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【完結】許されるとおもうなよ〜夫とその恋人に殺された令嬢は復讐を誓う〜  作者: あまNatu


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招待を受けて

「こんにちは、エラ」


「リリィ……! やっぱりあなたならきてくれると思ったわ!」


 伯爵家へとやってきたリリィは、エラに迎え入れられた。

 抱きついてきたエラを瞬時に引き剥がすと、仮面のような笑みを浮かべる。


「ここで話すのもなんだから、中に案内してくれるかしら?」


「もちろん! ……けどその人たちも……?」


「ええ、もちろん」


 そう言って振り返ったリリィの目には、二人の女性騎士が映る。

 ノアに今日伯爵家に向かうと伝えたら、彼女たちをつけてくれたのだ。

 赤く長い髪を一つに結った吊り目のメキーラ。

 緑髪を顎の辺りで綺麗に切り揃えているタレ目のハル。

 二人はリリィから視線を向けられると、ビシッと背筋を伸ばした。


「殿下が心配性なのよ。気にしないでちょうだい」


「そう……? まあ……いいけれど」

 

 エラはしぶしぶ納得すると、リリィの腕を引っ張って伯爵家へと入った。

 中は以前来たとおり、どこを見てもピンクピンクピンクで目に悪い。

 あまり長居しては頭が痛くなりそうだと思いながら廊下を歩いといると、ふとどこかから声が聞こえてきた。


「ほらあれ……」


「ああ、確かリリィって呼ばれてた……」


「なんでまた……」


 この名前が伯爵家で禁忌的扱いを受けていることはなんとなくわかるが、仮にも相手は侯爵令嬢であり未来の皇太子妃だ。

 そんな相手に対して使用人たちがこの態度なのはいかがなものか。

 エラやマルクが彼らに好き勝手やらせているのがよくわかる。

 思えば同じ侯爵令嬢であったリリィの時からこんな態度だったから、彼らが改めることはないのだろう。


「……」


 だがそういうことなら都合がいいと、ちらりと視線を使用人たちに向ける。

 リリィから見られていることに気づいていながら、使用人たちは態度を改めようともしない。

 後ろにいる騎士たちが明らかに殺気立ったのに気づいたので、軽く手を上げてそれを制した。


「大丈夫よ」


「――はい……」


「リリィ? どうかしたの?」


「いいえ。なんでもないわ」


 不思議そうなエラに軽く頭を振って、先に行くよう諭す。

 前を歩くエラの背中を見つつも、変わっていない伯爵家に安堵した。

 騎士たちの態度を見れば一目瞭然だ。

 あの使用人たちの行動はいただけない。

 普通なら罰せられて然るべきことを、彼らはそれに気づかずにやっている。

 リリィの時に許されていたから、いまだに大丈夫だと思っているのだろう。

 それともなにかあっても昔のように、エラが守ってくれるとでも思っているのだろうか?

 リリィ・マクラーレンだったころは確かにエラやマルクに逆らうことができなかった。

 しかし今は違う。

 エラはただの伯爵夫人だ。


「…………」

 

 ――けれどこの気の抜け方はとても都合がいい。

 これなら簡単にはめることができそうだと、楽しげなアメリアの顔を思い出した。

 彼女を罰するのは、とても簡単そうだ。


「わたしの部屋で話しましょう! 美味しいお茶でも飲みながら!」


「……えぇ」


 どうしてもリリィとしての記憶がある以上、残念ながらエラから出されたものに口をつけるつもりはない。

 一番日の当たる広い部屋は、昔からエラのものだった。

 本来なら女主人の部屋である場所を、彼女は我が物顔で使っているのだ。

 そんな場所へと案内されたリリィは、エラに進められるがままソファへと腰を下ろした。

 もちろん後ろには二人の騎士が控えている。


「とってもいい香りの紅茶を用意したの! 特別よ」


 そう言って差し出された紅茶を静かに見守った。

 なぜならそれを出したのが、あのアメリアだからだ。

 クレアの事件以降、アメリアはエラ付きの侍女となったらしい。

 エラからの信用も厚く、侍女長でもないのに他の使用人たちにあれこれ命令しているようだ。

 クレアを売って手に入れた地位。

 さぞや幸せなことだろうと眺めていると、不意に目が合った。


「――」


 力強い瞳。

 まるで憎い仇を睨むかのような視線に、思わず眉が寄ってしまう。

 この姿で会うのは初めてだというのに、まるで昔のリリィを見るかのような瞳を向けてくる。

 本能的に悟っているのか、はたまたリリィと呼ばれる女を毛嫌いしているのか。

 どちらにしろいいものではないなと、同じように鋭い視線を送った。

 紅茶を置いてすぐに離れはしたので一瞬の出来事ではあったが、それだけでもじゅうぶん不敬だろう。

 リリィは侯爵令嬢であり皇太子の婚約者だ。

 使用人がそんな態度をとっていい相手ではない。

 だがこれだけ殺気だっているならやりやすいと、前に座るエラに声をかけた。


「……それにしても大変だったみたいね」


「――本当よ! あなたの妹のせいでほんっとうに嫌な目にあったわ! マルクもマルクよ……! わたしを庇ってもくれないなんて! 聞いてちょうだい! 実はあの後……」


 エラがあれこれ話しているが、もちろんちゃんと聞く気なんてない。

 無駄に自分がいかにかわいそうかを話している女なんて、ほどほどに相槌を打つだけで事足りる。

 それに問題はエラではない。

 先ほどからリリィを見てくるアメリアの眼光がさらに鋭くなったのだ。

 そう、ちょうどオーロラの話をした辺りから。


(……なるほどね)


 どうやらエラの立場を悪くさせたオーロラの姉として、リリィを敵視しているようだ。

 さらには嫌いな女と同じ名前なのだから、睨みつけてくるのも納得はできた。


(もちろん、許す気はないけれど……)


 とはいえいつまでも睨みつけられるというのはいい気分ではない。

 そろそろアメリアに痛い目にあって欲しいのだが……とそのきっかけを探していた時だ。


 ――ふと、リリィの瞳にそれは映った。

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