「新田さん」
「和泉くんって面白いね」
そんな事を言うのは新田さんくらいだ。けど新田さんは僕と話すといつもケラケラと笑っていた。
新田さんきっかけで他の人とも話すようになって、クラスに打ち解けていくのはかなり早かったと思う。正直そんな扱いをされても気を遣うだけで、本当は避けたかったけど新田さんの距離感の詰め方はとても上手で、僕の性格を見計らったような絶妙な距離感に僕はまんまと取り込まれてしまった。
そんな新田さんに心を開くのに時間はかからなかった。全てを悟った僕を新田さんはクラスメイトとして快く受け入れてくれた。
新田さんのおかげで僕は割と早くクラスに馴染めた。けど一ヶ月、二ヶ月経っても僕は学校に慣れないフリをした。普段ならそんな事はしないし、寧ろ逆の態度をとろうとするが、そうしなかったのはそれが新田さんの気を引ける唯一の事だと気づいたからだ。新田さんにとって僕は特別な存在じゃない。僕が学校に慣れてしまえば気にする事もなくなる。新田さんと接する内に、僕は新田さんにとって特別でありたいと思うようになった。
そんな新田さんの気を引く為には「転校生」であり続ける事が必要だった。そんな事をしなくても僕には転校生というキャラしかないんだけど、それがより強くなるように転校生のフリをし続けた。
けど一学期が終わり二学期になってもうこの学校にもすっかり慣れてしまった。
半年も経てば移動教室も間違える事はないし、クラスの子がやる下手なモノマネもそれが誰のモノマネなのかもわかる。数学と古典の授業は、日付と同じ出席番号の生徒が当てられる事も知っていた。まあ、大体は透君が聞かなくても教えてくれるから、わざわざ誰かに聞く必要もないんだけど。
だから今でも新田さんは僕の事を「転校生くん」と呼ぶ。そのまんま過ぎて、なんの捻りもないその呼び方が、僕に取っては安心材料になった。そのまま僕は新田さんの前で転校生であり続けた。ミスコンの話を聞いたのは丁度そんな時だった。




