「K組の冨田君」
冨田君とは通っている塾が同じで、最初は気づかなかったけど同じ学校だと知ってからは学校でも塾でも顔を会わせる事が多くなった。
僕が冨田君を見たのは塾が先で、学校では見かける事がほぼなかったのでそれまで同じ学校の生徒だとは知らなかった。冨田君と最初に話したのも塾が先。それがきっかけで学校でも話すようになった。
それまで冨田君の事はよく知らなくて、最初名前を言われてもピンと来なかったけど冨田君は学校で知らない人はいないぐらい有名人で、その理由は冨田君の頭の良さにあった。成績は常に学年トップ。県内でも三本の指に入る程の秀才。そして冨田君は男の僕でもドキっとするくらい綺麗な顔をした男の子だった。
頭脳明晰容姿端麗。
この戒名みたいな肩書きを持つのが冨田君。そんな冨田君とはクラスは違ったけど学校でも少しずつ話すようになった。
「和泉君はさ、何してる時が楽しい?」
「今まで生きてて楽しいと思った事はないかな」
「よかった。じゃあ僕と一緒だね」
冨田君と初めてした会話だったと思う。
僕たちはずっとこんな調子で、会話が弾む事はないけれど、何故か苦にならなかった。
冨田君と一緒にいる所をたまたま新田さんに見られた事があって、その時言われた事がある。
「五十嵐 (トオルくん)といるより、自然に見えるね」
新田さんによると僕と冨田君は雰囲気が似ているそうだ。言われてみるとそうかもしれない。容姿はともかく醸し出す雰囲気は何となく似ているのかも。けどそんな事を言うのはやっぱり新田さんぐらいで。けど、こうも思っていて、冨田君と似ていると言うより、僕と透君が違い過ぎるんだと思う。僕は透君と一緒にいて気を遣ったりする事はなかったけど、他の人にはそう見えるのかもしれない。そういう意味で新田さんは言ったんだと思う。でもひょっとするとこれは怒ってもよかった所だったかもしれない。
「それってどういう意味? もしかして透君の事バカにしてるの?」
僕が透君の存在に救われた事は確かだった。そんな透君の事を小馬鹿にしたような言い方は許せない。勿論、新田さんはそんなつもりで言ったんじゃないだろうし、僕もそんな事を言う気はない。そもそも相手は新田さんで、僕が新田さんに敬遠されるような事を言う筈がなかった。第一それで僕と透君の関係性が変わる事はないんだから。
そんな冨田君と知り合ってから、透君と昼ご飯を食べる機会は段々と減っていった。




