ミスコン その3「三月②」
【チュージ(中山哲二)】
壇上に上がった三月は手に持っていた紙を広げると淡々と進行していった。
その堂々とした様子に最初ザワついていた館内も次第に静かになった。けど「なんで三月なの?」と言った声はまだあちこちから聞こえていて、批判的な視線は消えていなかった。三月の嫌われ度合いは想像以上で隠れファンはいないようだ。武一が三月を指名したのはそれを見越しての事かもしれない。そう思うと少し複雑な心境になるが、武一が三月を選んだ理由はもう1つあるようで、三月の声をマイクを通して聴いて、その理由がハッキリとわかった。三月の声は女子にしては低くハスキーで、その声を聴いて体育祭の実況を思いだした。
「赤が黄色を抜きました。赤組速いです。黄組も頑張って下さい」
見たまんま伝えるだけの棒読み実況。その声の主。それが三月だった。
感情を込めた話し方よりもその方がしっくりくるし学生っぽい。思えば小学校の時から運動会の実況はそんな感じだったように思う。下手に盛り上げるより淡々とした口調の方が場の空気に合っている。それに三月の場合は声に特徴があるので、1年の時の体育祭で初めてその声を聴いた時、ちょっと格好いいなと思った事を覚えている。
「これより上利高校ミスコンテストを開催します。では、改めて今回のミスコンテストの概要を説明します。今回のミスコンテストは上利高校の全学年の女子生徒を対象とし、投票者は全学年の男子生徒のみ。女子に投票権はありません」
ここで大きなブーイング。
「すいません、少し静かにして下さい。投票権を持つ男子は1人につき3名まで投票する事ができ、選んだ3名には1位、2位、3位と順位をつけて投票してもらい1位には3ポイント、2位2ポイント、3位1ポイントと順位によってポイントが振り分けられるボルダ式で行います。そしてそのポイント数が最も高い女子生徒が『ミス・アゲ高』の称号を手にします」
「女子に投票権はありません」というフレーズの際にブーイングが聴こえた以外は割と静かだった。
三月の落ち着きぶりは館内の空気を安定させた。
投票はもう終わっていて、学祭の前々日に武一含む実行委員が各クラスを廻ってそこで一斉に投票が行われた。これから行われるのはその結果発表で、名前を呼ばれて壇上に上がれるのは上位8名。いずれも50ポイント以上を獲得している女子だった。
三月の声は聴きやすくて、三月が話し出すと自然と周りも静かになった。
さっきまで批判的だった女子達もいつの間にか静かになっていて、段々と緊張感が高まってくるのがわかった。
「それでは結果を発表します」
三月の低い声が館内に響いた。




