「夜祭」その2
【亮平】
クラスによって多少差はあるが、大体1時間程それぞれのクラスで話した後、全員で寝床となる武道場へと向かう。
外はもう真っ暗だったが、昼間の好天は夜も続いていて綺麗な月が出ていて灯りがなくても十分歩けた。昇降口から武道場まで向かう道は朝とは逆になる。武道場は校門の近くにあって、昇降口で靴に履き替えると、校門に向かってまっすぐ伸びる一本道をみんなで歩いた。朝とは逆方向に見る無数の生徒の頭は何だか変な感じに見えて、登校時よりカラフルに見えるのは首に巻いたタオルやTシャツのせいだろう。まだ乾き切っていない髪の毛が月の光を反射していて、天使の輪がいくつも出来ていた。その中にはヘッドホンを付けていないヘッドもいて、後ろから誰かが話しかけているのが見えた。ふと目に入っただけだが、その光景に少し和んだ。
武道場に着くと中はもうそれ使用になっていて、敷き詰められたマットを見ただけでテンションが上がった。照明も夜祭使用で天井の真ん中に一灯ライトが吊るされていて、真ん中に行けば行く程明るく、隅の方は暗がりで独特の空間が出来上がっていた。もうそれだけで十分いつもと違った。
チュージ達(夜祭の準備係)が用意した敷き詰められたマットの中央には大きな隙間があって入り口から見て右手は男子、左手が女子に分けられていた。生徒達は持参したタオルケットや羽織る物を持ってそれぞれ思い思いに散らばる。一応クラス毎で何となく場所は決まっているが、男女の区別さえあればどこで寝ても構わない。なので武道場に集まってからはクラス関係なくバラバラになる。部活の仲間で集まったり、仲のいいグループで固まったりと自由で、クラスでの議論を余韻として残している者はまたクラスで固まったりしていた。また話す分には男女の垣根はないので互いに行き来する事も出来た。夜祭使用の照明の影響もあって話したい生徒は中央、休みたい生徒は隅っこへと自然と別れた。思い思いの場所にみんなが散らばった所で学年主任の甲田がマイクを取った。
「ここからは基本自由です。休みたい人は休んでいいし、話したい人は話して下さい。寝る時は互いの陣地に戻る事。それだけ守れば後は自由です。後、みんなに向かって何か言いたい事がある人はこのマイクを使って下さい」
穏やかな話し声だった。マイクを使ったのは地声で話すよりマイクを通した方が静かに話せるからだろう。
武道場の中はまだ静かで、その静けさが余計にこれから始まる夜祭への期待を膨らませた。




