「チョーさんとミスコン①」
ミスコンにランクインさせるには上位8人に入る必要があった。そうすれば入賞扱いになって壇上に立てるそうだ。
長瀬を入賞させる事を考えると、クラスの男子は当然としても、それだけじゃ足りない。例えばアゲ高の女子を可愛い順に5人、いや10人上げたとしてもそこに長瀬が入るのは難しいだろう。大門と結城がいて、新田にK組の上澤。太一のいるD組にも、ちょっと変わってるが人気のある子も居たりする。そして1年と2年には浜崎と久白ちゃんがいる。正直そのメンツに長瀬が加わる事は想像し難い。クラスの組織票があったとして、後はそれぞれの交友範囲で出来る事をする。という事でC組の男子達は各々で動く事にした。
俺と服部は同じラグビー部の連中に声を掛けた。けど長瀬の名前を出してもピンと来てない奴の方が多く、長瀬のポテンシャルは間違いない筈なんだが、いかんせん知名度が低かった。その証拠に奥村の作ったチラシにも載ってない。声を掛けた連中が長瀬に入れる可能性は低かった。
そんな時、パギィーこと吉田がテンション高めで駆け寄ってきて、
「さっき久白ちゃん見たよ。体育館行ってさ、久白ちゃんってバド部 (バドミントン)なのな。思ったより小っちゃくてさ。すんげぇ可愛いかった」
まるで芸能人でも見たような反応だ。
「見たらマジテンション上がるぜ」
俺もあれから遠目からではあったが一度見かけた事があった。確かに可愛い子ではある。けど吉田みたいなテンションにはならない。
「ちょっと俺、どうしようか迷ってる」
「うん、OKわかった。お前はもういいや」
やはり吉田はとんでもなくダメな奴だった。
吉田をあしらって教室に戻ると長瀬がいて、笑っているその顔を見ると少し安心した。もう長瀬の事は「チョーさん」とは呼んでなくて、久々に「長瀬」と名字で呼んだ時、少し不思議そうな顔をしたのが印象的だった。
クラスの女子と楽しそうに話している長瀬を視界に留めながら自分の席に座っていると、何故か気持ちが満たされる。とても贅沢な気分だ。前の席の吉田が少し目障りではあるが、この学校好きかも、と思う瞬間でもあった。




