


 好きな女の子にはすでに見向きもされていなかったからそりゃそうなるよな……と恥ずかしさ70%、これからどうしようかが30%くらいの気持ちだったね。


 そこからは元の自分に戻ろうとしたんだけど、僕ってどんな人間だったっけ?と完全に本当の自分を見失ってしまったんだ。


 でもそこでさらに気づいたんだ。鏡で見た自分の醜さを。氷室玲司を演じていた時はカッコ良すぎてヤバいなんて思ってたんだ。


 でも冷静に自分を見れるようになると、こんなにもブサイクでデブな自分が氷室玲司を演じていたなんてもはやピエロじゃないか……と恥ずかしさ30%、もう誰も知らないどこかへ消えたいが70%になったね。


 だから高校は他県の高校に進学しようと決意したんだ。自分の黒歴史を知らない人しかいないところの方が心が落ち着くからさ。


 ただ問題は他県の高校に進学するとなると一人暮らししないといけない。親に余計な負担をかけさせてしまうし、そもそも説得したところで納得してくれるのかさえ分からない。


 そこに加えて僕は完全に自信を失ってしまったのもあって、多分前々から僕のことを嫌ってたんだろうね。いじりが始まってそのままいじめに発展していったんだ。


 いじめる側はかなり狡猾な奴らでさ、肉体的には服を脱がないと分からないようなところを攻撃され、精神的には僕の追い続けていた氷室玲司のことを言葉で攻撃されたんだよ。


 本当は不登校になって部屋で引き籠りたかったけど、親に迷惑をかけるのは嫌だったから相当我慢して学校に通ってた。肉体的にも精神的にもきつかったから食事も喉が通らなくてデブだった体は一気に痩せ細った。


 そんな異常な状況は誰が見てもおかしいと思うのは明らかだったんだけど、誰も助けてはくれなかった。そんな中でいじめを解決してくれたのがなんとあの好きな女の子だったんだ。


「あんなブサイクでガリガリになったナルシストなんていじめてても何も意味もないからやめた方がいいよ」


 酷い言葉だった。でもその言葉のおかげでいじめはなくなった。好きな子は僕とは違ってものすごく可愛くなっていたし、学年でも人気者だったからというのもあったと思う。スクールカーストのトップ側の人間だからね。そりゃみんな言うこと聞くさ。


「いじめられてるとあんたが視界に入ってしまうの。視界に入れたくもないからいじめをやめさせただけ。もうこれ以上視界に入らないようにしてね」


 薄々は感じていたんだ。氷室玲司を演じていた時から嫌われているんだろうなっていうのは。はっきりと言葉にされてしまった以上、僕はもうあの子と関わっちゃいけない。絶対に進学先は同じにならないようにしないとって決心した。


 そこで今僕は悩んでいる。高校は留学するか、それとも高校に行かずに就職するか。


 あの子のことは好きだし、いじめを助けてくれた恩もある。だけど、嫌われているからなるべくあの子の願いは叶えてあげた方がいい。


 そうなると同じ高校に行かないようにするにはあの子がどこの高校を受けるか聞けばいいんだけど、僕には友達もいない。あの子の学力がどれくらいなのか分からない。


 だったら県外の高校を受験すればいいってなるんだけど、正直なところ、知らないところでまたいじめにでもあったらと思うと日本の高校は無理!ってなってるんだ。


 それで自分で調べたらアメリカの私立の高校は学費こそ高いけどそういういじめみたいなものにはしっかり対策をしているらしい。はっきりは分からないけど、文化や思想や宗教などバラバラだから尊重し合うという感じみたいで、ゼロではないけど日本みたいにはなりにくいとネットに書かれていた。


 だからいじめられていたことを白状し、留学したいことを両親に伝えた。両親は僕の想いを汲み取ってくれて留学してもいいと言ってくれている。


 もう一方でもう学校なんて行かないで働いた方がいいんじゃないか?って思う自分もいるんだ。いじめに遭ったことで勉強どころではなくなったから授業についていけてない。これから塾に行くとか家庭教師を雇うとかすれば挽回できるかもしれないけど、そこまでして高校に行きたいか?って思うのさ。


 もちろんそのことも両親と話し合いをしていて、なるべくなら高校は卒業しておいた方がいいと言われているからやっぱり留学かなあとは思ってるんだ。



※



Side:桧山翠(ひやまみどり)


「え?あいつ留学するの?」


 私は噂で聞いたあいつの情報に驚いている。あいつは幼稚園から一緒の幼馴染。小学2年生の時ぐらいから私の推しキャラである氷室玲司様の真似をし始めたの。


 そうなるとあいつが玲司様にしか見えなくなっちゃって、意識していることがバレたら揶揄われるの分かっていたからなるべく見ないようにしていた。でも家が近所だからあいつがこっそり玲司様になりきろうと頑張っている姿を見ることもあって、完全にあいつに心奪われてしまったのね。


 ところが学年が上がるにつれて仕草や喋り方は玲司様なんだけど、顔はブサイクだし、体型もデブになっちゃってもうどうしたらいいのか分からなくなっちゃったんだ……。


 私が小学2年の時にアニメになった作品だから、もう追ってる人なんていないのにそれでも玲司様を追いかけている姿には尊敬してた。だって普通ならブームの過ぎたものを追いかけるって愛がないとできないよね。


 結局あいつは中学2年まで玲司様を演じてたんだけど、ある日を境に玲司様じゃなくなった。正直がっかりした。いくらブームが去ったとしても私の推しキャラはずっと玲司様だからどんな見た目であっても玲司様を追い求めていたあいつのことが好きだった。


 ところが途端にいじめが始まってあまりの酷さにみるみるデブだった体が身長が伸びたのもあるけど、ガリガリになるくらいにまるまで追い込まれたの。


 私は自分で言うのもなんだけど、そこそこ学校じゃ人気もあるし、取り巻きもいるポジションだから私が言えばいじめはなくなると思って解決したわけ。


 本当は玲司様を続けてほしかったけど、あいつの精神状態はそれどころじゃないのは分かっていたし、私はあいつに素直な自分を見せる勇気がないから「視界に入らないで」なんて酷いことを言ってしまった。


 そんなこと言っちゃったから留学するなんてなったのかな?できれば一緒の高校に行けたらいいなって思ってたのに……。


 どうにかして留学を阻止できないか、という気持ちはあったけど結局私は何もできなかった。ただ周りに流されて卒業するまであいつをチラチラ見ることしかできなかった。


 そうしてあいつはアメリカへ旅立っていった……。



※



 俺は結局留学を選び、日本を離れて8年が経った。アメリカの高校は4年制だから大学と合わせて8年ってわけだ。


 アメリカに着いた当初は英語なんて話せなかったし、自分を見失っていたから困ることは多かったけど、こんな俺でも受け入れてくれるアメリカって国の懐の深さには本当に感謝している。


 しかも面白いことにちょうどアメリカで昔やってたアニメが流行っていて氷室玲司が話題に上がっていたんだ。


 玲司キャラを演じていた時代があったこともあって玲司キャラがウケたんだ。それで俺は再び玲司を目指してもいいんじゃないかと思って氷室玲司を演じることになった。


 「レイジ」なんて呼ばれることもよくあって本当に自分が玲司になった気でいたんだ。


 でも演じ続けていく内に自分の中に疑問が生まれた。本当の自分はどこに行った?ってね。


 今の自分は玲司を演じている。中学の時にそれに気づいて本当の自分が分からなくなった。その本当の自分は一体どんな人間だったんだろう?そう思うようになった。


 中学の時は友達がいなかったし、自分を受け入れてくれる人がいなかった。でもアメリカは違う。玲司を演じていても気さくに仲良くしてくれる。だから俺はアメリカでできた友達に相談したんだ。自分がどんな人間か分からないってね。


 そしたら「お前はもう氷室玲司という人格そのものになってしまっているんじゃないか?」という意見をくれた友達もいた。


 確かにその通りだ。小学2年から中学2年まで氷室玲司できたわけだからもう氷室玲司と名乗ってもいいくらいには氷室玲司そのものなんだ。


 氷室玲司を演じている人間なのか、氷室玲司そのものになった人間なのか。ここだけははっきりさせたかった。だからこのアメリカの生活で俺は自分についてとことん考えた。そして出した答えを持って日本に戻る日がやってきた。



※



Side:桧山翠


 あいつが留学してから8年が経った。高校を卒業したら日本に戻ってくると思ってたら大学までアメリカでの生活を選ぶなんて思わなかった。


 あいつがいない日々はただただ寂しかった。それだけ私はあいつのことが好きだったんだなって思い知らされた。


 大学に入り、私も人として成長できた。素直になることを覚えた私は大学でできた友人にあいつのことや玲司様が今でも推しであることについて話した。


 そしたら「あんたはその人のことが氷室玲司をやっていたから好きなの?それとも氷室玲司抜きにしてその人のことが好きなの?」って言われたの。


 それを言われて私は何も言えなかった。だって私はあいつのことをよく知らないから。ただ玲司様の真似をしていて、ずっと愛をもって追いかけていたことだけしか分からない。


 本当のあいつはどんな人なんだろう?それを知らないことには私の中にあるあいつへの「好き」という感情が本物なのかどうか分からない。


 あいつのことをもっと知りたい。あいつともっと話がしたい。あいつと同じ時間を共有したい。だから早く日本に帰ってきてほしい。そう思う日々が続いた。


 その中で私は見つけてしまった。あいつのSNSのアカウントを。あいつ、自分を発信したりするような人じゃなかった。アメリカの生活で何か変化があったんだろうと思った。


 少しでもあいつの情報を知りたいと必死になって最初の投稿から追いかけてみたら、玲司様全開の投稿ばっかり。自分のことを「玲司」と呼んでいる投稿もあった。


 私は少し嬉しかった。中学2年で玲司様キャラを辞めたあいつがまた玲司様を追いかけたことに。


 と同時に私にはあいつが一体何者なのか分からなくなってしまった。投稿を見る限り玲司様そのもの。でも私が知りたいのは本当のあいつ。


 あいつは玲司様の真似をしているのであって本当のあいつがいるはず。それを友達に相談したら


「もしかしたら小さい時から氷室玲司をやっていたからもうそういう性格になっちゃったんじゃない?」


 と言われてその可能性は無きにしも非ずって思ったわけ。玲司様の真似をしておいかけてるあいつなのか、もう玲司様という人格に近いあいつになったのか。これから交流を深めて知っていけばいい。そう思えるようになった。


 そして今日、あいつが日本に帰ってくる。そのことが書かれていた投稿があったからね。だから私は空港へあいつを迎えに行った。


 ゲートから出てくる人を見てすぐにあいつだと分かった。だって所作が玲司様と同じだから。


「おかえりなさい。久しぶり。私のこと覚えてる?」


「ああ、桧山さんだろ?もちろん覚えているさ」


 よかった……。私のこと覚えていてくれて。


「ねえ、あなたはこの8年間で何者になったの?氷室玲司様?それとも——」


「いきなり面白い質問をしてくるとはね。俺の名前は——」


 ここからやっと私達のストーリーが始まる。

いかがでしたでしょうか?


興味を引く(引いてるかは分からない)タイトルに中身のない内容(少しシリアスかな?)でかなりふざけた作品となりましたが、今回はタイトルと中身のギャップで引き起こされる感情というものをテーマに書いてみました。


タイトルの通りでしょ?いやでもそうやけどさあ……ってなってくれたらいいなという感じです。


感想をいただけると幸いです。

お読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。