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武一、ミスコンを企画する。  作者: よしの
3年D組 島田太一
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ヘッド その4「興味と好意」


 ヘッドは話しかけられるとちゃんとヘッドホンを外す。その所作はゆっくりとしていて、とても丁寧に見えた。


 話しかけた方もヘッドホンを外すのを待ってから話しかける。ヘッドが喋ってるところは滅多に見かけないが、たまに廊下で誰かと一緒にいて話していたりするので普通に友達はいるようだ。話している感じもとても穏やかで、イメージだけでキレやすいとか勝手に決めつけているが、たぶんヘッドはいい子なんだと思う。 


 いざヘッドに話しかけてみようとして気づいた事があった。どうやって話しかけたらいいのか、その方法がわからない。

 相手は大きなヘッドホンを頭に付けていて、初めて話しかけるにはハードルが高い。


 その事に気づいて、みんなどうしているのかと思って観察してみると、ある事がわかった。


 ヘッドに話しかけるにはやり方があって、まず普通に話しかけてもヘッドは反応しない。なぜならヘッドホンをしているから。なのでヘッドに話しかけるにはヘッドホンを付ける前に声を掛けるか、肩を叩くかのどちらかだった。


 まずヘッドホンを付ける前に話しかけるのは困難で、なぜなら授業が終わるチャイムが鳴って、鳴り終わる頃にはもうヘッドはヘッドホンを付けている。授業が終わって、教科書を机に仕舞って、前向いた頃にはもう付けている。動きはゆっくり。けどもの凄く早い。なのでヘッドに話しかけるには肩を叩くしかない。実際、ヘッドに話しかけている女子はみんな肩を叩いてから声を掛けていた。なるほど、やり方はわかった。で、いざそれを実行しようとして、またある事に気づく。


 女子の肩って、そんなに気安く触っていいんだろうか?


 普通に考えて肩を叩くなんてごく親しい子か、いや親しかったとしても肩を叩くなんて滅多にない。ましてや相手は女子で、しかもヘッドだ。思った以上にハードルが高い事を知った。


 自分が女子の肩を叩く場面を想像した時、それは好意を持った相手への行為じゃないかと考えた。また自分が女子に肩を叩かれたとして、それは好意があるからだと思う。つまり肩を叩くのは、もう好きだって言ってるようなもんだ。イヤ、女子はまだいい。奴らのスキンシップは男よりも気安い。新田なんかを見ているとよくわかる。けど男子が同じ事をやろうとすると、どこか厭らしさを感じてしまう。ヘッドに厭らしい事? そんなこと考えた事もない。ヘッドに好意? いやいや待てよ。今、抱いているのは「興味」であって「好意」じゃない。ヘッドは飽くまでネタ枠で、飽くまでネタとして興味を持っているだけだ。


 みたいな事を延々と考えて、ヘッドに話しかけるのが無理だと悟った時、ハッキリと落ち込んだ。自分でも不思議だった。そしてまたある事に気づいた。ヘッドの存在を知ってから2年ちょい。同じクラスになってもう半年。俺は今まで一度もヘッドと話した事がなかった。


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