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「チュージ」



 学祭が終わっての後日、武道場で夜祭の片付けをしていると、さっきまでいた筈の松井の姿が見えなくなった。松井がサボってるとは思えないので、いや、松井ならありえるか??? とか思いながらも、そのまま気にせず作業を続けていた。けど、中々戻って来ないので休憩がてら外に出た。武道場を出るとすぐに見つけた。


「先生に頼まれてん」


 松井は校門近くの花壇に水やりをしていて「サボってる訳ちゃうから」と付け加えた。何か言ってやろうかと思ったが、何も思い浮かばなかった。松井の居どころもわかったので「あっそ」と言って武道場に戻ろうとすると「せや」と言って呼び止められた。


「バランスやと思うわ」

「は?」

「うん。前、言うてたやろ。この学校のええとこってどこやと思うって」

「ああ」

「バランスやと思う。バランスがええねやわ。この学校」


 松井は一人納得した様子で何度も頷いた。「わかる?」と言われたので首を捻ると「せやろなー」と言って笑った。


 松井はいわゆる可愛いタイプじゃない。たまにテレビとかで見る、方言を話す可愛いタイプの女子ではない。血統書付きじゃなく、叩き上げのリアル関西女子だ。そして俺は、そういう女の子の方が好きだった。



 夜祭が終わった後、武一にミスコンの集計表を見せてもらって、そこに松井の名前を見つけた時、妙に納得した。松井には三票の1位票が入っていた。なかなかリアルな三票だった。俺はそれを松井に言おうと思ってやめた。この学校に3人だけいる松井推しが今もどこかで見ているかもしれないと思うと、少し複雑な気分になった。俺は松井には入れていない。その事を少しだけ後悔した。



 松井は水やりを終えると、重そうに資材を運んでいる教師を見つけて声を掛けた。


「先生、その量1人で行くん無理やと思いますよ? ウチらも手伝います」

「おう。悪いな」

「中山くーん、中山くんも手伝おうてー」


 松井に手招きされると、俺はしょうがねーなと言いながら駆け寄っていった。


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