「亮平と大門」その1
【亮平】
大門を初めて見たのは入学式の時で、同じクラスの女子の列に一際目立つ綺麗な子がいた。雰囲気は今とは違っていて髪も長くてポニーテール。その子の名前は「大門」といって、割とゴツい名前の女の子だった。
大門の存在を認識してから暫く経った時、近所の書店で偶然大門を見かけた事があった。学校以外で見る大門はその時が初めてで、大門はTシャツにショートパンツというかなりラフな格好で、寝巻でそのまま出て来たような感じに見えた。その書店は大型書店でもあったので人の出入りも多く、そんな格好でいる大門は余計に浮いて見えた。何というかその出で立ちは少し際どくもあって、その白いシャツは下着が透けそうで、履いてるズボンもすごく短い。その割にとても無防備で誰の目を気にする事なく立ち読みをしている。見ているこちらが冷や冷やする。同じ歳頃の娘を持つ母親だろうか「大丈夫かしらこの子?」といった顔で見てるオバさんもいた。でも美少女というのはこういう子の事を言うのだろう。整った顔立ちと細い手足が、よりその存在を際立たせていて、人の出入りの多い大型書店で寝巻きのような格好でウロつく美少女は嫌でも目について、立ち読みしているだけのその子は一人異彩を放っていた。大門の纏う空気はこの頃から他とは違っていた。そんな大門を、俺は少しの下心と保護者のような気持ちで眺めていた。
そんな事もあって、俺は人気が出る大分前から大門に一目置いていて、1年の時の学祭がきっかけで話をするようになった。話してみて始めてわかる事だが、見た目ほどの取っ付きにくさはなく普通に話せる。というか他の女子よりも全然話しやすかった。普段の寄せ付けない雰囲気と、大門自身が人見知りな事が影響してるとわかったのは話せるようになってからだ。
大門の人気が爆発したのは2年になってからで、ある日見ると髪が短くなっていた。その時はもうクラスは変わっていて話す機会も少なくなっていたが、それでもたまに顔を合わすと言葉を交わしていた。夏休みが開けて久々に見た大門は、確かに大人っぽく見えて前よりさらに寄せ付けない感じが増して見えた。それまでの大門も敷居が高く、親しみやすさを感じる事はなくて簡単には触れちゃいけない存在。そんな空気を大門自身が纏っていたようにも思える。けど今の大門よりは好感を持っていた事は確かだ。髪を切った大門は簡単に触れちゃいけない存在から、簡単に手は出せないが触れてみたい、ただの女になった。洗練された空気がなくなって大分俗世に馴染んだ気がする。周りの奴らにとってはそれがよかったのだろう。逆に親近感を感じたのかもしれない。
それまでの大門だって注目されてもおかしくない筈なのに周りが反応するタイミングが俺には不思議だった。少女から女になった大門に周りが反応したという事だろうか。ほとんどの奴が覚醒後の大門を支持するけど、俺は数少ない覚醒前支持者だった。前までは自重して触れないようにしていたものが、今では強制されているようにも感じる。俺から見れば今の大門の方がキツく、冷たく見えた。お嬢様だった子が女王様になったよう。なぜみんなが女王の方を好むのかわからなかった。「私と釣り合うにはそれなりの男じゃなきゃ」と言われているような気がした。確かに大門と釣り合うには相当なレベルが必要だろう。凡人が手を出せるレベルにない。言われた訳じゃないが、そんなプライドが大門からも透けて見える気がした。けどそんな大門の周りには自然と人が増えた。もしかしたらこの学校の奴らはみんなMっ気が強いのかもしれない。そんな風になってから周りとは逆に俺は大門を遠ざけるようになった。俺がみんなと一緒になって大門の話をする時は、そこに友達の意味は含まれていない。テレビで見る芸能人と同じだ。




