ミスコン その6「ミス・アゲ高」
【亮平】
浜崎の隣に並んだのを見ると、やっぱ久白ちゃんだなと思う。ミスコンを、何を基準にして選ぶのかは人それぞれだと思うが、浜崎と久白ちゃんなら間違いなく久白ちゃんを選ぶ。久白ちゃんからは全く色気が感じられなくて、きっと履いてるパンツもダサいだろう。けどそんな事はどうでもよくて。ただ『可愛い』だけが、ずば抜けた存在感でそこに立っていた。
壇上に並んだ女子はみんな煌びやかに見えて、壇上にだけ当たっている照明がさらにその存在を際立たせていた。いつもよりレベル高く見えるのは、もしかしたらメイクもいつもより気合いを入れてたりするのかもしれない。いつもより早く起きて、メイクして、そんな努力をしてたとしたら、こんな嬉しい事はない。みんなスゲー好きになる。
そんな妄想をしつつ、よく見ると上澤の隣にいるヘッドが少し浮いて見えない事もないが、みんなさすがアゲ高と思わせるメンツだった。この会場にアゲ高以外の人間がいるのかはわからないがこれぞアゲ高と胸を張れる。そんなメンバー達だ。そこにさらに加わるのが大門と結城。
結果を知る前の、この直前の瞬間こそがマックス。最高潮。
こんな事があるんだと思った。
ここにいるみんなが好きになった。
ミスコンの成功を確信した瞬間だった。
壇上に上がった女子に送られる声援が心地よくて、一層気分が高まっていく。ここ1年の間ずっと行われ続けた議論にいよいよ決着がつく時がやってきた。その為のミスコン。正直それ以外はどうでもよくて、ただのかませ犬に過ぎない。にしてはよく盛り上げてくれた。大門、結城以外にもこれだけのメンツが揃っている事が確認出来ただけでも十分だった。間に合わないと思っていた武一が三月の後ろにいる事には気づいていて、その武一が三月に何か手渡すのが見えた。おそらく結果が書かれた紙だろう。
「それでは第2位を発表します。獲得票数305、、、」
館内に最初に聴こえたのはため息の方だった。落胆の方が多かったという事だろうか。きっとそのため息の中には安堵の意味も込められていたと思う。実際、俺の周りには控えめではあるがガッツポーズをしている奴もたくさんいた。久白ちゃんを上回る量であちこちで「結城」の名前が叫ばれ、中にはロックバンドの解散コンサートのような悲痛なものまで飛び交う中、結城は壇上に上がっていった。
この時始めて三月がマイクを持って結城に近づいた。
「おめでとうございます。一言感想を聴かせて貰えますか?」
「え?はい、えっと、どうもありがとうございました」
「はい、ありがとうございました」
どっかの女子アナみたいだなと誰かが言った。マイクを向けるがその内容には興味がないらしい。結城の表情はいつもと同じ。多分、結城はこのミスコン自体に興味がない。どの順位だろうと表情は変わらなかったと思う。ずっとニコニコしていて手を振りながら声援に応えていた。
卓に戻った三月は武一から最後の紙を受け取った。
「それでは第1位の発表に参ります。第1回上利高校ミスコンテスト、第1位、獲得票数443………」
わかっていてもそうなった。大門の名前が読み上げられた瞬間、体育館全体が揺れた。俺も思わず握りしめた拳を突き出していた。ここぞとばかりに歓声が起きて囃し立てる声があちこちから聴こえた。生徒達が道を開けるのがわかって、その一角から大門が出て来た。大門はその長い手足を見せびらかしながら、堂々とした出で立ちで壇上に上がっていった。男子達は調子に乗って囃し立てるが、本人に反応はない。クールと言われる大門は格好いいという意味の他に「冷たい」という意味も含まれていた。今だってそうだ。壇上に上がっていく大門は怒っているように見えて、そして現に怒っていた。
結城の横に並んだ大門は、気怠そうにして前髪を片方だけ耳に掛けた。結城は小さく手を叩きながら大門を讃えていた。三月は結城と同じように大門にもマイクを向けた。大門は一瞬顔を歪めたが三月と何か話した後、ようやくマイクに向かって話し始めた。
「えーっと、特に言う事なんてないんですけど、何か言わなきゃいけないみたいなので言います。正直気持ち悪いです。なんでここに立たされてるのか。立たされなきゃいけないのか。意味がわからないです。さっきまで下で見てたんだけど、ここに立ってる子達が見世物にされてるみたいでとてもムカつきます、晒されてるみたいで不愉快です、胸糞悪くて吐き気がします。騒いでる男子とかホント意味わかんないし。あんた達にさ、何でウチらが評価されなきゃなんないの? 女の価値を男の物差しで測ってんじゃねーよ」
可愛い子が一番多くいるという高校の、その初めてとなるミスコンテストで1位に輝いた女子はびっくりするくらいブチ切れていた。
途中で三月がマイクを取り上げたので大門の声は最後まで聴こえなかった。
そもそも大門が話してる間も、周りで囃し立てる声がうるさくてよく聴こえなかった。ただわかったのは、怒っていたように見えたのは気のせいじゃなかったという事。
三月が卓に戻った後、ここでようやく武一が出て来て、大門に王冠とマントと襷が渡された。どれも手作り感満載の代物で、襷には『ミス・アゲ高』と書かれていた。
ミスコン結果
1位 大門 莉華 443票 1位153 2位196 3位094 945ポイント
2位 結城 ひなた 305票 1位058 2位109 3位138 530ポイント
3位 久白 愛 215票 1位124 2位055 3位036 518ポイント
4位 浜崎 結衣 165票 1位065 2位063 3位037 358ポイント
5位 上澤 ひら静 40票 1位038 2位002 3位0 118ポイント
6位 白石 加奈子 68票 1位020 2位008 3位040 116ポイント
7位 新田 春 100票 1位005 2位005 3位090 115ポイント
8位 長瀬 凛 52票 1位005 2位034 3位013 83ポイント




