表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
武一、ミスコンを企画する。  作者: よしの
アゲ高学園祭 1日目「文化祭」
45/70

「3年D組 島田太一」


 アゲ高では文化祭と体育祭が同じ時期に行われる。初日が文化祭で2日目が体育祭だ。


 今年の文化祭の目玉はミスコンで、その他は特に際立った事はなく、それぞれのクラスで決めた出し物や模擬店をやってワイワイとやる。そんな中、案内係に割り当てられた俺たちD組は、くじ引きで決まったシフトに沿って各々の役割を遂行していった。


 案内係が常駐する案内所は学校の中に3ヶ所あって、それぞれの場所に男女ペアで割り当てられ、時間事でそのシフトが組まれていた。俺は校門前に設置された案内係に、何故かヘッドとペアになった。狙ってそうなった訳じゃなく、くじの結果でそうなった。


 案内係の仕事は来場者に学祭のパンフレットを渡したり簡単な案内をする事。アゲ高の学祭は一般公開していて、ただ他の学校でも同じ時期に学祭を行っているので来たとしても保護者や近隣住民、卒業生が来るぐらいで特段混み合う事はない。


 なので案内係といっても大抵暇で、何かあった時用の御用聞きに過ぎない。また場所によっても違いがあって、校内の案内係はずっと立ちっぱなしでチラシ配りをするのが主な役割で、ここで何々やってますと生徒同士で呼び込みをする。基本他の組の生徒とダベっているだけなので、ほとんど案内係の体はなしてない。そんな案内係の中で一番時間を持て余すのが、校門入ってすぐの所に設置される案内所の当番な訳だ。


 その役割は来場者に中で使えるチケットとパンフレットを渡す事。俺とヘッドの担当はそこで、校門横に張られたテントの下にテーブルと椅子が置いてあって、そこに2人並んで座った。担当した時間が早いせいもあって、時折人の出入りがあるぐらいで、ほぼ2人きりという状況。ヘッドと2人きりになるのは補習の日以来で、思えば、あの日以来会話はしていない。当然、今もない。実は昨日もあまり眠れていない。俺はしっかりと緊張していた。


 これが1ヶ月前なら変な意識はしないし、ただ無意味な時間を過ごして、ずっとスマホを弄ってただけだろう。それが1ヶ月経つとこうも変わってしまうのか。隣を見ると当たり前だがヘッドの横顔が見えた。さすがに今日はヘッドホンをしていないようで。案内係がヘッドホンをして対応するのは、さすがに失礼だと思ったんだろう。俺達は慣れているからいいけど来場者からしたら違和感でしかない。ヘッドはそういう事をちゃんとわかっている子だった。ヘッドホンをしてないのでヘッドの耳がよく見えた。髪の毛の片方だけを耳に掛けていたので余計によく見える。ヘッドはとても綺麗な耳をしていた。


「白石って、綺麗な耳してんだな」


 いきなりそんな事を言ったら、それこそヘッドは耳を真っ赤にして恥ずかしがるだろう。場合によってはセクハラと思われるかもしれない。とても言えない。けど、とても綺麗な耳をしている。


 ちょっと待て。そもそも耳が綺麗って何だ? 誰かと比べた事あんのか?

 そもそも耳を見て、それが綺麗かどうかどうやって判断するんだ?

 その基準は何? そもそも耳に綺麗や汚いってあるのか?

 少なくとも今通り過ぎて行った おばさんの耳よりは綺麗な気がする。


 そんな事を考えながら俺はヘッドの耳をとても褒めたくなった。綺麗だと教えてあげたくなった。ただ、普通の女子に言っても引かれそうな事をヘッドに言えるだろうか。けど今日は学祭。お祭りなのだ。


「白石ってさ、綺麗な耳してるよな」


 俺がしていたのは緊張じゃなかったらしい。

 ヘッドの反応は予想通りだった。丁度来場者に声を掛けられて、下を向いてしまったヘッドに代わって俺が案内をした。案内を終えて戻って来た時にはヘッドは普通に戻っていた。椅子に座るとヘッドは小さな声で「ありがとう」と言った。


「いや、俺も今気づいたんだけどさ。ほら、白石って普段ヘッドホンしてるじゃん? だから見た事なかったから。すげえ綺麗だと思うよ」


 素っ頓狂な顔をしたヘッドの顔を見て、さっきの「ありがとう」は耳を褒めた事じゃなく、ヘッドの代わりに案内をした事に対してだったと気づいた。俺の耳は真っ赤になった。


「ありがとう」


 さっきより小さな声だった。けど、嬉しかった。


 この時間は人もまばらで声を掛けてくる人も少なかった。そのままテントの下でヘッドと2人で座っていた。ヘッドとの間にもう会話はなかった。


 丁度その頃、校門の所で奥村が学祭用の写真を撮っていて、後で撮った写真を見せて貰うと校門前ではしゃぐ生徒の後ろに、2人で座っている俺とヘッドが小さく写っていた。俺は奥村に頼んでその写真を焼き増しして貰った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ