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「亮平」



「終わってみると、こんなもんかって感じだよな」


 そうぼやいていたのは武一だった。


 祭の後と言われればそうなのかもしれない。ミスコンは間違いなく成功したし、待ち望んでいた対決をみんな楽しみにしていて、誰もがその行方に注目していた。「マジでやんのマジでやんの? 」と。ワクワクが確かに存在していた。実際そうだったと思う。


 それまでもミスコンに向けて盛り上がっていく様を楽しめたし、ミスコン自体も盛り上がった。それはそれでよかった。けど結果が出てミスコンが終わった後の終息していくスピードが思った以上に早かった。話題にしてる奴なんてほとんど居ないし、大門と結城もミスコン前と後で変化がある訳じゃなく通常運転。C組の長瀬が少し注目浴びたくらいか。ミスコンをやる事が決まってからは女子はともかく男子の間では毎日のように話題にしてたのにそれが終わった途端あっさりと終息してしまった。受験モードに突入したという事か。その切り替えの早さに驚きと寂しさを感じた。


 この現状を見ていて思い出すのは大門が最後言ってた事。あれだけ盛り上がってやってた事は実は凄くしょうもない事で。それを思うと急激に冷めたりもした。



「今はそう思うかもしんないけど多分一生残ると思うぜ。もう終わったからみんな興味なさそうにしてるけど、やった事は消えないよ。何年経っても話せるだろうし、その余韻はずっと残ると思う」



 武一はそうも言っていて。武一と話すと安心出来た。何やってんだろ俺? っていう感覚を共有出来る仲間がいる事が嬉しかった。そうなるとバカげた事がバカである程、楽しくなる。もっとやればよかったとさえ思う。


「あれ、もう帰るの? カラオケ行くんじゃないの?」


 そんな感じで周りとテンションが違う時。本当は、周りが盛り上がってるのに自分だけ冷めた感じでいるっていうのが理想。本当は自分もテンション上がってんのに、それをわざわざ表に出さない。そういうのが何か心地いい。それが今回は逆だった。だからちょっと思ってたのと違っていて。今も周りの空気に合わせてるだけで、本当はもっとはしゃいでいたかった。



 そんな感じで思ったより早く来た終息感に戸惑いはしつつも、自然とミスコンの余韻は薄らいでいった。特に女子の頭はすっかりと切り替えられていて、ミスコンの「ミ」の字も出る事なく1ミリの余韻も感じさせない日常に戻っていた。受験一色。誰でもいいからミスコンの話をして欲しい。興味を持って欲しかった。余韻が薄らいだといっても男子の間ではまだミスコンの話題を話す事があって。女子と話してる時に話題を振ると意外にいい反応が返ってきたりもする。何だ興味あんじゃんって。やっぱり女ってよくわからない。男は男で連るんでる方が楽でいい。余計な事考えなくてすむしケガをしない。それでもやっぱり女子の空気を感じたくて近づきたくなる。こういう時、一番絡みやすいのはやっぱり新田で、そこはさすがと言うか、そのせいで少し好きになりかけたりもした。



「じゃあな亮平。行くわ」

「おう。またな」


 武一と別れて駐輪場にチャリを置きに行くと、大門が上着のポケットに手を突っ込んで気怠そうに歩いてくるのが見えた。声を掛けようかと思ったが夜祭の時のようにはいかない。まだ少し気後れしてしまう。そのまま通り過ぎていこうとした時、大門はふと顔を上げた。


「あ、菊池ぃ。おはよー」

「おう」


 それだけだった。けど、もう大丈夫。


「あのさ、あんまり見ないでくれる? 恥ずかしいから」

「見てねーよ」


 まだ季節は夏で、蒸し暑かった。


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