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武一、ミスコンを企画する。  作者: よしの
3年C組 中山哲二
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「チョーさんとミスコン②」


 俺と服部は同じラグビー部に所属していて、服部はその体格もあって、元からラグビーをやるつもりだったらしいが、俺は特に決めてなくて体育系であれば何でもよかった。だからサッカー部でもよかったが、足でボールを扱うよりも手を使うラグビーの方が簡単だろうと思ってラグビー部を選んだ。思っていた以上に練習はハードで、体型はどちらかというと細身だったが足には自信があって、始めたのは高校からだったけど、それでも十分通用したし、周りにいる連中ともウマが合って単純に楽しかった。


 グラウンドの真ん中がサッカー部で、その両隣をラグビー部と野球部が使って、陸上部がその端っこを使って練習をする。サッカー部だった亮平と野球部だった太一とはグラウンドでもよく顔を合わせていて、武一は高校の部活には参加していなかったが、その代わり地元のスイミングクラブに所属していて、地元では割と有名な選手で、たまに全校集会で表彰される事もあった。


 長瀬は野球部のマネージャーをしていて、ラグビー部のグラウンドは部室棟の近くにあったので、そこで練習の準備をしている姿をよく見かけた。といっても野球部のマネージャーとして認識しているくらいで話した事はなかった。小さな体でバケツ一杯に入った球を運んでいるのを微笑ましく眺めるぐらいだった。


 ある日、練習中に逸れたラグビーボールが長瀬にぶつかった事があった。長瀬は丁度球を運んでいる時で、ボールが当たってバランスを崩すと漫画みたいに派手に転んだ。多分女子にボールが当たった時の最悪のパターンだろう。俺は慌てて長瀬に駆け寄ったが、長瀬は自分でも驚いたようで自分で自分の事を笑っていた。長瀬はスカートを払いながら立ち上がると「ゴメンなさい」と何故か謝ってきた。俺は長瀬の「ゴメンなさい」に突っ込む事が出来ずに「おう」とぶっきらぼうに返してしまった。他の部員も駆け寄って来て一緒に転がった球を拾った。長瀬はその間もずっとヘラヘラと笑っていた。よく笑う子。それが長瀬の第一印象だった。


 それが多分長瀬との初絡みで、思えばその頃から何となく後ろめたさを感じていて。近くにいるだけで傷つけてしまいそうな、どこか小動物のようで、足元を這い回るハムスターを間違えて踏んでしまいそうになる感じ。だから3年になって同じクラスになった時は正直戸惑った。なんとなく俺と服部は同じ事を思っていたようで、教室に入って来た長瀬を見て、お互いに苦笑いをした事を覚えている。


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