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武一、ミスコンを企画する。  作者: よしの
アゲ高学園祭 2日目「体育祭」
63/70

「亮平とチュージ」


 【亮平】


 フォークダンスの輪は学年事で別れていて、それぞれの学年で違った動きをしていた。2年では浜崎の前に『待ち』の列が出来ていて、浜崎は堂々とワンポイントを実行していた。久白(くじら)ちゃんも同様に行列が出来ていたが、中に入って暫く踊ると出て、少し休憩してからまた入ってとやっていた。久白ちゃんらしい動きではあるが、これだと慣れてない1年は難しいだろう。タイミングかけようとしてる奴は特に。1年で『待ち』をしている連中は天真爛漫な久白ちゃんに振り回されてるようにも見えた。


 ヘッドは先攻で最初から入っていて、今も輪の中にいる。結構タフだ。上澤も先攻で入っていたみたいだが、今はもう出ていて周りの子と一緒にフォークダンスの様子を見ていた。上澤に『待ち』が出来ている様子はなかったが、おそらく上澤の周りを取り囲んでいるK組の女子のせいだろう。長瀬ももう輪の中には居なくて、友達とフォークの輪を見ながら楽しそうに話していて、たまに声を掛けられると少し照れ臭そうにしながら輪の中に入っていった。そこで行われているのはとても平和な時間だった。


 確かにこれを見てる大人の気持ちが少しわかる気がする。それぞれがそれぞれの時間を過ごしてる中、一番活発で動きがあるのはやっぱり俺達3年かもしれない。


 フォークの輪から抜けて歩いてると階段の所でチュージを見つけた。


「チュージ、お前『待ち』やってんの?」

「いや。1回入って出たとこ。お前は?」

「同じ。先攻で入ってさっき出て来た。つーかさ大門んとこまた人増えてない?」

「ああ。結城んとこも結構いるぜ」

「やっぱミスコンの影響かな?」

「多少はあるだろうけど、あの2人ならそうじゃなくてもこうなるでしょ」

「まーな」

「あと新田。アイツのトコにも『待ち』が出来てる」

「マジ? 何気に一番人来るんじゃね?」

「新田は絡みやすいからな」

「お前また入んの?」

「俺はもういいや。しばらく見てる」

「武一は?」

「先攻で最初入ってたみたいだけど、もう出たみたい」

「そういや太一もいねーな。どこ行ったんだろ?」

「さあ」

「あと何分だっけ?」

「30分はあるんじゃね」

「なげーよな。俺ちょっと飽きたわ」

「ヤバそーになったら入ろうぜ」

「ああ。強制入ったらダセーもんな」


 1hフォークにはシャイな現代の高校生に向けられたルールがあって、恥ずかしがったり面倒になったりでフォークの輪に入ろうとしない場合、数が減って成立しなくなったフォークダンスの輪を再構築する為に強制的に参加させる方法があった。それが『強制』と言われるもので、教師達が参加してない生徒を集めて強引にペアを組ませるやり方だ。一見この方が余計な事を気にせずにすんなりいきそうに思うが、その行為は教師らによっての文字通り『強制』なのでそれを強いられる事はアゲ高生にとっては屈辱だった。特に現3年生は1年の時に上級生が『強制』されるのを目撃している事もあって、上級生らがダルそうにしながら教師に先導される姿はただただダサく情けない事をよく知っていた。気を抜いて座っていると、はしゃいだ教師から「強制すんぞー」と脅しを掛けられる事もあった。アゲ高では列をなしてでも目当ての子とペアになろうとするのが正しい姿だった。


「俺、ああいうの無理だわ」


 けど中にはそういう奴も少なからず居て。そういう奴は強制を避けるために同じクラスの普段仲いい女子を誘ったりと要領よく動いていた。意外にそんな奴程女子から誘われる事も多かったりする。武一もその1人だ。様子見がてらチュージと歩いていると現に何人かの女子に武一の居どころを聞かれたりもした。


「武一君ドコいるか知ってる?」

「知らねー」

「そ、ありがとー」


 それだけ聞くとさっさといなくなる。


「これで何人目?」

「5人ぐらい?もっとか」

「武一に『待ち』が出来てんの?」

「わかんない」

「どこ行ってんだろうな?」


 そんな事を言ってると、前から歩いてきた同じクラスの女子を見つけたので少し話した後、一緒にフォークの輪に入った。一度入ると出るのも面倒なのでそのまま輪の中にいると結城と出くわした。結城は「やあ」と言ってジャージの裾で半分隠した手を差し出した。今の時期に長袖なのは日焼けを気にしているからだろう。


「あれ? 結城じゃん。ワンポイントやめたの?」

「ちょっと面倒くさくなっちゃって」


 確か結城は去年ワンポイントでやってたと思う。それで出たり入ったりを繰り返しているのが面倒になったんだろう。特に今年はミスコンをやった事も影響して3年だけじゃなく1、2年も混じっていたようだ。現に輪の外にはボケーっとこちらを見ている男子の集団がいて、多分結城のワンポイントを期待していた奴らだろう。


「私、苦手なんだ。男子と1対1で何かするの」


 それが本当かどうかはわからない。けど目の前にいるのは、特別に人気のある誰かじゃなく、どこにでもいる只の女子高生に見えた。


 少し話をして御苦労さんと言って結城とは別れた。


 結城と離れた後で周りを見渡した。もしかしてと思ったからだ。思った通り前の方にその子はいて、他の女子とは頭一つ抜けていて離れていてもよくわかった。フォークの輪の中に居て踊り続けているという事は、大門もワンポイントをしなかったという事だろう。


 大門と最後に絡んだのはいつだったか正直覚えてなくて、本人が居ないところではさんざん話題にするのに、肝心の本人と話す機会はほとんどなかった。それを思うと少し虚しくて、その関係性が寂しかった。遠目に大門の姿を見ながら、俺は始めて大門と会った時の事を思いだしていた。


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