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【完結】許されるとおもうなよ〜夫とその恋人に殺された令嬢は復讐を誓う〜  作者: あまNatu


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はじめての

「おめでとうございます。奥様ご懐妊でございます」


「――え?」


「本当か!?」


「ええ。おめでたいことでございます」


 ベッドへと運ばれたリリィは、その後少しして目をさました。

 その際なぜか隣にはマルクがいて、彼とともに医師から話を聞いたのだ。

 そして告げられたのは懐妊の話だった。


「……妊娠? 私、妊娠しているの……?」


 そっとお腹に手を当てる。

 平べったいここに命が宿っているのかとなんども摩ってみる。

 どうにも実感が湧かないなと思っていると、そんなリリィの手をマルクが優しくとった。


「ありがとう……! 全て君のおかげだ……!」


 マルクは泣いていた。

 泣いて喜びながら、優しく抱きしめてくれる。

 そのぬくもりがあたたかくて、気づいた時には目元から涙があふれていた。

 マルクから愛されていた実感はない。

 彼にとってその場所は、エラのものだと思っていたから。

 だから妊娠したと聞いた時に、マルクがどんな反応するか怖かったのだ。

 嫌な顔をされると思っていたから、まさかこんなに喜んでくれるなんて……。


「…………」


 リリィは抱きしめてくるマルクの背中に腕を回して、彼の肩口を涙で濡らしていく。

 もしかしたらここから変われるのかもしれない。

 歪だった夫婦のかたちが、正しいものに変われる気がした。

 マルクはリリィを離すと、そのお腹を優しく撫でる。


「元気な子どもが産まれてくるはずだ。君は養生して、子を元気に産むことを考えてくれ」


「――ええ。もちろんです」


 マルクの喜ぶ姿を見て、やっと妊娠の実感が湧いてきた。

 このお腹に命が宿っているのだ。

 それがあまりにも尊くて、なんどもお腹を撫でる。


「男の子かしら? 女の子かしら?」


「きっと男の子だ。俺にはわかる」


 二人で笑い合いながら、子どもについて話す。

 それがあまりにも幸せで、この屋敷にきてはじめて心落ち着く時間となった。


「安定期まではお気をつけください」


「あまり出かけてはいけないかしら?」


「気分転換などは大切ですし、無理だけはしないようにすれば大丈夫かと」


「なら別荘に行こう。あそこは空気もいいから、お腹の子どもにもいいはずだ」


「――ええ!」


 マルクから誘ってもらえるなんて。

 リリィはなんども頷いた。


「馬車でゆっくり時間をかけていけば大丈夫だろう。寝れるようにクッションも多く持っていこう」


「そうね。そうしてくれると嬉しいわ」


「とにかく今は眠るといい。またあとで話をしよう」


「ええ、もちろん」


 部屋から出ていく医師とマルクを見送り、ゆっくりとベッドに寝転んだ。

 まさか子どもを授かることができるなんて思っていなくて、はじめは驚いたし実感もなかった。

 だが医師の話し、そしてなによりもマルクの反応を見て真実なのだと実感できた。

 何度目になるのかわからないほどお腹を撫でると、リリィは眉尻を下げる。


「私のところにきてくれて、本当にありがとう。あなたのお母さんになるために、かならず元気に産んでみせるからね」


 言葉にすると心の中から感情が湧き上がってくる。

 愛おしいという気持ちが強くなり、これが母性なのかと納得した。

 今はとにかく元気にこの子を育てなくては。

 リリィはそっと目を閉じると、そのまま深い眠りへと落ちていった――。

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