「大門には華がある」
「大門って、今とは全然違ったんだぜ」
今日もいつものように透君と昼ご飯を食べていた時だった。
「入学したての頃はもっと髪も長くてさ。後ろで括るぐらい。その頃はまだ今程目立ってた訳じゃなくて、美人ではあるけど取っ付きにくいっていうか。まあそれは今でも変わんないんだけど、注目されるような奴じゃなかった」
「そうだったんだね。でも髪が長い大門さんってあんまり想像つかないな」
「お前だけじゃなくてさ、1年の時から一緒の奴もその時の大門知らない奴多いよ。イメージとしては完全今だからな。俺は嫌いじゃなかったんだけどな」
透くんは髪の毛が長かった頃の大門さんのディティールを教えてくれたけど、話だけだとイメージしにくかった。
「大門って黙ってると怒ってるみたいに見えるだろ? 目力強いし。けど見た目いいからみんな一応は知ってる訳。でも好感ある訳じゃなくて。なんか入学してすぐに3年の奴と付き合ってるとか噂流れたりとかして。そういうのって敬遠されたりするじゃん?」
「うん。なんとなくわかる」
「そういうのもあって本人の知らないとこで勝手にキャラが出来上がっちゃってさ。大門も大門で我関せずで、あんま自分の事話すタイプじゃないし。特に男子で大門と絡んでる奴なんてほとんどいなかったからさ。クールで冷めてて俺らの事は眼中にないって感じ。その辺、結城なんかは入学したての頃はまだ子供っぽくてガキみたいな感じだったけど、その頃から抜群の癒しキャラなわけ」
「最初から人気者だったんだね」
「そ。女として見てる奴はあんまいなかったと思うけど、マスコット的な扱い?愛されキャラみたいな感じで結城の事はみんな知ってたし好感持ってた。で、2年になったくらいかな。結城も段々可愛くなってきてさ、周りの奴もそういう変化に気づく訳」
「それで人気爆発だ」
「うん。でも大門は相変わらずでさ。可愛くねー女だなってみんな思ってて。で、2年になってからかな、ちょくちょく大門と話すようになってさ。元々大門とは部活が同じだったから。俺は途中で辞めちゃったんだけど、お互い顔は知ってて。でも顔合わす事はあっても絡む事とか全然なかったんだけど2年になった時から急にさ」
透くんが弓道部だった事は小さくない驚きで、是非詳しく聞いてみたかったが既に話は次へと進んでいた。
「それでちょくちょく話すようになって。んで気づいたんだよね、こいつ意外におもしれー奴だなって。何かさ他の奴らは俺も含めてみんな大門のこと敬遠気味だったから。けど話して見ると面白くて。俺が1人で飯食ってたら『私もそれ好き』っていきなり話しかけてきてさ。何コイツ? って思って『やんねーよ』って言うと『いらねーよ』ってな感じで返してきて。性格もスッキリしててるから意外に絡み易いんだよ。普通の女子より全然話しやすい。見た目とっつき難いから、みんなきっかけ掴めないだけでさ。話すとイメージ変わるぜ」
透くんが何で大門さんの話をし出したのかはわからなかったけど、大門さんの話をしてる時の透くんは楽しそうに見えた。また僕に大門さんの事を知ってもらいたいようにも思えた。お気に入りの音楽を勧めるような感じで。
「で、そん時ぐらいかな。俺以外にも大門に注目する奴が出てきてさ。前とはちょっと大門の見方が変わってきて。それが丁度2年の夏休み入る前ぐらいかな。休み明けに髪の毛バッサリ切って来て、今の大門になって。それで一気に人気が出たってわけ」
「当時は相当盛り上がったんだぜ『大門ってあんな可愛かったっけ?』『俺は前から可愛いと思ってたし』『は?俺もだよ』みたいな感じでさ」
話をしている透くんは楽しそうな反面、少し寂しさを感じてるようにも思えた。
自分しか知らなかった大門さんが急に注目され始めて。自分しか知らなかったインディーズバンドがメジャーに上がっていくような。嬉しさと寂しさが入り混じる。
僕はどちらも経験がないのでわからなかったけど、今のこの時間がとても無駄だという事はわかっていて。それを少し感傷に入ってる透くんの前で言う事はさすがに出来なかった。
「大門と結城はタイプが違うからさ一概にどっちがいいとは言い切れないけど、俺はやっぱ大門だな」
「2人の違いって何なのかな?」
透くんは首をひねりながら何か言い方を考えてるようで、うまく言えないんだけど、と前置きした後で言った。
「華があるんだよ。大門は」
昼休みが終わって透君と別れて教室に戻る途中、新田さんが歩いているのが見えた。渡り廊下を歩いていていた新田さんは、すれ違った子と話が盛り上がったようで、そのまましばらく僕の視界に留まり続けた。




