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武一、ミスコンを企画する。  作者: よしの
3年K組 五十嵐 透 
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「K組と甲田」


 「K組」とは生徒達が勝手に使ってる通称で、正式には「特別進学クラス」という。他のクラスと違ってアルファベットは割り振られていない。


 このクラスは人数が少なく定員は20名。成績優秀で難関大学を目指す生徒の為のクラスだ。その振り分けは1年終了時の成績によって決まり、成績上位20名が特進クラスに入る権利を有するが強制ではないので希望しない生徒は別に入らなくていい。俺らの代では結城がそれに当てはまる。結城は、成績はトップクラスだが特進クラスは選ばなかった。


 2年で特進に振り分けられると、そこからクラス変えは行われない。担任も同じだ。で、その特進クラスの担任が甲田という男の教師で、K組の由来はこの甲田からきている。甲田のイニシャルが『K』。それでK組。しょうもないがそれがK組の通称として定着した。クラスの呼び名とかクソどうでもいいが、これは俺達の代が特別そうだった訳じゃなく、特進クラスは、その年代によって独特な呼び方があって、それでたまたま俺らの代が「K組」だったという訳だ。俺らの1つ上は「α」と呼ばれていた。クソどうでもいい事だ。


 K組の担任である甲田は学年主任でもあり、生徒から一目置かれている存在でもあった。俺は好きでも嫌いでもないが確かにアゲ高にいる教師の中では一番信頼出来るかもしれない。言っている事は一番まともだった。


「先生、勉強やる意味ってあるんですか? 将来何の役に立つんですか?」


 こんなバカみたいな質問に甲田はこう答える。


「将来役に立つかは知らんが今は役に立ってるだろ。英単語の一つも覚えれば成績は上がるし、成績上がれば親は喜ぶし、希望の学校にも入りやすくなる。それで充分だろ」


 たまたま耳にしただけだったが、その通りだと思った。バカにもわかりやすかっただろう。そもそも学校で将来の役に立つ勉強をしようってのが間違ってる。そこまでこの国のシステムは親切じゃない。将来役立つかどうかは自分次第。利用するかしないか。それだけの事で、そもそも与えられたものでやってちゃダメ。自分で見つけてやるものだ。世の中の全てが教科書の中に集約されてるとしたらそんなつまらない事はない。飽くまで学校でやる勉強はふるいにかける為の術でしかない。ただのシステムだ。優秀な奴ほど選択肢が増える。それに気づく奴が人より先に行って、贅沢な暮らしが出来る。気づかない奴はそこらで平々凡々と生きればいい。俺達はとっくに篩にかけられている。それに気づいてる奴がどれだけいるかだ。


「今やってる勉強を活かしたいならそういう道に進めばいいだろうし、君達の人生の事は俺にはわからん。君らの自由だからな。例えば君の言う通り、今やってる勉強を将来に活かそうとするなら授業はもっと専門的になるだろうし、今の時点で進路を決める事になる。第一この学校は普通科で、将来やる事を模索してる奴が来る所だ。ある程度道筋決めてんなら高校行く時点でそれ専門の学校に行けばいいだろ? 例えばスポーツだってそうだ。その競技が強いとこ選んで行くだろ」


「疑問を持つ事は悪い事じゃない。けど何が役立つかじゃなくて何を役立てるかだ。それに学校で習う事なんてたかが知れてる。5教科の中に君らの人生が詰まってる訳じゃない。そんなもんに収まるほど君達は小さくない。だから教科書に書かれてる事なんて片手間で済ますくらいが丁度いいんだ。本当はもっと他の事に時間かける方がいい。けどそれがなかなか出来ないから、こんなのあるけど、どう? 興味ある? 他にもこういうのあるけど、どうかな? って提示するのが学校の役割なんだけどな」


 学校でやる勉強なんて食堂のサンプルを見せられてるようなもので、それ見て気に入ったらその店に入るだろうが、ウィンドウ越しに見るだけでほとんどの奴は通り過ぎて別の店に行ってしまう。学校の勉強なんて所詮はそんなもんだと甲田は言ってる。食べたい物を自分で決める。将来の事や就職の事を真剣に考えるのなんてもっと先だろうし、その事まで見越して今を過ごしてる奴がどれだけいるんだろうか。


「贅沢なんだよ。お前らは」


 このクラスにいるとそういう話を聞く機会も多くて、甲田のK組という意味では、その呼称は間違ってない。


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