「亮平 to 大門」その4
俺が大門に抱いているのは恋愛感情とは全く違う。
大門と話してみて気づいたのは思ったより話せたという事だった。大門の中に俺という存在が認識されている事が嬉しかった。同級生だし1年の時は絡みもあったし、当たり前と言えば当たり前だが、その現実はしばらく余韻として残った。
大門が自分の中で小さくない存在だと気づいた時、自分は大門に認識されているのか不安になった。テレビで見るアイドルのような、どこかそんな想いに似たその感情が心をざわつかせた。手が届かない相手じゃない。自分が一方的に知っている訳でもない。同じ学校に通っている同級生。こんな事を考えていると自分がひどく情けない奴に思えてくる。大門が知ればきっと気味悪がるだろう。現に大門は同級生として認識しているだけでそれ以上の感情は抱いてないだろう。それでいいと思う。今自分の想いを大門にぶつけるとどうなるのか。きっと驚く程引かれるだろう。この限りなく一方通行な想いにすっかり悩まされて。自分は違うと思っていた。もっとクールで大人だと思っていた。
大門大門大門大門・・・頭から離れない。
何のことはない。しっかりと拗らせていた。それが甲田の言う「若さ」ならこんなしょっぱい事はない。と、気づくのにはもう少し時間が必要で、もっと大人にならないと無理だろう。ただ悶々とした時間を過ごし眠れない日々が続いたのは事実で、こんな想いを抱くのは自分だけじゃないかとずっと思っていた。そう思って自己嫌悪に陥ったりもした。こんな感情を抱くのは自分だけだと。きっと周りに言えば気持ち悪がられるだろうし、きっとチュージはもっと普通で、恋愛における感情も、もっと爽やかな筈だ。けどこれも気づくのはもっと後になってからで、みんな同じ人間、自分とそう変わらない事に気づく。子供の頃レモンを見ると唾液が出てくるのを知って、こんな反応をするのは自分だけなんじゃないかと誰にも言えずにずっと黙っていた事がある。みんな一緒だと知ってなんだそんなもんかと。そんな事を誰もが経験して大人になっていく。
結城とは関係性が築けてると思う。それは結城の人柄によるところが大きいが、結城とは大門程の距離感は感じていない。たぶん大門と距離を作ったのは俺自身だ。同じ同級生なのに、どこか有名人みたいな扱いをして、勝手にイメージを膨らませていった。遠くから見て好き放題言ってただけだ。そんな事をしてる内に肝心の本人と関わる機会を失っていった。俺は大門と話したかった。友達になりたかった。そういう意味では、ある意味同じなのかもしれない。
夜祭で全く姿を見なかった武一は、武道場に着くと真っ先に爆睡していたらしい。ミスコンの日は水泳の大会に出た後にやって来てミスコンの途中から合流して、体育祭では花形種目のほとんどに出場していた。ミスコンの集計は情報漏洩を防ぐ為とか言って、ほとんど武一1人でやったらしく、大門に渡していた少し不恰好な王冠やマントも武一が作った物で時間を見つけては慣れない作業をしていたようだ。つまり学祭の前日からほとんど寝てなかったみたい。大門が無下に扱わなかったのはそんな事も理由にあったのかもしれない。それでも水泳の大会では県代表に選ばれる好成績を収め、体育祭でも活躍していた。そういえば1hフォークの時には見かけなかった気がする。多分そこで力尽きたんだろう。夜祭まで体力が持たなかったのは少し不憫に思うが、武一は武一なりに満足してるんだと思う。夜祭の最中、寝ている武一を見かけたが、その寝顔はとても気持ちよさそうに見えた。
気づくと、いつの間にか眠ってしまっていて起きた時には、もう朝だった。周りを見ると残ってるのは数人だけで、ほとんどの生徒は帰っていた。帰ろうと思って立ち上がると、眠そうに目を擦っている大門を見つけた。大きな伸びをした後、振り返った大門と目が合った。大門は口に入りかけた髪をサッと払うと少し笑った。俺も笑顔で返すと何故か大門は笑いだした。俺はそれでも嬉しくて、少しニヤけながら武道場を出ていった。




