「トオルとコウセイ」その1
透君が指差した先にスカートの下にジャージを履いている女子がいた。
「アイツが元祖な。一番最初にスカートの下にジャージ履き始めた女子。それからみんな真似するようになってさ。だからアイツが元祖」
その子は工藤さんという子で名前は晴香というらしい。
可愛らしい名前だが、誰もその子を名前で呼ばない。きっと僕が工藤さんの名前を出しても「誰それ?」と言われてしまうだろう。明るい髪色をしていて、少しギャルっぽい出で立ちの元祖さんはパンを食べながら渡り廊下を歩いて行った。
「で、アイツがファミリア」
「ファミリア?」
「そ。アイツの家の近くにファミリアってスーパーがあるから」
近所にあるスーパーの名前で呼ばれるその子は歩いているだけなのに、どこかユーモラスだった。
「あ、吹いた」
飲もうとして咽せたのか、茶色い液体がミスト状に噴射した。横にいた子も大笑いしている。
また1人、渡り廊下を歩いていった。
「アイツはアカネな」
「あだ名とかは付いてないんだね」
「違う。アカネがあだ名。あいつの家スナックやっててさ。その店の名前が『あかね』なの」
「本当の名前は何ていうの?」
「さあ。確かアキコかキョウコだったと思う」
サヤカだった。
「フライデー」
何かとやらかす奴。それをやるのが大体金曜日で、金曜日ごとに何かしらやらかすからそう呼ばれるようになった。ちなみに先週の金曜日は、消化器を倒して廊下の一部分を真っ白く染めた。
「ジェニファー」
ジェニファーとは同時に5人と付き合っていた事で話題になった、とある海外セレブの名前。という事は、
「各学年で付き合っている奴が1人づつ居てさ。要は三股。本当は四股なんだけどな」
本命の彼氏は違う学校にいるらしく、本命彼氏にはバレていないそう。
友達は少ないようで、ジェニファーさんと付き合うにはそれなりの覚悟が必要そうだった。
「アレがヘッドな」
ピンク色のヘッドホンをして歩いている女子生徒。あだ名の由来は、まんまヘッドホンから取ったらしい。
「どう思う?」
「どうって」
「見た目よくてもさ、中身が変だと付き合い辛いじゃん」
「そうだね」
「見た目いいのも大事だけどな」
「そうだね」
また1人、通り過ぎた。
「アイツは知ってんだろ?」
「うん。新田さん。同じクラスだから」
「お前、ああいうの好きそうだよな」
昼休みが終わるチャイムが鳴って、教室に戻った。




