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【完結】許されるとおもうなよ〜夫とその恋人に殺された令嬢は復讐を誓う〜  作者: あまNatu


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58/90

にったりと

「リリアナ様。……お客様がお越しです……が……」


「お客様……? 来客の予定はなかったはずだけれど……」


 とそこまで言ってはたと動きを止めた。

 この展開には覚えがある。

 苦々しいメキーラの顔といい、この予感が当たらなければいいと思いながらも、たぶん当たっているのだろう。

 刺繍をしていた布をかごの中に入れ、近くの侍女に隠すよう命令した。

 下手に見られてあれこれ言われると困る。

 他にも見られてはいけないものはないか確認してから、メキーラに視線を向けた。


「……来客はエラね?」


「…………はい。ノア殿下より、帰しても構わないと仰せつかっておりますが……」


「大丈夫よ。……通して」


 このタイミングで来るということは、十中八九アメリアのことだろう。

 マルクがうまくいかなかったから、次はエラが来たのだ。

 しょうじき面倒だとは思うが、アメリアのことを聞いたエラがどんな反応をするか気になる。

 近くの侍女に紅茶とお菓子を用意するように伝え、リリィはソファに腰を下ろした。

 目の前に置かれた紅茶で喉を潤していると、騎士に連れられたエラがやってくる。


「リリィ! この間は本当にごめんなさい。うちの侍女があなたにひどいことを……!」


「エラ、落ち着いて。まずは座ってちょうだい」


 挨拶もなく己の主張をするエラに、メキーラの眉間に皺がよった。

 だがこの程度で怒っていては、エラとは話すことすらできない。

 ソファに座るよう伝えれば、エラはいそいそと腰を下ろした。


「ごめんなさい、わたしったら……! あ、美味しそうなお菓子! さすが皇宮ね。これ食べてもいいのかしら?」


「…………どうぞ」


「ありがとう! さすが大親友! わたしの好きなものわかってくれているのね!」


 別にエラの好みに合わせたわけではないのだが、否定する気にもなれなかったので無言を貫いた。

 用意させていたカップケーキをパクパクと食べたエラは、紅茶で流し込んだ後またしてもマシンガントークを始める。


「ねぇ、あの子……アリアナ? だったかしら?

 とにかくあの侍女のことだけれど」


 名前もちゃんと覚えていなかったのか。

 アメリアはエラに盲目的に尽くしていたというのに。

 エラにとってはそれが当たり前すぎて、とるに足らない存在だったのだろう。

 名前を覚えられていなかった、なんて知ったら、アメリアはどう思うだろうか……?


「マルクからも聞いてると思うけれど、あの子嘘ばっかり言うの! だからどうか信じないで欲しいの……。ね? わかるでしょう? わたしがそんなひどいことするはずがないって……!」


 もちろんわかっている。

 エラは笑顔で人を害することができる存在だと。

 上目遣いで涙目になれば、誰もがエラのいうことを聞くのだろう。

 だが残念ながらリリィには通用しない。

 

「……あなたたちはなにをそんなに慌てているの?」


「慌ててる? だってそれは……!」


「第三者の私からすると、あなたたちのしていることは、罪を隠蔽しようとしているようにしか見えないのよ」


「ち、違うわ! わたしそんなことしない!」


「なら静かに沙汰を待っているといいわ。――あなたの言うとおり、なにもしていないと言うのなら。……必ず真実を白日の下にさらしてみせるから」


 リリィは青ざめるエラに向かって、穏やかに微笑んだ。


「あなたが無実だというのなら、それを必ず証明してあげるからね」


「………………っ」


 まるで苦虫を潰したような顔をしたエラは、なにを言っても無駄だとわかったのか黙り込む。

 ガリガリと音を立ててナッツの入ったクッキーを食べていると、不意に顔を上げた。


「…………わたし、もう帰るわ」


「え?」


「こんな急にきちゃって、リリィに迷惑かけちゃったでしょう? あなたの言うとおり、大人しく屋敷で待ってることにするわ。――真実は、ちゃーんとわかるもの……ね?」


 ――ゾワリ。

 エラの笑みを見た時に、二の腕が総毛立ったのがわかった。

 目元が笑っていないのに、口元はにったりと動くその歪な表情。

 それがあまりにも恐ろしくて、リリィは立ち上がるエラを見たまま固まった。


「お邪魔してごめんなさいね。また今度お茶会に招待するわ!」


 ひらひらと手を振ったエラは、彼女を連れてきた騎士とともに部屋を出ていく。

 騎士の腕にさらりと抱きつくエラを見つつ、扉が閉じてから大きくため息をついた。


「なんなの……もう」


「……失礼ですが……」


「メキーラ? どうかした?」


「……不気味な女性ですね。――リリアナ様のご友人にこのようなこと言うのは失礼なのですが……」


「…………そんなことないわ。――メキーラは鋭いわね」


 きょとんとしたメキーラに、笑顔で首を振るだけで答えた。

 実際エラは彼女の裏側を知れば知るほど、行動の全てが怪しく思えてくる。

 さっきの笑顔もだ。

 にったりとした笑みは、狂気を孕んでいるようにも思えた。


「……なにもないといいのだけれど」


 その小さなつぶやきは、誰に届くことなく消え去った。

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