それからのこと
「リリィ。実は話があるんだ」
「話し、ですか?」
レオとエメ。
二人の子どもが誕生した話しは、またたく間に国中に広がっていった。
たくさんの人が祝福してくれている中、リリィは赤子二人と共に養生していた。
そんな中、ノアから真剣な眼差しで言われたのだ。
「この子たちの後見人のことだ」
「後見人……?」
後見人ならリリアナの両親である、ウィンバート侯爵家がなるはずだ。
大変不服ではあるが。
今ごろ小躍りでもして喜んでいるであろうあの家族を思い出すと、思わず顔が歪んでしまった。
「このままだとあのウィンバート家がいい思いをするだけだろう? ……この子たちの後見人だと鼻高く、あれこれ面倒ごとを起こされるのも嫌だ」
「……はい。それは私もです」
あの親、妹のことだ。
皇太子、皇女の後ろ盾だと大きな顔をして、あれこれ面倒ごとを起こすに決まっている。
そうなっては子どもたち二人の名誉にも関わってしまう。
「だからもし……。もしリリィがよければ……。君の本当の父親に、後見人を任せないか?」
「――お父様に?」
「そうだ。同じ侯爵だし、なにより彼にはあの尋問で深い愛情を感じた。彼なら二人の子を、大切にしてくれるんじゃないか?」
「…………」
まさかこんな形で、父と関わることになろうとは思わなかった。
もうあれが、最後の逢瀬だと思っていたのに。
だがもし、もし父がこれを承認してくれれば、子どもたちにとってもこれほどいい話はない。
少なくともウィンバート家に任せるより、ずっといいはずだ。
「ノアさえよければ、ぜひそうしたいです」
「――よかった。ならこれで話を進めるよう、母上にも伝えておくよ」
「ありがとうございます!」
子どもたちの未来も明るそうだとホッとしていると、リリィの調子がいいことがわかったのか、ノアが話を続けた。
「それとアシュリーの件だが……家を勘当されたらしい。だが皇后宮で働き口があるから安心してくれ。――いざとなれば母上の実家が後見人になってくれるようだ」
「それは……よかったです」
アシュリーはあのあと、キースとともにやってくると揃って謝罪してくれた。
申し訳ないことをしたと。
謝って許されることではないのはわかっているから、必ず償いをすると。
殺されかけたことは本当に許せるものではないが、キースとのことをきっぱりしなかったリリィにも責任はある。
ゆえにこの後を見てアシュリーを許すかどうか決めると伝えた。
リリィが許さなければ、アシュリーは皇宮の境を跨ぐことはしないと決めているようだ。
アシュリーが誠心誠意動いてくれることを願っている。
「孤児院の方もうまくいっている。近々少し離れたところにもう一つ作る予定だ」
「うまくいっているんですね」
「それもこれも全て、君のおかげだ。子どもたちも自分の未来のためにと、一生懸命勉強しているよ」
孤児院製の刺繍やおもちゃはとても好評のようだ。
おかげで次の孤児院を作ることもできる。
もちろん目指すは国経営なので、まだまだ先は長いが。
「着実に一歩ずつ、ですね」
「ああ」
そんな話をしていると、皇女がぐずり始める。
するとまるで伝染するかのように、皇子のほうまで泣き始めるのだ。
「あーあー。よしよし。ほら、お父様だぞー」
「……エメはノアに抱っこされると、一瞬で泣き止みますね」
「そこらへんもやはりリリアナなのかもしれないな」
これはきっと、大人になっても父親大好きな娘になりそうだ。
ちなみに容姿は皇女はリリアナ、皇子はノアにそっくりである。
「レオはリリィに抱っこされるのを好む。――俺が抱くとむしろもっと泣くんだ。……ちょっと傷ついた」
「今だけですよ」
ちょっとだけしょんぼりとしつつも、ノアはリリィが座るベッドへと腰を下ろした。
そのままリリィの額に口付けを落とす。
「ありがとう。――君のおかげで、俺は大切だと思えるものが増えた。愛することも愛されることも、こんなに幸せだとは思わなかった」
「私こそ。あなたが私の話を信じてくれなければ、きっとなに一つ成し遂げることはできなかった」
復讐をすることも、誰かをまた愛することも、子を成すことも。
全てノアのおかげだ。
だからこそ感謝の言葉を伝えれば、彼は優しくリリィの肩を抱き寄せた。
「愛してる、リリィ。君の全てを」
「愛してます、ノア。……あなたの全てを」
どちらからともなく寄せた唇は、柔らかな温もりとともに触れ合った――。




